DIGITAL INNOVATORS

■ シェアリングエコノミーのビジネスモデルを創造

―ビジネスの着想を得たきっかけは?
内田2009年に太陽光発電の一括見積もりサイトの会社を立ち上げたのが最初の起業です。東日本大震災後、需要が拡大し社員も30名に増えましたが、その勢いも長くは続かず社員を4名に減らすまで事業を縮小しました。その時、オフィスの余ったスペースを貸し出したところ賃料相当の収益が得られたのがビジネス着想のきっかけとなりました。
その後、マンションのワンルームに事務所を移すと、お客様と打ち合わせをするスペースがない。仕方なく近所のカフェで打ち合わせをするのですが、周りに声が聞こえてしまう。会議室を借りると1時間3,000円、5,000円とかかります。居酒屋などの遊休スペースを活用することで、複数人のコーヒー代と同程度の1時間500円、1,000円で利用できる会議室を提供できればニーズがあるのではないか――。着想したのは貸し会議室の事業ではなく、空間の持ち主と利用したい人を結びつけるシェアリングエコノミーのビジネスモデルです。
働く場所に制約されないリモートワークが広がりをみせる中、新しいビジネスのインフラとして必要なときに気軽に利用できる格安会議室を提供していく。「働く人の生産性を高め社会を豊かにする」という思いをもって、2013年10月、太陽光発電の見積り事業を譲渡した資金を元手にWebサービス「スペイシー」の事業を行う株式会社スペイシーを創業したのです。

株式会社スペイシー
代表取締役内田 圭祐 氏

■ 国内外のベンチャーキャピタルも注目するビジネスに成長

―起業後、ビジネスは順調に成長しましたか?
内田アイデアは実践してみる。そこから次の一歩が始まります。すぐに貸し会議室・レンタルスペースの予約サイトをつくって、自社オフィスと新宿駅近くに借りたワンルームの2室でサービスを開始しました。自社オフィスは夜と土日の貸出だけで家賃13万円相当の売上、ワンルームは8万円の家賃で20万円の売上がありました。
スペイシーのビジネスは登録している会議室の売上の25%を手数料とすることで成り立っています。最初は既存のレンタルスペースを開拓し20件程の小規模でスタートしました。私自身も会議室運用を行い、自身の生計を立てていました。予約サイト スペイシー の登録物件は、1.既存の貸しスペース、2.遊休スペース、3.個人オーナーのスペース(不動産投資の手法の1つとして スペイシー を利用して会議室事業を始める)の3種類で構成されています。地道な営業活動の継続と、サイト利用者の増加に伴い、徐々に登録物件が増えていきました。現在、登録されている会議室は2,800室となり、これまでに約100万人が利用しています。

サービスサイト「スペイシー」では、トップ画面からダイレクトに会議室を検索できる。

会議室の検索結果。中には1時間100円という驚きのスペースも。この手軽さが魅力となっている。

―これからビジネスを拡大していくうえでの課題はありますか。
梅田格安会議室のコンセプトを実現していくためには、遊休スペースや個人オーナーの登録物件を増やすことが重要です。会議室シェアは大きな投資をすることなく、決済もネット上で行うなど面倒なことがありません。またスペイシーではWi-Fi、ホワイトボードの提供から保険まで会議室シェアに必要なものを全てワンパッケージにしたサービス「だれでも会議室」を提供しています。賃貸物件で会議室運用を始めるときに大きなハードルとなる不動産オーナーへの説明と交渉も代行します。
スペイシーの会議室シェアビジネスには国内外のベンチャーキャピタルも高い関心を寄せています。2016年4月、シリコンバレーに本拠地をおく世界で最もアクティブなVC 500 Startups から日米同時出資を受けました。同社の日本国内向けファンド 500 Startups Japan の第一号案件です。2017年3月には第三社割当増資により総額約2億円を調達しました。格安会議室という新しい市場を大きく育て、競合他社の追随を許さないためには次々と付加価値の高いサービスを提供していくことが必要です。

株式会社スペイシー
取締役梅田 琢也 氏

■ 成長するために B to B 領域に強い Microsoft をパートナーに

―スタートアップにとってクラウドを活用する意義は?
梅田新しいビジネスモデルでこれまでにない市場を開拓していくスタートアップにとっては、クラウドの活用が前提となります。システムをゼロから構築するのではなくサービスとして即時利用することで、ビジネスの立ち上げも、変化への対応もスピーディに行えます。Webサービスの基盤には当初別のクラウドサービスを利用していましたが、それを Microsoft Azure に変えた理由は、Microsoftが推進している、いつでもどこでも働ける環境のもとで生産性を高めていく“働き方改革”が、格安会議室を提供する当社の方向性と一致していたことが大きいですね。また会議室シェアの利用者の8割がビジネス用途であり、BtoB の領域を強みとする Microsoft とは親和性が高いこともポイントとなりました。加えて担当の方との会話の中で、今のビジネスに顔認証や AI を取り入れる発想を得られたことも決め手となりました。
Microsoft Azureは、法人利用を前提に考えられているクラウドサービスだけあって、モバイル活用に向けたアプリケーション開発の支援など、ビジネスニーズに応えるサービスが揃っていることに加え、AI など最新技術をカバーするサービスがいち早く提供される点も魅力です。
―今後、クラウドを使って実現したいサービスは?
内田Microsoft Azure 上での顔認証の利用も考えています。また AI を使って会議室の価格設定の最適化を図っていくことも検討中です。会議室の価格は航空券と同じように在庫に対し最適な価格帯で提供することで売上の向上につながります。将来的には会議室シェアの延長線上で、必要なときに必要なスペースを利用できるオフィスの新しい形態も実現していきたいと考えています。
―起業や新規事業の開拓を考えている読者にメッセージをお願いします。
内田アイデアを思いついたら、即座にかたちにしていくスピード感が大切です。ともすると考えている間に、1つの事業を立ち上げることができてしまいます。市場の声に耳を傾け走りながら軌道修正し1つのアイデアから大きく広げていく。そのためには変化に柔軟かつスピーディに対応できるクラウドサービスなどの活用は必須でしょう。また経営者にインスピレーションやアイデアをもたらし、一緒に新しいことにチャレンジできる Microsoft のような、ITとビジネスの両面から相談できるパートナーも欠かせないと思います。

サービスサイト「スペイシー」https://www.spacee.jp/

日本マイクロソフト株式会社
コーポレート営業統括本部
クラウド事業開発室
ビジネスデベロップメントマネージャー

原 浩二 氏

日本マイクロソフト 担当営業から

「 Outlook から会議室を借りることができたら面白い」

今後、働き方改革の拡大に伴い、会議室シェアのニーズもさらに増えていくだろうと考えています。今、Microsoft Azure のインテリジェントな機能を使って付加価値の高いサービスをつくるべく、スペイシーさんとディスカッションをしています。例えば、チャットボットを使うことで利用者が会話しながら目的の会議室を選べたり、顔認証を活用した受付サービスの実現、AI を利用したプライシングなどです。次のステップではデータを分析し市場や利用者の動向を把握し経営戦略に役立てていくことも必要になるでしょう。
また Outlook と連携させ、予定表から会議室を借りられるようなアプリケーション開発の協業も進めていきたいと思います。加えて、Microsoft が持つ B to B のチャネルの活用やマーケティング支援などのサポートも行っていきます。Microsoft ではスタートアップ企業支援を重要なテーマと位置づけています。これからもスペイシーさんと一緒にチャレンジしていきたいと思います。