重要な経営課題に位置づけられるようになった働き方改革。これに積極的に取り組み、目に見える成果を出していくことは、これから日本企業にとって必須条件になるといってもよい。しかし具体的にどのようなアプローチを行えばよいのか、それによっていかなる効果が期待できるのか、わからないという経営者も少なくないはずだ。
このような問題を解決するために有効な方法の1つが、先行事例を参考にすることである。そこで取り上げたいのが、富士通における社内実践だ。同社は2015年4月からテレワークのトライアルを開始。その成果を受け、2017年4月から全社展開を実施しているのである。
「この取り組みを始めることになった背景には、大きく3つの変化があります」と語るのは、富士通 人事本部 人事部でシニアディレクターを務める佐竹秀彦氏。第1はビジネス環境の変化だという。「グローバル化の進展によって、日本企業も海外企業と直接競争せざるを得ない状況になっており、生産性の向上が求められています。またこれからはデジタルビジネスといった新たな領域に参入するため、新たな知識やスキルを身につけるための自己投資の時間を確保する必要がありますが、今までどおりの働き方ではそのための時間をとることも困難です」。
第2は従業員の意識の変化。育児や介護と仕事を両立させていくことは、他人事ではなく自分自身の課題であるという認識が、多くの従業員に間に広がっているのだという。
そして第3がICTの進化である。これによって働き方改革の推進が、より現実的になったのだ。
「今回の取り組みでは、大きく2つの働き方の実現を目指しました」と佐竹氏は語る。その働き方改革の効果は、以下のとおりだ。
●Web会議や動画、社内SNSを活用。Web会議利用者は全従業員の96%に上り、これによって出張費用を20%削減。
●従業員満足度調査では、実施者の85%が「時間を有効活用できた」と回答。50%が「ワークライフバランスが向上した」と回答
それでは詳細を見ていこう。