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企業はSDGsを成長機会と捉えるべき取り組むことでアイデアが生まれる

「SDGsの推進には民間セクターの参加が不可欠」──2017年7月に米国ニューヨークの国連本部で開かれたハイレベル政治フォーラムでは、企業の役割が明確に示された。一方で、非価格競争にさらされるのではないかといった懸念も拭いきれない。企業はSDGsをどのように捉え、取り組んでいくべきかについて、国際連合大学の沖大幹氏が講演した。

 国連は2015年9月に全会一致で「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を採択した。ここに含まれているのが、17の目標、169のターゲット、232の指標を盛り込んだ「持続可能な開発目標」(SDGs)である。国際連合大学(UNU)は、日本(東京・表参道)に本部がある唯一の国連機関として、SDGs達成に向け、日本が得意分野においてリーダーシップを発揮できるように支援している。

 SDGsは、21世紀の国際的な大義名分であり、「誰一人取り残さない」というキーワードでお分かりのように理想主義的な側面がある。その点が2001年にまとめられたMDGs(ミレニアム開発目標)との大きな違いである。本当に達成できるかという疑問を投げかけられることもあるが、それに対して国連では、「目指すべきゴールとして掲げることが必要なのだ」と回答している。

 それでは、企業にとってSDGsはどういう位置づけであるべきなのか。それは、社会的責任としてしぶしぶ取り組むものではなく、SDGsに取り組むことによって新たなモノやサービスを生みだすアイデアを獲得したり、さらなる成長の機会があると捉えるべきである。

 例えば、最後のフロンティアである途上国のBoP(Base of the Pyramid)層を対象にしてSDGsに取り組むことで、新たな市場の創出と同時に雇用の拡大も可能になる。重要なのは、SDGsへの取り組みはあくまでも本業の一環として行うべきであり、慈善行為や寄付行為ではないということだ。企業と投資先とがWin-Winの関係になるように進めていくことが求められる。

 もちろん、本業での投資であるから、必ずしもうまくいくとは限らない。あくまで私の意見だが、無理をしてでもSDGsの17の目標すべてに取り組む必要はなく、できるところから無理なく始めればいいのではないだろうか。リスクを減らして企業価値を高めることが重要なポイントだからだ。

3万数千の百年企業が存在する日本
今こそSDGsをビジネスに生かせ

国際連合大学上級副学長
国際連合事務次長補
沖大幹

 持続可能な開発を実現するには、「健全な自然環境」「持続可能な経済発展」「平和で公正で包括的な社会」という3つの要素が基盤にあり、互いに支え合っているという認識が大切である。SDGsはこの3要素を基盤とする世の中をもっと良くするための目標であり、人類の幸福(Well-being)をゴールに定めている。かつては環境を損なって経済を成長させるという考え方もあったが、今は経済発展によって環境保全が可能になっている例は世界においても日本においても枚挙にいとまがない。

 特に日本では、売り手(経済)、買い手(社会)、世間(環境)の「三方良し」を理想として、3万3000もの100年企業が存在している。そうした風土にある日本の企業にこそ、SDGsはチャンスになるはずだ。

 自らはコストやリスクを負わずに恩恵だけ得ようとするフリーライダーへの警戒感から、二の足を踏んでいる企業もあるだろう。

 しかし、2017年7月にニューヨークの国連本部で開かれたハイレベル政治フォーラムでは、SDGsの推進には民間セクターの参加が不可欠との認識を明確に打ち出した。非価格競争にSDGsへの取り組み度合いが利用される懸念もある。我々国連大学も「SDGs企業戦略フォーラム」を立ち上げ、必要な施策を国連の関連組織に提言するなど積極的に関与しようと考えているので、ぜひ活用していただきたい。