日経ビジネスONLINE Special 週刊日経ビジネスオンライン SPECIAL日経ビジネスオンライン

地方創生なくして日本の未来はない企業や働く人々の知恵と戦略に期待

日本が持続可能な国であり続けるには地方創生が不可欠。そして地方創生の鍵を握るのが、全国に拠点を持つ企業の力である。地域に根づいた金融機関や労働組合、大学などと連携して知恵を出し合い、日本の未来を切り開いていってほしい──。冒頭の基調講演では、前・内閣府特命担当大臣として地方創生に尽力した石破茂衆議院議員が登壇し、このように力強く聴衆に呼びかけた。

 今後、日本の人口が未曽有のスピードで減っていくことは間違いない。今から83年後の2100年には日本の人口が現在の半分、5200万人にまで減ると試算されている。これは明治の終わり頃と同程度だが、人口構造が全く違っており、高齢者の割合が非常に高い。

 なぜこんなことになるのかというと、周知のようにそもそも結婚する人が減っている。初婚年齢も第一子出産年齢も高くなり、女性ひとりが生涯に産む子どもの数も減っている。

 地域ごとの出生率をみると、年によって変動があるものの、高い順に沖縄、島根、宮崎、鳥取、熊本と続く。反対に、とても子どもが生まれにくくなっているのが東京だ。つまり、赤ちゃんが比較的多く生まれる地方から、生まれない東京へと人が集まっているわけで、これでは人口が減るのは当たり前といえるだろう。

 2050年には世界の人口は約97億に達すると予想されている。世界の人口が増える中で日本の人口は減る。そのとき、世界の金融市場において円が今の水準を保てるとは限らない。例えば円が安くなると何が起こるかというと、食料を外国から買うのが難しくなる。日本の農林水産業はすでに疲弊しており、食料自給率はどんどん下がっている。こんな状況で、どうやって将来にわたって日本人を養うことができるだろうか。

 食の問題だけではない。超高齢社会になれば、輸血用の血液も足りなくなり、認知症患者が認知症患者を介護する“認認介護”が増え、社会保障の維持が困難になり、日本中が空き家だらけになり、火葬場が足りなくなる──これらはすべて起こり得ることだ。日本全体がゆっくり衰退に向かっているのである。こうした状況をどう食い止めるかを、今、我々が考えなくてはならない。日本がサステナビリティを取り戻し、インディペンデントな国であり続けるにはどうすればいいか。

 その答えのひとつが、「地方創生」である。

農林水産業はまだまだ伸びる
地方に眠る観光資源を掘り起こせ

衆議院議員
前・内閣府特命担当大臣(地方創生担当)

石破茂
1957年2月4日生まれ。鳥取県出身。慶應義塾大学法学部卒。86年7月に衆議院議員に初当選し、以降10回連続当選。2007年防衛大臣として初入閣。以後、農林水産大臣、自由民主党政務調査会長、自由民主党幹事長を歴任。2014年に内閣府特命担当大臣(地方創生・国家戦略特別区域担当、2016年8月まで)に就任し、地方創生関連法の成立に力を尽くす。

 現在、地方の農林水産業は低迷しているが、実は日本ほど農業や漁業、林業に適した国は世界のどこにもない。四季があって温暖、1年を通して降雨量があり土壌は肥沃、かつ四方を海に囲まれ、国土の7割を森林が覆っている。こうした豊かな自然の資源を活かすことによって、日本の一次産業はまだまだ伸びる可能性を秘めている。

 例えばマーケットを海外に求めたり、制度を整えたり、消費者のニーズを見直したりすることで市場は大きく広がるはずだ。

 実際に、国家戦略特区を使って、大きく業績を伸ばしている地方もある。新潟市は2014年5月に国家戦略特区の指定を受け、農用地区内にイタリアンレストランやカフェなどをオープンした。通常、農用地には農業用施設以外は建設できないが、特区内の規制緩和措置として開業できたのである。するとレストランは大人気、新潟市のその地域も農と食が隣接する美食のまちとして注目されるようになり、首都圏からツアーも組まれるまでになった。

 地方は観光産業においてもまだまだ開拓の余地がある。四季があって自然が美しく、土地ごとに文化や芸能、おいしい酒や食のあるのが日本。どの地域であっても、見回せば必ず人を呼べる観光資源があるはずだ。問題はどうやってそれらを最大限に売っていくか。これは霞が関や永田町にいても決して分からない。地方のことは本当のところは地方の人にしか分からないからである。

地域に根差す6つの主体が連携し
再生への扉を開いてほしい

 私が地方創生担当大臣の在任時に成立させた地方創生関連法では、産・学・官・金・労・言が、連携して戦略を練ることを求めている。金とは銀行や信用金庫などの金融機関、労は労働組合、言とはマスメディアのことだ。地域の状況は、地域の企業や商工会議所、業界団体が一番よく知っている。地域経済は、地域の銀行がよく知っている。また、その地域でどんな人がどう働き、どうすれば子どもを産み育てやすいのかをよく知っているのは地域の労働組合に他ならない。こうして産・学・官・金・労・言の6つの主体が連携し、KPIを設定し、PDCAサイクルをきちんと回すことによって、本当の地方創生が成し得るのだ。

 やりっぱなしの行政、頼りっぱなしの民間、無関心の市民。これが三位一体になってしまっている地域に未来はない。新しい国をつくるのは、いつの世も都ではなく地方であり、権力者ではなく権力を持たない人たちだ。民間の企業や働く人がどう知恵を出すかに、日本の未来がかかっている。