DIGITAL INNOVATORS

■ 新たなトレンドではなく、トレンドがもたらすリスクに着目

―起業から成長路線へと切り替わるターニングポイントはありましたか?
菅原起業するときに目指したのはその分野で No.1 になることです。2004年、東京大学経済学部在学中にインターネット上のブランディング支援を目的とするエルテスを創業しました。当初、社員5名にもかかわらず5つの事業を立ち上げ、トップに立てる分野を模索していました。 ターニングポイントとなったのは、2006年頃からブログや口コミサイトを通じて誰もが情報を発信できるようにインターネットが大きく変化してきたことでした。多くの IT ベンチャーが口コミサイトの運営に乗り出す中、当社が着目したのは口コミサイトが増えることで拡大する風評被害や誹謗中傷などのデジタルリスクから企業を守るという観点でした。
当時、こうした観点からビジネスに取り組む日本企業は少なく、いち早く参入し寡占化していく戦略を立てました。2007年にデジタルリスク分野に特化するという経営判断をくだし、検索エンジンの評判対策を中心とするビジネスを開始しました。2011年から SNS の普及に伴う炎上対策、2016年から内部不正対策のソリューションを提供しています。
2016年11月には東京証券取引所マザーズ市場へ新規上場を果たしました。また政府系ファンドからの出資、大手企業との資本業務提携などの支援によりソリューションの幅を拡大していきます。当社が目指しているのは「デジタルリスクを解決する社会インフラの創出」です。その実現に向けてデジタル社会の進展に伴う新たなリスクに対し解決策を生み出していきます。

株式会社エルテス
代表取締役菅原 貴弘 氏

■ 競争優位に立つポイントは、やりやすいことはやらないこと

―デジタルリスク分野でトップに立つための成長戦略のポイントは?
菅原1位になれると見極めた分野で事業を開始したら、競争相手に対してしっかりとガードすることが大切です。ポイントは、やりやすいことはやらない。例えば値引きはどの企業でもできます。当社はデジタルリスク分野に参入した当初から大手企業との取引締結に向けて地道な営業活動を行ってきました。現在、当社のお客様は大手企業を中心とした600社です。大手企業は契約を結ぶのは難しいけれど、成立すれば他社が入りにくい。特にセキュリティ分野は企業と一体となって取り組む必要があるため長いおつきあいとなります。
デジタルリスクは社会基盤に大きな影響を与えることから行政機関との連携も必要です。当社では行政機関で重要な役割を果たしてきた OB を役員に登用するなど行政とのパイプの強化も図っています。また2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けてテロ犯罪の予兆・検知も開始しました。行政機関 OB の役員登用やテロ犯罪対策も簡単に取り組めることではありません。「日本社会を守る」という思いが人との出会いを生み、当社の成長戦略の根幹をなしています。

■ ビッグデータ分析や機械学習に強い Microsoft Azure を選択

―起業するうえでクラウドの果たす役割をどう捉えていますか?
菅原クラウドというテクノロジーは弱者に有利に働くと考えています。クラウド以前は、人・モノ・カネを所有する大手企業しか最新技術を使うことはできませんでした。所有することで差別化が図れた時代です。クラウド以後、所有する意味はなくなり、スタートアップ企業や中堅中小企業でも最新技術をサービスとして利用できます。ICT インフラでは差別化が難しい時代にあって、大切なのは技術を使って何をするかということです。
浅野エルテスでは、デジタルリスクのビジネスに欠かせないビッグデータ分析や機械学習に Microsoft Azureのサービスを利用しています。従来、リスク分析はサンプルデータを使った統計処理が中心でした。ビッグデータは対象範囲のすべての事象(全量データ)を分析することができるため、例えばイベントに危険人物が来ているかどうか、名簿があればすべての人物に対し情報を洗い出しリスクを検出できます。
2007年サービス開始以来、炎上事件約3,000件のデータ、炎上に加担するブラックユーザー90万アカウントなど、リアルを含めたリスクに特化し蓄積してきたビッグデータを持っていることが当社の強みです。 伊勢志摩サミットのテロ犯罪の予兆・検知では世界中のSNSなどのビッグデータを分析しテロ検知予告情報を提供しました。またビッグデータ分析で発見した脅威となる情報に基づき各種イベント会場の警備の配置やプランニングを行う、データ分析結果をリアルな警備に活かすソリューションの提供も開始しました。これからも Microsoft Azure の最新技術を利用し、インフラの上のレベルのサービスに集中し成長戦略を加速させていきます。

株式会社エルテス
ITソリューション部
部長浅野 正隆 氏

炎上対策では、独自開発ツールでSNSやネット掲示板などの投稿を24時間365日監視し、ビッグデータ分析を使ってリスクを調査し対策提案を行う。

内部不正対策では、企業内のログデータや管理情報を統合的に分析し、人間の心理の変化や行動パターンを把握し内部からの情報漏洩・内部不正リスクを検知する。

―クラウドサービスを選択する際に重視したポイントは?
菅原デジタルリスクはビッグデータ分析や機械学習との親和性が高く、別なクラウドサービスから切り替えた大きな理由もMicrosoft Azureがこれらの技術にフォーカスしていたからです。今後、画像認識や音声認識をどんどん利用していきたい。世界中のあらゆるメディアの情報を翻訳するために多言語対策としての AI の活用も検討中です。また大学などの複数の研究機関との共同研究により画像検知システムの開発や自然言語解析にも取り組んでいます。
また、Microsoft をパートナーに選んだもう一つの理由としては、国内大手企業とのつながりが深いMicrosoft の顧客層と、エルテスの顧客層が非常に近かったということが大きいです。Microsoft のB to Bチャネルを活用させてもらうことで、ビジネスの拡大におけるシナジーが期待できると思いました。
―起業や新規事業の開拓を考えている読者にメッセージをお願いします。
菅原メガトレンドの周辺ビジネスを狙うことは勝つために有効な戦略の1つです。米国のゴールドラッシュで儲けたのは金を掘った人ではなくて、作業服を作っていたジーンズメーカーだったというお話があります。また起業をゲームに例えると、6回サイコロを振って6を出すゲームと言えます。決して1回目で6を出すゲームではないのです。私もデジタルリスクにたどりつくまでには6回どころか、8回もサイコロを振っています。新しい着想を持って次のゲームにチャレンジし続けることが大切です。

株式会社エルテス ウェブサイトhttps://eltes.co.jp/

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日本マイクロソフト株式会社
パートナー事業本部
ISVビジネス開発本部
ビジネスデベロップメントマネージャー

川岡 誠司 氏

日本マイクロソフト 担当営業から

「デジタルリスク対策は Microsoft の B to B のお客様にとっても重要課題」

エルテスさんのサービスは、炎上の解決だけでなくコンサルティング対応などにより企業価値を高めていくことをゴールにしているという点に他社との大きな違いがあると思います。お客様と契約し長期的にサポートしていくビジネスモデルは、クラウドサービスとも共通するものです。Microsoft Azure は AI やビッグデータ分析にフォーカスした技術提供を行っており、デジタルリスクのビジネスとの親和性が高く、さらなるサービス価値向上に貢献できると確信しています。またエルテスさんが Microsoft Azure の最新技術を活用しソリューションとして展開されることは、実践例の拡大や社会貢献の観点から Microsoft にも大きなメリットがあります。
デジタルリスク対策は、Microsoft 製品やサービスをご導入いただいている企業様にとっても非常に重要です。今後、エルテスさんとの合同セミナーの開催など Microsoft のB to Bチャネルの活用をはじめ積極的な協業を進めていきたいと考えています。