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この会社は伸びると思わせる企業の共通点

やってはいけない! 投資家を不安にさせるNG行動とは

――時々、経営理念が突然変わったり、社名を変更したりする企業もありますが、投資目線で見たときにはそれらはマイナスポイントになりますか?

渡邉経営理念やビジョンをコロコロ変えるのはNGですよね。めったなことでは変えないほうがいいと思います。ただ、社名変更については、「前向きな変化かな?」と我々は捉えることが多いです。頑張って新しいことにトライしようと考えているからこそ変更するわけですから。

――ほかに、「この企業は危ないのでは」と思わせる危険なサインはありますか?

渡邉経営者がIRに消極的になったときです。IRの場に出ている限りは、自分の言葉で理念を語れるのでいいのですが、投資家の前に出ずに、周囲の人に任せてしまうケースは危険信号ですね。海外出張など、どうしても外せない理由以外で、社長が「ステークホルダーと会いたくない」という行動を見せるのは、よくない傾向だと思われやすいでしょうね。

見極めるポイントは「この経営者には寝食を忘れて伝えたい、
熱い思いがあるか」

――さまざまな企業にヒアリングをされていると思うのですが、どういう形で行うことが多いんでしょうか。

渡邉ひふみ投信運用部はメンバー6名で、年間のべ2000~2500回の調査・取材をしています。東京にある我々のオフィスでお話を聞くことも多いのですが、地方の会社の場合は先方の会社に伺って、お話を聞くことをより大切にしています。会議室でいきなり知らない人に胸襟を開いて話をするのは難しいですから。リラックスしていただくためには、先方のホームグラウンドに伺ったほうがいい。IR慣れしている経営者ばかりではなく、「機関投資家やアナリストなどにはこれまで会ったことがない」という方も結構いらっしゃるので。

――具体的にはどういうヒアリングをされるんでしょうか?

渡邉主に聞くのは「創業の想い」や「今後何をやりたい」と思っているのかですね。注意しているポイントは、「その会社の提供するサービスが世の中にどれだけ大切にされているか、必要とされているか」ですね。「なんでこの会社を作ったんですか?」「あなたは何がしたいんですか?」を丁寧に聞き出すようにしています。

――いかに公益性の高いビジョンを持っているかが、重要なんですね。

渡邉そうです。まず、上場したことで満足してしまうような経営者ではだめですね。むしろ、上場したことを起爆剤にして、もっと会社を大きくしていこうという気概が必要です。理念が実現されないうちは、何があっても心が折れない。そんな経営者がいる会社は、成長します。「個人的にお金持ちになりたいから」という動機も否定しませんが、あまり長続きしないことが多いように見えます。

すごく簡単に言うと、「世の中にこれを提供するためには、寝食を忘れて仕事をしたい」というタイプどうかを確認します。そういう方は、自分一人ではできない大きな社会的変化を起こすために、自分と同じボートに乗ってくれるクルーを探しているし、それを伝えるための努力もしている。それを見極めることが重要だと思っています。

伸びる企業ほど、古参の社員を大切にしている

――成長する企業の経営陣には、どういうメンバーが多いんでしょうか?

渡邉重要なサインは「プロパー社員、もしくは社歴の長い人たちが、経営陣として社長の脇を固めている」ということです。近年、上場しているIT企業には、社長の周囲を雇われCFOや上場請負人みたいな方が固めていることも多いんですが、こういう方たちは上場させてしまうと、次の上場予備群の企業へ移ることも多いので、長続きしませんよね。

――上場までは漕ぎ着けられても、その後の経営が不安定になりがちですね。

渡邉そうです。たとえば、CFOは企業において事業計画を考え、資金調達をする重要な役割を担っています。長期的に事業計画を考える上で不可欠な存在なのに、コロコロと人材が変わってしまうと当然、経営は安定しませんよね。CFO的な人や営業統括的な人など、重要役職の人ほど、社長とずっと一緒に長く働いて、ビジョンを共有していることが大事ですから。

――スタッフを外部の人に頼ると、上場だけがゴールになってしまう可能性が高い……と。

渡邉例えば、 CFOにしても、「上手に資金調達を」や「上場しよう」などだけがゴールになると、取引所や主幹事証券会社に顔を向いた仕事の仕方になってしまいます。一時的な課題をクリアしようとするのではなく、本質的にその企業の求めるビジョンやミッションを達成すること。きちんと社長とビジョンを共有できている人が、重要な役職についている企業のほうが強いと思います。

ビジョンに共鳴する「譜代の家臣」は10年かけてでも育てる

――上場後も、その後をいかに支えてくれる社員がいるかが重要なんですね。

渡邉譜代の家臣を大事にする会社は、うまくいっている気がします。確かにさまざまなスキルや経歴を持っている外部の優秀な人材は魅力的ですが、経営者が掲げているミッションやビジョンに対する共鳴性は低いかもしれない。もちろん、優秀な方がビジョンに共鳴してくれることが一番なんですが、資金調達や上場といった目的があって人材採用する際に、そこまで精査すると雇えなくなっちゃいますよね。

仮にスキルがない譜代の家臣だったとしても、「スキルがないから」という理由で切り捨てるのは、とてももったいない。財務や営業のスキルは、学んでいけば必ず身につくものです。即戦力だけを求めるのではなく、大事に育てるために、諦めずに何度もチャンスを与え続けて育てる会社のほうが、後々、経営で困ることは少ないように見えます。

――なお、社員を育てるには、どのくらいの時間を見ておいたほうがいいんでしょうか?

渡邉最低3年。長ければ、10年はかかると思います。ただ日本電産の永守重信社長のように、かつてはご自身で買収した企業の内部にしっかりと乗り込んでいって、自分のDNAをしっかりと浸透させるのも手ですよね。経営者直々にいろいろと教え込むことで、組織自体のカラーがしっかりとつくので。

――3~10年は、なかなか長い期間ですね。

渡邉そう思うかもしれませんが、ビジョンが浸透していくことで、社員たちが受け身ではなく、自発的に行動していくのが目に見えてわかります。自発的に行動する社員が増えれば増えるほど、社内の仕事のスピード感が全然変わっていく。なので、次第にその会社は加速度的に成長していきます。とにかく大事なのは、諦めないで育て続けること。ずっとチャンスを与え続けることが肝心だと思います。