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未来の経営と働き方を考えるイベント開催

AI(人工知能)などテクノロジーの飛躍的な進化はビジネスを変え、企業を変えつつある。では、そこで働く人材はどう変わるべきか。未来の経営と働き方を考えるイベント「Future of Work Japan 2018」が2018年9月6日(木)・7日(金)の2日間、東京・虎ノ門ヒルズで開催された。働き方改革の先進事例やそれを推進するソリューション・サービスが一堂に会し、働き方改革とそれに伴う経営の未来が提示された。ここではその様子をレポートする。

未来の経営と働き方を考える3つの機能を備えたイベント

 「Future of Work Japan」が目指すのは、発展著しいテクノロジーの進化を受けて、未来の経営や働き方がどう変わっていくのかを改めて考えることだ。当然、それは働き方改革にも直結する。 

 本イベントは大きく3つの機能で構成されている。(1)ユニークな組織づくりや先進的な人事制度の事例から知見を得る「セッション」、(2)出展者と参加者が話し合い、変革へのきっかけを得る「ビジネスマッチング」、そして(3)組織の課題解決や生産性向上につながるサービスやプロダクトなどの知識を得る「展示会」である。

 「セッション」の基調講演では、働き方改革の先進企業として知られるネスレ日本の代表取締役社長兼CEOの高岡浩三氏や、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンをV字回復させたマーケターの森岡毅氏が登壇したほか、一橋大学ビジネススクール教授の楠木建氏、スカイマーク代表取締役の佐山展生氏などそうそうたるメンバーが顔をそろえた。

 また、働き方改革など「経営と働き方を変革した事例」がテーマのセッションが多いのもこのイベントの大きな特徴だ。再生医療への事業転換に成功した富士フイルム、旅館業からIT業へと転換した陣屋、通信事業者からライフデザイン事業者へと進化するKDDI、企業価値向上のために働き方変革を推進するアクセンチュアなど多くのセッションが用意された。

妥協なしの姿勢を貫き、改革に臨むアクセンチュア 

加治 慶光 氏
アクセンチュア株式会社
チーフ・マーケティング・イノベーター
加治 慶光

 3年半にわたって働き方改革に取り組み、高い成果を上げているのが、総合コンサルティング企業のアクセンチュアだ。同社のチーフ・マーケティング・イノベーターの加治慶光氏は「働き方改革『Project PRIDE』の進化〜生産性向上から価値向上へ」と題する講演を行った。

 企業にデジタルをてこにしたイノベーションが必要とされる時代にあって、同社は急成長を遂げている。従業員数はここ3年で倍増し、1万人を超えた。しかし、ハードワークであるとの評判によって採用に苦戦するなど、さらなる成長を目指す同社の経営課題にもなっていた。

 こうした背景から現社長の号令一下でスタートしたのが「Project PRIDE」である。「まずアクセンチュアがグローバル全体で掲げる行動指針である6つのコアバリューを見つめ直すことから着手しました。クライアントを第一に考えるClient Value Creation(クライアント価値の創造)、他人を尊重するRespect for the individual(個人の尊重)など、それぞれのコアバリューを念頭に置いたKPI(評価指標)を設定しました」と加治氏。

 同時に徹底したのが、ビジネスマナーだ。これまでおろそかにされがちだった社内でのちょっとした挨拶を徹底した。また、ハラスメントの撲滅もさらに厳しい姿勢で臨んだ。割れたガラスを放置することで治安が悪くなるという“割れガラス理論”に基づき、ちょっとしたことでも妥協しない“ノートレランス”の姿勢を改めて徹底した。加治氏は「当たり前のことを組織全体で徹底することが重要」と指摘する。

 一方で、組織変革のフレームワークを活用した包括的な施策の策定にも取り組んだ。経営から現場までをカバーした縦軸に対して、仕組みから意識までを横軸として必要な施策を実行していく。働き方改革のプロジェクト・マネジメント・オフィス機能の設置、メールのみならず、ビデオなども用いた継続的なトップからのメッセージ発信、浸透状況の定期的な調査と残業時間や有休取得率など約10項目をダッシュボード形式で可視化、これらの定量調査結果や各現場のヒアリングに基づいたさらなる改善プランを本部長から発表するなど、様々な施策を行った。

 さらに、仕組み化やテクノロジー活用も積極的に取り組んでいる。在宅勤務制度の全社展開、残業削減につながる給与制度の見直し、コラボレーションツールの活用、フリーアドレスとペーパーレス化、チャットボットやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入などだ。

 こうした取り組みの成果は数字に表れている。1人当たりの1日の平均残業時間は1時間となり、離職率は半分以下に低下した一方で、有休取得率は75%から85%へ、また女性社員比率も22%から30%に増加した。就職先企業の人気ランキングでも上位を占めるようになった。経営と一体となった働き方改革はまだ道半ばではあるものの、同社の持続的な成長の基盤づくりにつながっている。

トップダウンと情報共有で組織を変革するKDDI

滝山 義隆 氏
KDDI株式会社
総務・人事本部 人事部 部長
滝山 義隆

 同様に持続的な成長のために働き方改革に取り組んでいるのが、通信大手のKDDIだ。「KDDIの『働き方“変革”』〜ワクワクを提案し続けるために〜」というタイトルで講演した同社の総務・人事本部 人事部 部長の滝山義隆氏は「持続的な成長と新たな成長軸の確立の両方を実現しようとする中で、これまでと同じでは現状維持すら望めないという危機感がありました」と話す。

 働き方改革の実現には全ての階層で意識と行動の変革が必要になる。同社はその第一歩として2017年1月の社長挨拶で働き方変革と社内風土改革の断行を宣言した。「組織の変革には経営トップが意思を示すのが一番重要です。その一言がないと下は動けません」と滝山氏はトップのコミットメントの重要性を強調する。同社ではこの宣言を受けて「働き方変革推進委員会」が設置され、本格的な改革が動き出す。

 同社の働き方改革は大きく2つのステップで行われた。最初に行ったのは労務時間管理の徹底だ。それにより非管理職の平均所定外労働時間の約14%減を実現した。そして2年目の2018年度にはステップ2として、各本部長による「働き方変革宣言」、他社事例の共有、カフェテリアの改装、RPAの全社導入、テレワークや健康経営の推進など、矢継ぎ早に施策を実行した。

 「思いつく施策をまずやってみようというスタンスで臨んでいます」と滝山氏が語るように、様々な工夫が盛り込まれている。本部長の働き方宣言を顔写真付きでイントラネットに掲載して常時見えるようにしたり、働き方改革を進めている他企業の人に講演を依頼したり、稼働率の低いカフェテリアの一部を打ち合わせや休憩ができるスペースに改装した。

 さらに2018年3月には全社で本格的にRPAを導入し、ヘルプデスクを開設。テレワークデイをてこにテレワークをさらに推進するなど、テクノロジー企業としての取り組みにも積極的だ。「働き方変革は人事部が言うものではなく、社員自らがワクワクしないと実現できません。そのために各部門での好事例の共有やコラボレーション、パートナーシップを重視しています」と滝山氏は働き方改革を推進する上でのポイントを語った。

多彩な顔ぶれの30社が製品やサービスを展示

 展示会場では、セールスフォース・ドットコム、SAPジャパン、日本マイクロソフトといった大手テクノロジー企業や、働き方改革を推進するソリューションを提供するビズリーチ、Slack Japan(スラック・ジャパン)、ChatWork(チャットワーク)、ITを駆使して業務の生産性向上を促すfreee(フリー)、マネーフォワード、ウイングアーク1st、弁護士ドットコムなど、多彩な顔ぶれの30社がそれぞれの製品やサービスを展示した。

 また、展示会場に隣接するスペースに設けられたミートアップエリアでは、来場者と出展社のマッチングによる交流もあり、活況を呈していた。

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