製造業の差別化のカギを握る アフターサービス業務改革のステップとは? 〜ブラザー工業 マシナリー事業に見る「顧客満足度」と「収益性」の二兎を追う方法〜

「即納率を上げると在庫が増える」のジレンマ

ブラザー工業株式会社 マシナリー事業 産業機器 CS推進部 部長 山田 高志氏
ブラザー工業株式会社 マシナリー事業 産業機器 CS推進部 部長 山田 高志氏

家庭用・工業用ミシンの老舗メーカーとして知られるブラザー工業。そこで培った技術力を生かし、プリンター、ファクシミリ、デジタル複合機、産業機器などの事業を展開する。なかでも成長事業の1つと位置付けているのが、産業機器(工作機械)などを扱うマシナリー事業だ。

1985年に提供を開始した「CNCタッピングセンター」はコンパクトでありながら高い生産性と環境性能を実現し、自動車・IT業界などの部品加工において高い支持を得ている。2013年には次世代工作機械ブランド「SPEEDIO(スピーディオ)」を立ち上げ、より大型の部品を加工する機種や旋削加工が可能な機種などを投入し、新市場を開拓している。

CNCタッピングセンターとSPEEDIOの累計販売台数は13万台超。海外比率が70%超を占める。「現在はさらなる事業拡大に向け、製造力・営業力・サービス力の強化に取り組んでいます」と同社の山田 高志氏は述べる。

メンテナンス部品の即納率向上は、その中でも産業機器CS推進部がミッションとするサービス力強化の要となる取り組みの1つだ。「当社の機器は信頼性重視で設計・製造していますが、万が一故障が発生した際にはお客様のビジネスに影響してしまいます。部品点数も膨大な数におよぶため、ダウンタイムの短縮を目指す活動の中で、補給部品の即納率向上に向け、欠品をなくすことに努めています」(山田氏)。


ブラザー工業株式会社 マシナリー事業 産業機器 CS推進部 CS企画グループ チーム・マネジャー 谷川 修氏
ブラザー工業株式会社 マシナリー事業 産業機器 CS推進部 CS企画グループ チーム・マネジャー 谷川 修氏

部品供給が遅れると、顧客企業の生産ラインを止めることにもつながりかねず、機器スペックとは別の問題でブランドイメージに傷が付く。即納率向上は、顧客満足やブランド維持のためにも欠かせない重要な取り組みなのだ。

しかしその一方で、部品の在庫管理には課題も抱えていた。同社の産業機器製品は20年以上の長期間に渡って使用されるが、電子部品や電装部品などは供給サイクルが短くなる一方だという。「即納率を上げるために多く在庫を抱えた結果、在庫率が2割ほど上がってしまったこともあります」と同社の谷川 修氏は振り返る。

在庫計画の属人的な業務プロセスも課題だった。従来、保守部品の在庫管理業務は一部のベテラン社員の経験に頼っていたが、その社員が定年退職すると後を継ぐ者がいない。「安定して業務を継続するため、特別な経験やノウハウがなくても、データを基に多くの人がその業務を担当できる体制を作りたいと考えていました」(山田氏)。

現在は日本と中国の計2カ所に補給部品倉庫を構えているが、今後はグローバルレベルで補給部品在庫の充実も考えていく。「すべての補給部品倉庫の過剰在庫を圧縮することで、在庫保有に伴うキャッシュフローの改善にも着手したいと考えていました」と山田氏は続ける。


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データに基づく在庫計画業務への転換を図る

こうした課題解決を図るため導入したのが、シンクロンの保守部品在庫最適化ソリューション「Syncron Inventory」(注1)である。これは在庫管理に求められる機能を網羅したSaaS型サービス。いわゆるクラウドサービスだ。高精度な需要予測で在庫計画を最適化し、サプライチェーン全体の在庫削減と即納率の向上に貢献する。

同社が高く評価したポイントの1つが「使いやすさ」だ。「次世代への引き継ぎおよび、海外の代理店まで含めたグローバル展開を見据えていたので、その業務の専門家でないスタッフでも無理なく使いこなせるシステムであることを選定基準としていました。シンクロンのソリューションはユーザー・インターフェースが直感的なので、誰でも容易に操作できると感じました」と谷川氏は選定の理由を述べる。

保守・補給部品は、保管すべき部品アイテムの多さや供給期間の長さに加え、種類によって管理レベルが異なり、生産工程の部品とは違った管理の難しさがある。稼働に直接影響を与える緊急度の高いものと、そうでないもの、あるいは、部品共有のリードタイムや部品寿命・需要などにバラつきがあるからだ。それによって保有すべき在庫の点数や持ち方も変わってくる。

「その点、シンクロンのソリューションはパラメータ設定がわかりやすい。部品やカテゴリーごとに、管理レベルやサービスレベルをきめ細やかに設定できる点も評価しました。特に、受注頻度が少なく、予測が立てにくい低回転の部品は予測対象外としているシステムもありましたが、シンクロンのソリューションはこれも予測対象として扱い、フォローする機能を備えている点も高く評価しました」(谷川氏)。レポート機能も充実しており、特定部品の需要が高騰するなど通常と異なる動きがあれば、即座に把握が可能だ。

クラウドサービスのため、短期間かつ低コストで導入できる上、運用保守の手間もかからない。国内だけでなく、海外の拠点ともシームレスにつながる。「海外の売り上げ比率は拡大傾向にあり、それに伴って海外の補給部品在庫も充実していく計画です。管理対象の補給部品倉庫が増えても、容易に接続し、グローバルレベルで在庫の可視化や一元管理、最適化を図ることができると判断しました」と山田氏は語る。

シンクロンの機能面だけでなく、コンサルティング/導入サービスやサポート対応力も評価した。シンクロンは、導入に先駆けて行った事前評価検証(PoC)で、実データを使用した本番さながらのシミュレーションを実施。期待できる効果を具体的な数値として提示した。「ソリューション選定の審査は非常に厳しいものでしたが、これにより、投資に見合う価値があることを経営層にわかりやすく提案し、納得してもらうことができました」と山田氏は喜ぶ。

また導入プロジェクトでは進捗管理が確実に行われ、問題点があった場合もシステム上で体系的に管理されるなど、安心してプロジェクトを任せることができたという。

(注1)旧ソリューション名 「Syncron Inventory Management」


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即納率95%以上をキープしつつ、在庫を30%削減

同社はまず日本と中国に展開する2つの補給部品倉庫を対象に、2017年秋以降に同ソリューションの本格稼働を開始する。

ブラザー工業が取り組むグローバル在庫適正化の初期フェーズのマイルストーン

ブラザー工業が取り組むグローバル在庫適正化の初期フェーズのマイルストーン

まずは日本および中国に展開する2つの補給部品倉庫にシンクロンの在庫管理ソリューションを適用する。その後、新たに国内5カ所、中国4カ所に展開する補給部品倉庫のほか、米国、ヨーロッパ、タイなどの倉庫を加え、グローバルサプライチェーン全体にわたり補給部品の在庫適正化を加速していく

※画面はブラザー工業の実際のものではなく、サンプル画面

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期待される成果は事前のシミュレーションにより実証済みだ。「以前は即納率にバラつきがありましたが、部品ごとに管理レベルやサービスレベルを適性に設定することで欠品率を低減。即納率95%以上を安定的に維持できるようになる予定です。それでいて、補給部品の在庫は30%程度削減できる見込みです。グローバル在庫の配置・維持の適正化により、キャッシュフローの改善も期待できます」と山田氏は語る。

これまで把握できていなかった健全/余剰/陳腐化在庫も可視化できる。「在庫の状況をグローバルに、より詳細レベルで把握できるようになることで、在庫計画の業務工数も約15%削減できます。その分のリソースをより戦略的な分析・判断業務へシフトさせていきます」と谷川氏は満足感を示す。

今後はクラウド型サービスのメリットを生かし、新たに展開する補給部品倉庫を管理対象に加えていくほか、国内および海外の販社や代理店にも利用を呼び掛けていく。「より多くの補給部品倉庫、販社や代理店がつながれば『どこに、何が、どれだけあるか』『いつまでに、何を、どれだけ調達すればいいか』というグローバルレベルで、サプライチェーン全体の在庫の見える化と需要予測をより正確に行えるようになります」と山田氏は期待を込める。

今後、標準機能への組み込みが検討されている新機能にも期待を寄せる。それが「生涯必要数の推定」機能だ。例えば、生産中止になる部品が出たとしても、条件を設定することで、製品ライフサイクルの中でどれだけの在庫を確保しておけばいいかを高精度に推計できる。「こうした取り組みを進めていくことで、即納率や在庫削減率はさらに向上していくでしょう」と話す山田氏。同社では今回の導入で見込まれる確かな成果を受け、シンクロンの在庫最適化ソリューションを産業用領域の他事業に適用することも検討している。

ブラザー工業はこのシンクロンの在庫最適化ソリューションを活用し、グローバルサプライチェーンの在庫適正化を進めるとともに、迅速かつきめ細かなアフターフォロー、サービス力に磨きをかけ、世界のものづくり企業の発展に貢献していく考えだ。


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シンクロンは、スウェーデン ストックホルムを本拠とし、製造業向けにアフターマーケット(保守ビジネス)の最適化ソリューションをクラウドベース、SaaSで提供するグローバルリーダーです。保守部品の在庫管理、価格管理、 受発注管理、予知保全といったソリューションにより、顧客企業のアフターマーケット業務を革新し、製品稼働時間の最大化や優れたサービスエクスペリエンスの提供、ひいては、収益性の大幅な改善を支援します。