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人材採用大変革時代に企業が実行すべき改革

プロ・リクルーターの存在が採用の成否を左右する

 現在は、日本でも10万人規模のタレントプールを構築している企業があると言われる。しかし、自社に合ったタレントプールを構築するには相当な時間と手間がかかる。だからこそ、ビズリーチのような人材データベースを利用し、直接スカウトする企業が増えているのだ。

 ダイレクト・リクルーティングに取り組む先進的な企業は、日々データベースを検索し、求めている人材が見つかればスカウトメールを送信するというスカウト活動を活用している。しかし、こうした仕組みをうまく利用できている企業ばかりではない。従来の待ちの姿勢のままの企業も依然として多い。

 「社内に“プロ・リクルーター”がいるかどうかが大きな差につながっています」と多田氏は指摘する。プロ・リクルーターとは、事業戦略に基づいて採用計画を立案し、自社で採用したい人材を自ら探し出し、能動的に採用活動を行う採用のプロフェッショナルだ。

 企業内ヘッドハンターとも言えるプロ・リクルーターの存在は、採用活動を大きく変えていく。「例えば、職務経歴書はプロ・リクルーターから見れば“宝の山”です。採用管理ツールに登録しておけば、タレントプールとしても利用することができます。プロ・リクルーターがいれば、選考して終わりではなく採用データの分析や戦略立案など採用管理ツールを有効に活用できるようになります」(多田氏)。

多田 洋祐 氏
「プロ・リクルーターがいれば採用管理ツールを有効に活用できる」

 プロ・リクルーターの仕事は採用事務ではない。採用の仕掛け人であり、マーケターとしての役割も担う。採用のプロとしてのスキルとマーケティングセンスが求められる。当然、優秀な人材でなければ務まらない。そうした人材を採用担当者にアサインできるかどうかは、経営者の意思次第だ。

 ここに逆説的なデータがある。優秀な人材が不足している企業ほど、面接官に優秀な人材をアサインしていないのだ。このデータが示しているのは、優秀な面接官がいる企業ほど、優秀な人材を獲得できているという図式だ。

(図)優秀な人材が多い企業ほど、優秀な人材を面接官にアサインしている
横軸の得点が高いほど「優秀な人材を面接官にアサインしている」ことを示します
(出所:横浜国立大学の服部泰宏研究室(当時)「採用学プロジェクト」と株式会社ビズリーチの共同研究『採用学I』の調査結果より)
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 「欧米ではリクルーターの能力・言動が求職者の入社意思決定の極めて重要な影響因であるという科学的な見方が人事担当者の常識になっています。だからこそ、リクルーターが重要視され、憧れの花形職業にもなっているのです」と多田氏。

 プロ・リクルーターを選ぶ際には、ダイバーシティも重要になる。欧米の先進企業では、現場および人事部門、さらに人種、性別、年齢など、リクルーターの顔ぶれにもダイバーシティが意識されている。ダイバーシティを推進していくうえで、こうした取り組みも必要になる。

採用変革に向けた環境は整いつつある

 採用活動で欲しい人材を獲得し、企業の成長に結びつけていくには、採用活動をしながらPDCAサイクルを回していくことが必要になる。いつ、どこで、どんなアクションをしたら効果があったのか、どういうプロセスで採用できたのかなど、ITの進化によって採用プロセスのデータを見える化し、効果を測定できるようになりつつある。

 こうした管理ツールを活用することも、採用活動の変革を評価するうえでは重要だ。まだまだアナログの世界で勘と経験で採用している企業も多いが、定期的に施策やツールの費用対効果を測り、戦略を継続的に見直し、効率的な採用活動をしていくことも必要になる。

 例えば、ビズリーチでは戦略的な採用活動を支援するサービス「HRMOS(ハーモス)採用管理」を提供している。クラウド型で直感的に利用でき、日々の採用活動を通してダイレクト・リクルーティングなどのノウハウを集約することができる。採用候補の母集団を広げて、リファラル採用を促したり、タレントプールを構築することも可能だ。こうしたツールを利用することで、採用変革に拍車をかけ、攻めの採用活動を実現することができる。

 採用変革はすぐに業績向上に結びつく即効薬ではない。営業活動やマーケティング活動の変革と同様に、効果が出るまでに時間がかかる。しかし、多くのデータが示しているように“攻めの採用活動”と企業業績は深く結びついている可能性が高い。業種・業態を問わず、それに気づいている企業も多い。

 「採用先進企業では、プロ・リクルーターが採用した人材が、事業を成長させ、企業イメージを高め、それがまた優秀な人材を呼び込むという正の循環サイクルが始まっています。ただし、まだまだ少ないのが現状です。その意味では“始めたもの勝ち”のブルーオーシャンの状態といえるでしょう」と多田氏。今、採用変革に向けた第一歩を踏み出すことが、5年後の企業の業績を左右することになる。

多田 洋祐 氏
<Profile> 2006年、中央大学卒業。大学在学中よりヘッドハンティング会社で経験を積み、卒業後、エグゼクティブ層に特化した人材紹介会社を立ち上げてトップヘッドハンターとして活躍する。2012年、人事部長として株式会社ビズリーチ入社。ビズリーチのサービスとヘッドハンターとしての経験を融合し、「ダイレクト・リクルーティング」と命名する。現在はキャリア事業全体を統括し、日本においても広まりつつある「ダイレクト・リクルーティング」のさらなる普及に努める。
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