近年の健康への関心の高まり、農薬散布による環境破壊への懸念、そして食の健康被害に対する危機意識の向上などは、無添加・無農薬食品のニーズを高めてきた。
今年、世界市場における健康食品の売り上げは1兆ドルに達すると見込まれており、オーガニック農産物の市場規模だけでも2000億ドルを超えるという予測がある。
一方、世界最高峰クラスにランク付けされているタイ料理レストランは、タイ独自の天然由来の貯蔵食品を活用することで、料理のレベルを飛躍的に向上させてきた。また、タイで操業する革新的な農業関連企業や農業協同組合は、輸出用タイ食品の品質をさらに高めるべく、倫理的かつ持続可能な農法を推進している。
オーガニックブームが火付け役となって注目されているタイ産食材とタイ料理。本稿では、その現況をお伝えする。
タイの広く豊かな土壌と高温多湿の気候は、パイナップル、ドリアン、マンゴスチン、マンゴーといった多彩な南国フルーツから、ウコン、ガランガル、パクチー、レモングラス、チリなどハーブ・香辛料に至るまで、個性的な食材を豊富にもたらしてきた。これらの食材は、消化を助ける、血流を改善するなど、健康面のメリットがうたわれているものも多く、健康に配慮する世界中の人々やレストランから渇望されているものばかりだ。
こういった農作物は、今日に至るまで古くから伝わる知識や農法を生かした、伝統的かつ持続可能な農業慣習によって育てられているケースが多い。タイ北部の都市 チェンマイに近いメーター郡で何世紀も続いている共同体に代表される全国の農業協同組合は、代々伝承されてきた農法で現在でもクリーンかつ安全な農作物の生産を続けており、国の至るところでタイ経済の安定成長に貢献している。
現在タイでは、多くの企業がオリジナルの農産物や農産物加工食品を生産・輸出、世界的に活躍している。
オーガニック食品輸出業者の1つであるBlue River International社は、全国の持続可能な農場で新鮮な果物や野菜、ハーブを栽培。同社が生産するランブータン、ココナッツ、マンゴー、ジャックフルーツ、マンゴスチン、スネークフルーツといった多彩な農産物は、徹底した管理下で育てられ、伝統的手法で丁寧に収穫されている。品質保持を最優先した独自の供給チェーンも築き上げ、例えば、自然のままの柔らかい状態を保持すべき野菜はカバーで覆って育て、食材の味を損なわないよう注意深く管理されるとともに、素早く調理できる状態で出荷されている。
バンコクとプーケットで評判のレストラン、Blue Elephant社もまた、タイらしい料理にこだわり、漸進的発展を遂げてきた企業として、長年多くの批評家や顧客に愛されている。タイで採れた新鮮な自然食材を使って生産されるカレーペーストや香辛料、ソースといったオリジナル製品は、無農薬・無添加であることと遺伝子組み換え作物を一切使用しないことを徹底。独自の手法で生産されているハーブ、香辛料、ナッツをはじめとする高級食材にも同様のポリシーを貫き、海外市場でも高い評価を獲得している。
「私の母の世代には、食物の栄養素や治癒効果を高めるためにハーブが一般的に使われていました」と同社の創設者Nooror Somany Steppe氏は語る。「私たちは、Blue Elephantブランドのもと輸出しているタイ食品が有する健康・美容効果をとても誇りに思っています」。