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第5回・社員に優しく厳しい経営

日本レーザーの近藤宣之会長に聞く

日経BP総研 中堅・中小企業ラボ

2018年6月22日(金)

東京・武蔵境自動車教習所の髙橋明希社長が、経営者としての腕をさらに磨くため、キーパーソンから「人材採用・育成」「働きがい」などについて学んでいくシリーズ。第5回目は日本レーザー(東京・新宿)の近藤宣之会長がゲスト。無借金経営、24年連続黒字を達成する同社の社員のモチベーションを向上させる仕組みとは。

髙橋:日本レーザーは社員全員が自社の株主という珍しい会社ですよね。

近藤宣之会長(以下、近藤):そうです。まず経緯を説明しましょう。日本レーザーはレーザー機器を扱う専門商社です。バブル崩壊という経営環境の変化に対応できず、1993年に債務超過に陥り、倒産寸前の状態でした。そのとき再建を命じられたのが、親会社である日本電子で新米役員をしていた私でした。

 94年に社長に就任し、翌95年には日本電子の取締役を退任し、日本レーザー社長に専念しました。1年目で黒字化を実現、2年目には累損一掃に成功。そして2007年にMEBO(Management and Employee Buyout、経営陣と社員による自社株買収)という手法で親会社から独立を果たしたというわけです。

髙橋:社員のみなさんが自律的に働くのは、株主であることが大きいのでしょうか。

近藤:よく「社員みんなが株主だから当事者意識があってモチベーションが高いのでしょう」と言われますが、そうではありません。それ以前から理念や方針を共有し、土台をつくってきたからです。

クレドは「働き方の契約書」

髙橋:それをまとめたのがクレドですね。

近藤:はい。ホームページにも掲載していますが、当社の場合、クレドは「働き方の契約書」という性格付けです。クレドの通りに働いてくれればいい。クレドは独立した07年に私が作成したもので、今第3版。現在のものは18年1月から運用しています。

 これをベースにした「総合評価表」を用いて、人事評価をしています。全30項目で200点満点。概ね50点から180点くらいの間に分布します。

 社員自身と上司が採点した後、最終的に役員会で決定します。その後、評価をフィードバックする面接を必ず実施しています。「なぜこうした評価になったのか」「どうしたら次回、点数が上がるか」を上司と部下が1対1で30分程度徹底的に話し合うので、努力すれば着実に点数は伸びていきます。

 企業の多くは、相対評価を採用しています。例えば50点だった人間が100点になっても全体から見るとまだ下位だった場合は、結局評価は上がりません。ボーナスも昇給も金額に一定の枠があり、その中に収めるために社員を順位付けしているからです。ただ、それでは社員のモチベーションは上がりませんよね。だからうちは絶対評価です。

「仮に社員全員が最高評価を取ったら、給料の額がずいぶんと上がってしまう。それでいいのか」と言われますが、それでいい。全員が最高評価だったら、会社は大もうけしているはずですからね。

近藤宣之氏
近藤宣之(こんどう・のぶゆき)氏
1944年東京都生まれ。慶應義塾大学工学部卒業後、日本電子入社。28歳のとき労働組合執行委員長に推され11年務める。取締役米国法人支配人、取締役国内営業担当などを歴任。1994年、子会社の日本レーザー社長に就任。以来、24年連続で黒字を達成している
写真:鈴木愛子

日本レーザー

レーザー機器を扱う専門商社。1968年に設立。71 年に日本電子の子会社に。2007年、MEBOにより親会社から独立。売上高は39億円(17年12月期)、従業員51人(18年1月現在)

髙橋:確かにそうですね。

近藤:クレドをつくり、それに基づいた評価制度を構築する。評価後は毎回、評価内容を説明するフィードバック面接をすることを義務付け。透明性と納得性が担保された人事制度で、能力と努力と成果に応じた処遇体系にしました。頑張った分だけきちんと報われる仕組みです。

髙橋:こうした仕組みなら、社員から不満が出ることはきっとありませんね。

近藤:当社のクレドは「経営としての約束」と「社員としての約束」で構成されています。経営としての約束の最初の項目は「幸福な人生に大切なこと」です。

日本レーザーが自社のウェブページで公開しているクレド
日本レーザーが自社のウェブページで公開しているクレド
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