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小型精密ロボットで攻める。その戦略とは。

培ってきたロボティクス技術を生かしてラインアップを強化

セイコーエプソン株式会社
ロボティクスソリューションズ
事業部長
吉田 佳史氏

 エプソンでは、小型精密ロボット市場のシェア拡大を目指してラインアップの充実を図っている。2017年11月27日に行われた同社の「ロボティクスソリューションズ事業戦略説明会」では、独自のロボティクス技術を活用したロボットのラインアップ強化計画が発表された。

 ロボティクスソリューションズ事業部長の吉田佳史氏は「6年連続でワールドワイドシェアNo.1を占めるスカラロボットでは、用途の拡大と豊富なラインアップ構成により、さらなる売り上げとシェア拡大を目指します」と話す。

※ 産業用スカラロボットの2011〜2016年の金額および数量ベースの出荷実績において(株式会社富士経済『2012〜2017ワールドワイドロボット市場の現状と将来展望』調べ)

 また、小型垂直多関節ロボットは、お客様の用途に応じた生産性、精度、省スペースなどの切り口からラインアップを充実させる。「単純搬送作業をターゲットとしたモデルや、コントローラーを内蔵し、簡単な設置と低価格を両立したモデル、センサーを強化した高速モデルなど、幅広いニーズに対応した製品を市場に投入していきます」(吉田事業部長)。

 さらに、同社では2018年度から新たなロボティクス領域への参入も表明した。近年需要が急拡大しているヒト協調ロボット市場だ。製造ラインのなかで、人と並んで作業を行うことができるロボットで、同社が得意とするセンシング技術などを生かし、「簡単」と「安全」機能を追加したスカラロボットや小型垂直多関節ロボットを提供していく。

 「双腕ロボットでは、当社のロボティクス技術の集大成として、スタンドアローンで人が行う作業の自動化を目指します。まず、コンパクトなスペースでスピードを求めない多品種少量生産向けに製品を投入していきます」と吉田事業部長。これまでの技術を結集し、ものづくりの高度化を支援するという。

(図4)ラインアップ強化―ロボティクス技術を生かしたロボット
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ノウハウを武器にものづくりの高度化を、自動化パッケージ提供で支援

 ものづくりの高度化を支援するために同社が取り組んでいるのは、ロボットのラインアップの強化と拡大だけではない。これまでの導入実績や運用のノウハウを生かし、さまざまな作業の自動化パッケージを提供していくという。搬送、組立、加工、梱包といったものづくりの各工程をカバーし、電子デバイスから自動車部品、医療、食品、日用品など、各業界に対応したパッケージが用意される。

 例えば液体などを付着させる塗布作業の自動化であれば、ロボットや、液体を吐出する装置、対象物までの距離を測る距離センサー、これらを制御するコントローラーなどが必要である。これらをパッケージとして提供することで、ロボットや装置、センサーを一体で制御し、ロボットの速度に応じて塗布量をリアリタイムに自動で調整する。これにより低価格かつ高速でムラのない塗布が実現されるという。

「こうした複雑で高速な対応が求められる分野は、いまだに自動化されていません。それをビジネスチャンスと捉え、ロボットソリューションをパッケージとして提供し、簡単に使えるように支援していきます」と吉田事業部長は意欲を語る。

 同社の製品がロボットの導入・運用ノウハウと合わせてパッケージとして提供されるため、ロボット、デバイス・オプション、周辺機器、センサーなどの機種選定やセットアップに費やす工数を大幅に削減し、自動化までのプロセスを容易にするというメリットが見込める。ロボット導入のハードルを引き下げ、活用範囲を広げるという面でもその意味は大きい。

(図5)ものづくりの高度化支援 パッケージの例
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開発、生産、販売・サポートの基盤を強化し、売上1000億円を目指す

 エプソンの長期ビジョン「Epson 25」でも掲げている通り、同社はロボティクスソリューションズ事業をビジネスの柱の一つに育て上げようとしている。小型精密ロボット市場において、2025年度に2017年度予想比の4.5倍の売上収益1000億円を目指す。その原動力となるのが、開発、生産、販売・サポートにおける事業基盤の強化だ。

 「ロボットビジネスを推進するための事業基盤はすでに構築済みです。今後はそれを戦略的に加速させていきます」と吉田事業部長は語る。開発面では、新製品開発のための人員を増やし、日本やカナダのトロントにある開発拠点を中心にソフトウェア開発を推進し、パッケージ提供の拡大に向けインターフェイスの標準化を図る。

 生産面では、既存拠点の効率化と生産体制の増強を図り、事業拡大に対応できるように基盤を強化する。また、販売サポートではワールドワイドの製造拠点と協働した販売・サポート体制を整備していくという。

 その上で小型精密ロボットの各分野のシェア拡大を目指す。すでに6年連続No.1のポジションにあるスカラロボットは、現在の28%から2020年までに約40%にシェアを伸ばす。小型垂直多関節ロボットは4%から約10%に、これから参入するヒト協調ロボットは約5%のシェア獲得を目標とし、2025年度に売上収益1000億円の達成を目指している。

 碓井社長は「腕時計づくりで培ってきた全自動化のノウハウを武器に、ものづくりの現場で実績を積み上げ、その後、食品業界、医療業界へと適用領域を広げていきたい」と話す。国内外で人材不足が深刻化する中で、小型精密ロボットへの期待は大きい。同社が今後どのようなプレゼンスを示していくのか楽しみである。

(図6)小型精密ロボットにおける市場拡大とシェア目標
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(図7)業績目標
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