Face to Faceで広がるコミュニケーション
Vol.2 株式会社 HRT 大川 恒さん ワールド・カフェで始める組織改革 オープンな対話で未来をつくる

話しやすい雰囲気は大事 問題の火種を早い段階で消すことができる

株式会社 HRT 大川 恒さん

株式会社 HRT
代表取締役

大川 恒さん

シカゴ大学経営大学院でMBAを取得。早稲田大学第一文学部卒業。株式会社HRT 代表取締役。ホールシステム・アプローチなどを生かした組織開発コンサルティングを展開している。地域包括ケア、農商工連携、地域活性化などをテーマに、ワールド・カフェやOSTを用いたワークショップや、ワールド・カフェ、OST、AI、フューチャーサーチなどのファシリテーター養成講座を開催。一般社団法人地域ケアコミュニティ・ラボの代表理事も務めている

──大川さんは長年、企業の組織改革を支援されてきましたが、どこの企業もコミュニケーションに悩んでいるようですね。

多くのビジネスの現場で、雑談のようなインフォーマルなコミュニケーションが取りにくくなっています。簡単な話でさえ気軽にできないのに、重要な問題となるとなおさら話しにくいでしょう。会社の存続に関わるような問題が発生したとき、火種が小さいうちに現場の社員が上司に話せるか、大きくなるまで話せないかでは、結果が全く違いますね。だから、現場の問題を気軽に話せる雰囲気や場づくりはとても大事なんです。

──なぜ、コミュニケーションを取りにくくなったのでしょう。

運動会、社員旅行などの会社行事がなくなったこともありますが、IT化によってメールやSNSでコミュニケーションを取るようになったことも大きいと思います。メールだと、すぐに返信しなくてはいけない。 「CC」で送られてくるメールも含めると目を通すメールの数が増えました。

──ゆえに実際に顔を合わせる機会がなくなった?

IT依存によって、コミュニケーションスキルが低下し、コミュニケーションに自信が持てなくなったこともあります。それ以外にも効率的であることだけを優先し過ぎたこともあると思います。その分、対面で話す時間が少なくなりました。

こんな忙しい時代だからこそ、社員同士が気軽にリラックスして話せるような場づくりが必要なのです。私は組織改革のお手伝いをする際は、その組織の課題や目指したい未来について話し合う手法「ホールシステム・アプローチ」を提案しています。「ホールシステム・アプローチ」とは、個々に部署や階層ごとに会議や打ち合わせを積み重ねるのではなく、関係者が一堂に集まり、ありたい未来の姿などを話し合う対話手法です。

ホールシステム・アプローチにはいくつかの代表的な手法があり、中でも「ワールド・カフェ」は、参加者同士が気楽に話し合い、考え方を共有し、相互理解を深めることに効果的です。企業に限らず、自治体、学校、病院、地域コミュニティーなどにおいて、コミュニケーションを活性化する手法として広く活用されています。

──ワールド・カフェについて、もう少し詳しくお教えください。

1995年に米国で誕生しました。ワールド・カフェは議論を戦わせるディべートではなく、立場や意見の違いを超え、オープンに話し合い、オープンに聞くダイアログ(対話)に基づいています。

ワールド・カフェでは、本物のカフェのようなリラックスした雰囲気の中で、問いに集中した会話を行います。所要時間は1時間半から3時間。メンバーの組み合わせを替えながら、テーブルに置かれた模造紙に自由に文字や絵を描きながら、4~5人単位の小グループで話し合いを行うことで、あたかも参加者全員で話し合っているような効果が得られます。

ワールド・カフェの標準的な流れ
								テーブルごとの話し合い(第1ラウンド):4人ずつテーブルに座って、テーマ(問い)について話し合う
								↓
								席替え
↓
								テーブルごとの話し合い(第2ラウンド):各テーブルに1人だけテーブル・ホストを残し、他のメンバーは『旅人』として他のテーブルに移動する。新しい組み合わせで話し合いを続ける
								↓
								席替え
↓
								テーブルごとの話し合い(第3ラウンド):旅人が最初のテーブルに戻り、旅先で得たアイデアを紹介し合いながら話し合いを続ける
								↓
全員での振り返り:カフェ・ホストがファシリテーターとなって全体の話し合いを行う
4~5人単位の小グループで話し合いを行う「ワールド・カフェ」は、メンバーを組み替えながら行うことで参加者全員で話し合っているような効果が得られる

ワールド・カフェの話し合いで、多様なものの見方をつなげて、参加者全員で発見した価値、ありたい姿などを共有します。また、無理に結果を出すことに最初からこだわっていないことにも特徴があります。その点、自分の考えを伝えやすいと感じることが多いと思います。

──それは、どういうことでしょうか。

私たちは、自分の意見と、それを提示した人とを一体として見なす傾向があるようです。自分の意見が否定されると、人格まで否定された気持ちになってしまいます。それにより、会議などで他の人と異なる意見を主張するのをやめて対立を避けようとする傾向があります。

その点、ワールド・カフェでは、参加者がオープンな気持ちになって、相手の意見を尊重しながら、率直に意見を交わすので、新しい発見や共通の思い、ありたい姿に気づくことができます。

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