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新卒一括採用を廃止したヤフーの挑戦とは

CTO直下に採用チームを設置、多様な経験を持つスタッフが集結

 第1に、強烈な推進体制について。まず、従来は人事部門の中にあったエンジニア採用チームをCTO(最高技術責任者)直下に置いた。それが、クリエイター人財戦略室である。斎藤氏は同室の室長として採用チームを率いた人物である。

 「採用チームは、現場が求めるスキルや人材像を十分につかめないこともありました。一方の現場は『忙しいのに、なぜ採用に協力しなければいけないのか』と思いがち。それが、以前の状態でした。CTO直下に採用チームを置くことで、両者の距離を縮めることができました」と斎藤氏は言う。

(図2)強烈な推進体制

 クリエイター人財戦略室が採用の対象としているのはエンジニアとデザイナーである。同室には多彩なスタッフを集めた。人事部門で採用を担当していたスタッフだけでなく、人材育成や技術マーケティング、技術ブランディング、サービス企画などの経験者も含まれる。以前に比べて人数も増やした。27人だった旧組織に対して新組織の陣容は64人となった。

 第2に、採用対象の再定義。この施策の一環として導入した新卒一括採用の廃止は、様々なメディアに取り上げられた。30歳未満で未就業であれば、新卒採用に応募できるという制度だ。狙いは海外留学組などの多様な人材の確保である。

 「応募は通年で受け付けていますが、入社の時期は4月と10月の年2回。育成・配置などのオペレーションを考えると、入社時期がバラバラでは現場の負荷が増大する懸念があります」(斎藤氏)

 キャリア採用の柱に据えられたのは、ダイレクト・リクルーティングの強化である。斎藤氏はこう続ける。

 「以前は自社サイトで募集して応募を待つ、あるいはエージェントへの依頼が主体でした。しかし、人材の質と量の両面で満足できる状態とはいえませんでした。そこで、転職の意向を持つ層に対して、こちらからアプローチしようと。人材データベースを活用したり、社員に紹介を呼びかけたりという形で攻めの採用への転換を図っています。あわせて、東京だけでなく、大阪や福岡などでも採用活動を活発化させています」

制度をアップデートして魅力を高め、より優秀な人材を引き付ける

 第3に、選考基準のデータ化である。キーワードは可視化、定量化、標準化。具体的な施策としては、オンラインコーディング試験を導入して応募者のスキルの可視化を促進。エントリーシートのデジタルジャッジという施策もある。過去の合否傾向に基づいてエントリーシートを機械的に判別するというもので、書類選考に要する時間を75%削減できたという。また、場所の制約を取り払えるオンライン面接、複数の面接官で対応できる録画面接なども導入した。

 「面接官の基準にはどうしても甘辛がありますが、こうしたバラツキをできるだけなくしたい。また、面接データを徹底的に分析することで暗黙知を集合知に変えていきたいと考えています」(斎藤氏)

 第4に、魅力的な制度づくりと情報発信。例えば、エンジニアやデザイナーに対する月1万円の技術活動費補助。対象者は約3,000人で、本やデバイスなどを買いたいときなどに役立てることができる。また、技術カンファレンスの開催をはじめ、広告やオウンドメディアなどを通じて技術関連の情報発信も積極化させている。優秀なエンジニアを引き付けるためには、「ヤフーはテクノロジーを活用してこんな面白いことをやっています」といった情報を繰り返し発信することが重要だ。

 「最近は『就社』の意識が薄れて、自分を成長させてくれる環境があるかどうかを見極めて入社を決める人たちが増えています。特に優秀なエンジニアは引っ張りだこなので、入社後に長く活躍してもらうためにも制度の魅力を高めるためのアップデートが欠かせません」と斎藤氏は語る。

(図3)採用に関連する機能強化

 ヤフーにおける採用のアップデートの成果は、数値でも示されている。例えば、ダイレクト・リクルーティングによる採用数は2015年度に8人だったが、2017年度には41人と5倍に増えた。また、社員紹介による採用数は同じ期間で49人から76人に増えている。

 「現在、ダイレクト・リクルーティングや社員紹介などの攻めの採用はキャリア採用全体の半分ほどです。目標としては8割くらいに増やしたい」と斎藤氏は考えている。

 以上、ヤフーにおける4つの課題と解決策を見てきた。初めての施策では事前に効果を予測しにくいため、社内の説得は容易ではない。そこで、様々な工夫を重ねながら一歩ずつ前進を続けてきた。例えば、「一定の効果がなければやめる」という前提でスタートした施策もあるという。

 他企業が採用改革に取り組む際にも、ある程度の試行錯誤は避けられない。しかし、ほとんどの企業にとって、現状維持という選択肢は考えにくい。まずは一歩を踏み出すことが重要だろう。

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