電子部品が次世代モビリティー産業を牽引

電子部品が次世代モビリティー産業を牽引する
エンジン系からセンサ、通信系まで幅広く電子部品を提供する村田製作所では、部品メーカーとして自動車の進歩に貢献すべく、次世代の部品の研究開発を進めている。自律運転向けのセンサ、クルマ同士や信号機などとの無線通信に向けた新技術、EV(電気自動車)向けの安全な全固体電池、交通量の自動計測に基づく最短時間ルートのリアルタイム算出、家庭でのEVの急速充電などだ。講演では同社の様々な取り組みが紹介された。

今求められている
電子部品の高性能化

 総合電子部品メーカーとして最先端の材料を研究開発し、広範囲な製品群をそろえ、全世界的な生産・販売網を持つ村田製作所。同社の売り上げの約半分はスマートフォンなどのモバイル機器向けだが、その他の領域について同社代表取締役の中島規巨氏は「AV機器やヘルスケア、エネルギーなどの分野もありますが、特に力を入れているのがモビリティー市場です」と語る。

 同社のモビリティー向けの製品は大きく3つに分かれる。1つ目はパワートレイン、エンジン系だ。従来型のクルマから電気自動車へという進歩に伴い、電子部品のニーズも高まっている。特に、125度の高温環境でも使用可能なコンデンサやコイルなどの需要が増えつつある。

 2つ目は車載センサ。安全運転支援機能の広がりに伴い、ブレーキのコンボセンサ、横滑り防止向けの加速度センサ、カーナビ位置検出のジャイロセンサ、近くにある障害物を検知する超音波センサ、インバータのための温度センサなど、センサの適用領域は急速に拡大している。

 3つ目は車載用の通信モジュールだ。これまでのようなスマートフォンとカーナビをつないだインフォテイメントなどのようなIn-Carといわれる自動車の内側の領域に加え、他の自動車や交通インフラと協調して安全を確保したり、利便性を向上させるOut-Carの領域へとニーズが広がっている。

 今後もクルマ同士で位置やスピードの情報をやりとりして衝突を回避する「V2V」、信号機などと情報をやりとりし、見通しの悪い場所でも安全に走行できるようにする「V2I」、歩行者と情報をやりとりして運転手に注意を喚起する「V2P」など、「V2X」と総称される領域の発展に伴い、V2X用の通信方式である「IEEE802.11p」や5Gモバイル通信が発展していくとみられている。

車載用コネクティビティモジュール InfotainmentからADAS、 Safetyへ
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GPSの電波が途切れても
自律運転を可能にする技術

 講演では、同社が実際に取り組んでいる事例についてもいくつか紹介された。1つ目は自律制御技術だ。「交通事故による死者ゼロの社会に向けて、In-Carの領域では運転手のバイタルサインの測定による健康状態の把握、Out-Carの領域では超音波ソナーやカメラ、レーダーを用いた障害物検知などがあります。部品メーカーにはこれらの領域で使用されるセンサや慣性計測装置を提供することが期待されています」(中島氏)

 動向が注目されている自律運転では、自動駐車のようなレベルのものから、特定の道路で自動運転が可能なレベルへとニーズが高まるにつれ、センサもより高度なものが必要になる。同社は、3軸のジャイロセンサと3方向の加速度センサを組み合わせた「6DOF」を用いた慣性航法の実証実験をフィンランドの開発拠点で行うなど、意欲的に取り組んでいる。

 「高速道路を時速約80kmで走行し、GPSの電波が届かないエリアを想定してGPSの20秒ONと10秒OFFを繰り返した場合の検知精度を確認しました。現状では±30cmの位置ずれが発生していますが、それを10分の1にすることに取り組んでいます」(中島氏)

 また、駐車時に後方の障害物までの距離を測定する超音波ソナーにおいても、駐車支援から自動駐車への進展を受け、より高精度が求められてきているという。

 事例の2つ目は無線通信技術。5Gなど次世代の通信方式では、周波数が数十GHzに及ぶ電波を用いる。高周波の電波は障害物に弱いため、電波を特定方向へ集中的に発射させるビームフォーミング技術で対応している。また、信号を回路からアンテナへ送る途中で信号は弱まりやすい。そこでアンテナと回路部品の距離を極限まで縮める必要がある。これに対して同社では、パッケージング技術を活用して通信モジュールの上面にアンテナを形成し、その下にトランシーバーや高周波の部品を配して極薄の基板でつなぐことにより信号伝送時の損失を低減するといったアプローチをとっているという。

安全な全固体電池や
交通量の自動計測にも注力

 3つ目の事例はエンジン系の電動化技術だ。村田製作所は、リチウムイオン電池を初めて世に出したソニーからその事業を譲受した。クルマに搭載する電池は安全性が重要だが、その究極にあるものが、液漏れや発火のおそれのある有機電解液を使用しない全固体電池だ。「現在はより安全な酸化物系の活物質を用いた全固体電池の開発に取り組んでおり、2019年に民生市場向けから商品化していきたいと考えています」と中島氏。ソニーの電池部門が持っていた化学技術と、同社が培ってきたコンデンサの開発生産技術を併せて、熱くならず燃えない電池を、小さな電池から徐々により大きな電池へ展開していこうと考えているという。

 4つ目の事例として挙げたのは、クルマと外部をつなぐ高度道路交通システム、ITS。その一つが、同社が東南アジアで進めているトラフィックカウンターだ。街灯やデジタルサイネージにセンサを設置し、道路を走る自動車の台数や種類、速度などをリアルタイムに検知する。取得した情報はゲートウェイを介してクラウドなどに蓄積し、道路管理者や情報サービス業者などに販売する予定である。

 「例えば地図情報配信会社がこのデータを利用すれば、目的地に最短時間で行くためのルートをリアルタイムに算出できるようになります。東南アジアではGPS情報だけでは信用できない部分もあり、リアルタイム情報のニーズが高まっています。さらに、気圧センサなど様々なセンサをこのインフラに配することで、天候の変化なども地図情報と紐付けて更新できるようになります」(中島氏)

 また、同社ではEVを家庭で充電するためのインフラとして、昼間に充電する際は太陽光発電と定置用蓄電池の両方を用いて急速に充電し、夜間に充電する際は電力会社の夜間割引による安価な電力を利用するシステムを推進。クラウドと連携してEVの電池の残量に応じて定置用蓄電池の残量をコントロールするシステムにも取り組んでいる。

 最後に中島氏は「自動車市場が100年に一度の変化を迎えていることを体感しています」と話し、電子部品メーカーとして、基盤を支えるコンデンサやコイルなどの受動部品や、慣性・磁気・超音波などのセンサ、通信モジュール、電池・パワーシステム、そしてそれらをつなぐソリューションを提供することで、この変革に貢献していきたいという意欲を強調した。

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