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オリンパスが行った風土改革とは

業務の生産性向上を追求すると、本来は大切にすべき仕事のやりがいや職場の価値を見失いがちになる。これはどの企業でも共通の悩みだろう。なぜここで働くのか、どんな夢があるのか。自分自身にそんな問いかけをする機会はなかなか持てない。だからこそ、企業は意識してそうした機会をつくり出すべきだろう。トップの不祥事で苦しんだオリンパスでは、人事部が現場と一体となって組織風土改善に取り組み、成長路線への原動力を生み出していた。

活力低下の原因は事件ではなく組織風土にある

 オリンパスは来年100周年を迎える。売上高7500億円、従業員数3万5000人。医療、科学、映像の分野で確固たるポジションにある大企業だ。しかし2011年、同社を激震が襲う。トップ自らが粉飾決算を主導するという不祥事が明るみに出たのである。株価は急落し、第三者委員会が設置され、当時のトップは辞任し、刑事事件にまで発展した。

 この不祥事は、誇りを持って仕事に取り組んできた同社の従業員たちの心も大きく傷つけた。企業の業績を支えるのは言うまでもなく従業員たちだ。しかし、不祥事があれば現場で矢面に立たされる。同社が立ち上がるには、従業員が誇りを取り戻し、再び上を向いて仕事に取り組むことが不可欠だった。

 2012年に新体制で再スタートした同社は、現在、経営方針として大きく2つのことを掲げている。専門性の高い顧客のニーズに高い次元で応える「To be the greatest "Business to Specialist" Company」と、グローバルで全社のパフォーマンスを最大化させる「One Olympus」だ。

 「One Olympus」という経営方針には、従業員たちが一丸となって信頼回復に努めたという意味合いもあるだろう。同じ志を持ち、価値観を共有することこそが活力を生み、会社の再生にもつながる。「1人ではない」という絆を持つことは人を強くするからだ。

 しかし、事件直後の同社はむしろ正反対の状況だった。事件の影響は大きく、従業員の気持ちはどこか消沈していた。同社は企業風土改革につなげるため、現状を把握するための組織診断を新経営体制発足直後の2012年に実施し、事件前の2008年に行ったものと比較した。

 同社の人事本部の森賢哉氏は「やはり経営への信頼感や従業員の活力が低下していました。ただ、分析してみると前回の2008年で悪かったところがさらに悪くなっていたのです。これは組織風土の問題だという仮説を立てました」と語る。負のスパイラルを打ち切るために同社では課題を整理し、取り組みテーマを決め、風土改革に向けた施策を打ち出していった。

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