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第5回・社員に優しく厳しい経営

日本レーザーの近藤宣之会長に聞く

「会社の成長は人の成長からつくり出される」

髙橋:会社がする約束として、そんな項目を設けている企業はまずないのでは。

近藤:そうかもしれませんね。クレドには幸福な人生に大切なこととして以下の4つ、「誰かに必要とされること」「誰かを助けること」「誰かに感謝されること」「誰かから愛されること」を挙げています。

 このうち最初の3つは、主に働くことで得られる喜びです。だとしたら会社は働くことで得られる喜びを雇用者に提供するために存在すべきで、それには人を雇用することです。

 だから私から社員を辞めさせることはしません。社員が育児や介護、病気などで満足に働けなくても、短時間労働や在宅勤務に切り替えて雇用を守ります。本人が望めば70歳までの再雇用を定めていて、いずれは80歳まで延長したい。生涯雇用こそ最大のセーフティーネットだからです。

 雇用を守るためには、会社を黒字にし続け、事業を存続させなければなりません。そのためには社員が成長し続けることが大前提です。会社の成長は人の成長によってつくり出されるからです。

 成長には本人の努力が欠かせません。ただ、クレドに「私たちは社員の幸福度を向上させるためにあらゆる努力をします」と掲げている以上、経営者がイニシアチブを取って、仕事を通じて成長する機会を与えなければならないと思っています。例えば、難しい仕事を与えるとか新しいチャレンジをさせるといったことです。

髙橋:07年に「TOEIC500点以上でなければ正社員としない」という就業規則を定められていますが、これもその一環ですか。

髙橋明希
髙橋明希(たかはし・あき)
1976年東京都生まれ。獨協大学卒業後、竹の塚モータースクールを経て、2001年武蔵境自動車教習所に入社。09年に社長就任。早稲田大学大学院修了。米スタンフォード大学留学を経て、17年、米シリコンバレーに日本と米国の事業の橋渡しを手掛けるコンサルティング会社、ブリリアントホープを設立
写真:鈴木愛子

近藤:そうです。社員はみんな「これは大変だ」と勉強しました。TOEICは英語ではなく、集中力と持続力のテストだと思っています。本人がやる気にさえなれば500点くらいなら取れる。

 当時、500点に達しない社員が12人いました。入社後にできた就業規則ですから、それを理由に彼らを辞めさせることはしません。ただ、500点を取らない限り、昇給も昇格もないことにしました。

 その後どうなったかというと、12人のうち8人は500点をクリアしました。TOEIC 500点以上という基準を設けて11年目になりますが、いまだ条件を満たしていない社員が4人います。原則として昇給も昇格もないのですが、好きなことをやって言いたいことを言えるので退職しませんね(笑)。