Vol.4 ポスト2020、東京と首都近郊のポテンシャルを探る

これからの日本経済 〜首都近郊はどうあるべきか〜

フォーラムの第1部には、東京大学 名誉教授で学習院大学 国際社会科学部 教授の伊藤元重氏が登壇。 「これからの日本経済 〜首都近郊はどうあるべきか〜」と題して基調講演を行った。

『分業』都市から、職・住・遊・学が『混在』する都市へ

伊藤氏

東京大学 名誉教授
学習院大学 国際社会科学部 教授
伊藤元重

税制調査会委員、復興推進委員会委員長、経済財政諮問会議議員、社会保障制度改革推進会議委員、公正取引委員会独占禁止懇話会会長などの要職を務める。著書に、『入門経済学』(日本評論社、1版1988年、2版2001年、3版2009年、4版2015年)、『ゼミナール国際経済入門』(日本経済新聞社、1版1989年、2版1996年、3版2005年)、『ビジネス・エコノミクス』(日本経済新聞社、2004年)、『ゼミナール現代経済入門』(日本経済新聞出版社、2011年)など多数。

 「2020年以降、東京や首都近郊の姿がどう変わっていくのかを予想していくうえでは、『グローバル化』『少子・高齢化』『技術革新』『産業構造の変化』という4つのポイントを踏まえることが大切」だと講演の冒頭で話した伊藤氏。

 そのうえで、「2020年以降という中期的な未来を予想する前に、まずはもっと遠い未来に起こりうる変化、そして足元で起こっている変化について考えてみたい」と述べ、超長期・短期の2つの視点で都市の変化について語り始めた。

 超長期の視点において指摘するのは“産業構造の変化とともに、都市の全体構造も、かつての『分業』から『混在』へと変わっていく”という点である。

 「戦後から高度経済成長期にかけて、首都圏は丸の内や霞が関のようなオフィス・官庁街、新宿や池袋のような大商業地、川崎の臨海部に代表される工業地帯、多摩ニュータウンなどに象徴される郊外の住宅地と、機能ごとにエリアが分かれた。このような都市の『分業』は工業中心の産業構造にはマッチしていたが、現在のようにサービス産業中心の時代においては、ひとつのエリアにあらゆる機能の『混在』するまちづくりが求められているのではないか」と指摘。「かつて森ビル 元会長の森稔氏が提唱した“職・住・遊・学”の混在するまちが、ひとつのひな形になりうる」と述べた。

基調講演の様子

人が集まる空港の近くに大きなポテンシャルが

 続いて伊藤氏は、いま足元で起こっている短期的な日本経済の変化について語った。「日本の名目GDP(国内総生産)は、1997年の534兆円でピークを打ち、その後の金融危機やデフレ不況によって日本経済は20年近く低迷が続いた。しかし、日本銀行の大胆な金融緩和や安倍政権による成長戦略の効果が表れ、2016年の名目GDPは537兆円と過去最高を記録した。これは一過性のトレンドではなく、2020年の東京オリンピック・パラリンピックが終了した後も、成長トレンドは続く」というのが伊藤氏の見方だ。

 その成長過程において、「先ほど述べた『グローバル化』『少子・高齢化』『技術革新』『産業構造の変化』という4つのポイントに沿って、東京や首都近郊のまちのあり方も大きく変わるだろう」と述べ、それぞれのポイントについて、以下のように解説した。

 まず『グローバル化』については、安倍政権の国家戦略によって訪日客が過去4年で約3倍の年間約2,400万人になったことを指摘。しかし、「アジアで中間層・富裕層が増え続ければ、政府が2020年の目標とする4,000万人どころか、将来的には1億人規模の訪日客が日本を訪れる可能性もある。今後の都市の発展においては『混在』が重要なカギを握るが、なかでもグローバル化によってさまざまな国の人が集まることは必須。羽田や成田といった空港近くのエリアには、とくに大きな変化が表れる可能性がある」と伊藤氏は述べた。

訪日外国人数の推移と予測

訪日外国人数の推移と予測

安倍政権が誕生した2012年以来、年間の訪日外国人数は3倍近くまで急増している。成長著しいアジアの中間層や富裕層が増えれば、将来的には年間1億人を超える可能性も

高齢化の進展とともに、都市機能の『混在』がますます重要に

 一方、『少子・高齢化』については、「政府が最近、人生100年時代構想を始動したが、このまま超高齢化が進めば、仕事をリタイヤした人々が“第2の人生”をどう生きるかということがますます大きな課題となる」と指摘。そのうえで、「大人になっても学び続けるリカレント教育(生涯教育)の重要性が増していくが、従来型の『分業』都市では、住まいの近くに大学などの教育機関がなく、学ぶ機会が得にくい。また、昨今は働くシニアが増えているが、身近に働ける場所が少ないのも現実だ。その意味でも、職と学の『混在』が求められているのでは」と述べた。

 また、『技術革新』については、「技術の進歩によってテレワークが普及すれば、家にいながらでも仕事ができるようになるが、家にこもりがちの生活では、ますます人との接点が必要となる。コミュニティやネットワーキングのための空間が求められるようになるだろう」と伊藤氏は予想した。

 さらに『産業構造の変化』については、冒頭で述べられた工業中心からサービス産業中心への構造変化に伴って都市構造が『分業』から『混在』へと変化する動きも加速するであろう。

 最後に伊藤氏は、「未来に起こりうることは、いま目の前で起こっていることから予見できる。『グローバル化』『少子・高齢化』『技術革新』『産業構造の変化』という4つのポイントを踏まえながら、将来のまちのあり方を想像してみていただきたい」と締めくくった。

基調講演の様子

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