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負け癖がついている社員たちを蘇らせる方法

コーチ育成のプロ・中竹竜二さんと一緒に、ビジネスの世界で今求められている新しいリーダー論を探る連載。経営不振に陥ってたメガネスーパーに、投資ファンドが社長に選んだのが星﨑尚彦さんでした。現場に入り社員の意識改革に着手、わずか3年で黒字化を達成。その後も順調に業績を伸ばし続けている。星﨑さんのマネジメント手法は一見強烈なリーダーシップ型。だが、実態はどうだったのでしょう。メガネスーパー再生物語のポイントをお伺いします。

中竹竜二さん(以下中竹):スポーツの世界では、「日本人は“負け癖”がついていることに自覚がない」と言われることがあります。選手たちはまじめに練習に取り組んでいるし、選手たちにはテクニックもある。それでも肝心の試合の時には勝てない。しかも一度負けると、その後も負け続けることが珍しくないんです。自信を喪失してしまうのか、意識してないのか。「どうせ今度も負けるんだろう」と思ってしまうんですね。こうした負のスパイラルに歯止めをかけ、チームで勝つためには1人ひとりの意識改革が必要であり、リーダーやトップの役目がとても大事です。

星﨑さんは2013年、経営不振だったメガネスーパーの社長の再建を任されました。その後みずから現場に入り、まさに“負け癖”がついていた社員たちとどうやって一緒に組織風土を変えていったのでしょう。そのお話からお伺えないでしょうか、

星﨑尚彦さん(以下、星﨑):メガネスーパーはかつて日本で業界2位にまでなった大手チェーンです。2000年代後半から、「メガネの低価格化」を売り物にした新興チェーンとの競争に巻き込まれ、2011年からは3年で2回の債務超過に陥ってました。倒産危機の状況に対し、2011年に投資ファンドが入り、翌年、私が社長として派遣されたのです。

第一印象は「自覚がない会社」「危機感がない会社」

星﨑:この会社の第一印象は「自覚がいない会社」「危機感がない会社」でした。中竹さんが言うように社員たちはある意味“負け癖”がついていたのかもしれません。会社の売上高は年間150億円で赤字は26億円。前年同月の既存店売り上げ比率は9割程度のまま。毎月赤字を続けていたのです。数カ月で会社がなくなるかもしれない。それなのに社員たちは「給料が上がらない」「7年間ボーナスがでない」と嘆いている。かといって何もするわけではない。業績が低迷することも、給料が下がってもそのまま受け入れ続けていた。まさに負け続けることが当たり前になっていたんです。

中竹:なぜ“当たり前”になったのでしょう。

星﨑:創業一族がとても強く、社員たちも社長らに意見することができなかったのでしょう。もちろん、経営者たちが的確な判断ができているうちは良かったのですが、社長の周りにいるのはイエスマンばかりで意見を言う社員は飛ばされてました。何をしても評価されない。ボーナスは出ないけど給料は出る、となれば、何もしません。経営者には正確な情報も入らず、社員たちは自分で考えなくなります。

投資ファンドが入り、赤字を垂れ流していた部分を軽くし、会社やお店のロゴを変えた。店の雰囲気も変えるなど、いったんインフラを整えました。だから「潰れることまではないだろう」と安心していたのでしょうが、単に沈みそうな船の重荷を降ろしただけです。浮上する要因は1つもない。僕の目にはこの会社は沈む船でした。僕は言いました。

「皆に好かれるために社長に来たわけはないので正直に言うよ。この会社は死ぬよ」と。