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SDGsを反映した中期経営計画社会課題の解決を成長の原動力に

国連の持続可能な開発目標(SDGs)をいかに経営と融合させ、実践していくか──。多くの企業が模索するなか、いち早くこの課題に着手し、事業を展開しているのが、情報機器・ITソリューション大手のリコーだ。17の目標のうちの8項目を、自社事業で解決すべき社会課題と定め、経営計画として一本化している。同社の加藤茂夫氏がその詳細を語った。

 2015年、国際社会は大きな転換期を迎えた。9月には国連が「持続可能な開発目標(SDGs)」を採択し、12月にはCOP21でパリ協定の合意が得られた。時代は低炭素から脱炭素に移り、「イノベーションやテクノロジーによって社会課題を解決していく」ことが企業に求められるようになった。今年度からスタートした19次中期経営計画(以下、中計)には、SDGsを経営にどのように反映させ、実践していくかが盛り込まれている。

リコー
執行役員サステナビリティ推進本部長
加藤茂夫

 中計ではまず、リコーが向かう方向性を明らかにした。当社の創業の精神は、「三愛精神:人を愛し、国を愛し、勤めを愛す」、つまりステークホルダーを含めた社会全体への貢献を第一義として行動していくこと。そのうえでサステナビリティメッセージとして「Driving Sustainability for Our Future.」を発信していく。これは、社会課題に広く目を向け、新しい市場や価値を生み出し、社会の発展と企業の成長とを両立させるというメッセージだ。そうした土台があってはじめて、「お客様に提供できる価値」が生まれると考えている。この当社ならではの提供価値を「EMPOWERING DIGITAL WORKPLACES」として表現した(図1)。

 これまで当社は、価値提供領域をオフィス中心としていたが、今回の中計においては、「WORKPLACES(働く場所、ワークプレイス)」の解釈を大きく拡張した。例えば学校のような教育現場や、病院のような医療の現場、さらには屋外も含め、社会のさまざまな働く場所へと、当社が価値を提供する領域を拡げていく。そして、働く場所での多様な仕事をデジタル化し、仕事と仕事をつなぎ、データを分析することで、お客様の「知の創造」を支援する。ワークプレイスの広がりと、「知の創造」支援という価値の提供。リコーの進むべき方向が中計に明確に示された。

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3PsバランスとSDGsを整合
5つの重要社会課題を設定

 当社は2002年に目指すべき社会の姿として、「3Psバランス」を提唱した。3Pとは、「Prosperity=持続可能な経済」「People=持続可能な社会」「Planet=持続可能な地球環境」である。2015年にSDGsが採択されたとき、この3つに「Peace」「Partnership」を加えた5Psの重要性がうたわれているのを見て非常に驚いた。我々が2002年から考えてきたこととSDGsが非常にマッチしていると感じた。

 そこで、今年度スタートする中計策定にあたり、事業を通じて取り組む社会課題を設定するプロセスの中でSDGsを経営戦略に取り込んでいった。SDGsの目標のうち、当社のテクノロジーによってどのような課題を解決できるのかというマッチングを図ったところ、優先的に取り組むべき項目として8つを絞り込み、さらに当社の企業理念や事業戦略、環境経営の取り組みに紐づけることによって、5つの重要社会課題(1.生産性向上 2.知の創造 3.生活の質の向上 4.脱炭素社会の実現 5.循環型社会の実現)を設定した。それらの重要社会課題の解決が、3Psバランスにどう寄与するかも整理した。この一連の作業をすることで、当社の事業とSDGsとを一体化させたのである(図2)。

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2050年までにCO2排出ゼロへ
日本で初めてRE100に参加

 5つの重要社会課題の中でも、特に持続可能な地球環境の領域では、パリ協定を尊重し、高い目標と行動計画を設定した。2030年、2050年を目指した新しい環境目標の設定と「RE100」への参加表明である。

 SDGsへと向かう世界の潮流の中で、当社も、お客様から環境や社会課題への取り組みについてさまざまな要求をいただくことが増えてきた。環境や社会課題への取り組みが、ビジネスを続けていくうえでの必要条件になってきたなという思いを強くしている。

 新しい環境目標についてだが、まず、目標達成に向けて新たに設定したリコーグループ環境宣言の中に「脱炭素社会、循環型社会の実現」という表現を盛り込んだ。温室効果ガスの排出削減については、2050年目標を改定し、バリューチェーン全体で排出ゼロを目指すことを宣言した。達成に向けて2030年目標も設定し、達成に向けたロードマップをつくり、お客様を含めたバリューチェーン全体で取り組んでいこうと働きかけているところだ。

 また、新たな目標設定に合わせ「RE100」に参加した。RE100とは、事業に必要な電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的な企業集団のこと。2017年7月19日現在、ネスレやイケア、ナイキ、BMW、P&G、スターバックスなど世界で101社が参加している。日本企業としては当社が初めての参加になる。当社は、使用電力を2030年までに少なくとも30%、2050年までに100%再生可能エネルギーで賄うということを宣言している。

 こうした数々の目標を掲げ、環境事業や社会課題解決に向けた具体的な取り組みを開始している。例えば、脱炭素に向けたプロジェクトとして、薄膜を使い、室内光でもエネルギーを発生させる完全固体型 色素増感太陽電池の開発にチャレンジしている。完成すれば、電気配線の敷設されていないような場所でも無線キーボードなどのIoT機器を使用できるようになる。また昨年、静岡県御殿場市に環境事業開発センターを設け、バイオマスボイラーによるエネルギーの地産地消モデルの検討や、マイクロ水力発電の実証実験など、省エネ・再エネ関連ビジネスの開発にも取り組んでいる。

 最後に、地方自治体・団体との連携による社会課題解決について紹介する。国内の各都道府県にある販売会社の支社では、各支社長が自治体や団体と連携し、地方創生に貢献するさまざまなプロジェクトを立ち上げている。その自治体の資源を活用し、あるいは組み合わせて利益を生み出す仕組みづくりに挑んでいる。今後も、新しいソリューションを開発し、地域の活性化を目指したまちづくりを提案していく。

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