2018年9月28日(金)
東京・武蔵境自動車教習所の髙橋明希社長が、経営者としての腕をさらに磨くため、キーパーソンから「人材採用・育成」「働きがい」などについて学んでいくシリーズ。第8回目は、米カリフォルニア発祥の世界的デザインコンサルティング会社、IDEO(アイディオ)の共同経営者、トム・ケリー氏を迎え、「デザイン思考」について聞いた。
髙橋:まず「デザイン思考」とは何かを教えてください。
トム・ケリー氏(以下、ケリー):デザイン思考とは何か。私はデザイナーが長年使い続けてきたマインドセット(考え方)やツールセット(手法)のことと説明しています。当社では1978年の創業時からこのアプローチを活用してきました。最初の頃はこの手法を「IDEOプロダクト開発法」と呼び、実際に手に触れられる製品だけを対象にしていましたが、現在はより大きな課題にも適用するようになっています。
例えば、100年の歴史を持つ老舗企業をどのように変革するか、インドの田舎に暮らす人々がどうすれば安全な水を飲めるようにするか、どうしたら人間は老後に備えてもっとお金を貯め、もっと良いものを食べ、より運動をするようになるのか、といったことなどです。これらはすべて複雑な課題でしたが、同じアプローチを用いて新たなアイデアを創出してきました。
髙橋:デザイン思考でカギとなるものは何でしょうか。
ケリー:最も大切なものは3つあります。
1つ目は「共感」です。つまり、あなたの会社の技術に人間性を加えることだと説明しています。共感するということは、製品に(使う人の立場になった)人間味のある要素を入れることです。
2つ目は「実験」することです。実験すること自体は何も怖くありませんが、ときには失敗もします。失敗すると、時に傷つくこともあります。でも、それが恐ろしいからといって笑ってごまかしたり、失敗することを避けたりしてはいけません。失敗は、私たちに多くのことを教えてくれます。だから、小さな実験を繰り返し、失敗から学びながら、アイデアを昇華させていくことが大事なのです。
3つ目は「ストーリーを伝えること」です。これまで私たちは、根拠となるデータさえあれば、アイデアや製品自体がその素晴らしさを雄弁に語ってくれると考えていました。しかし今では全く反対の考え方をしています。データはもろく、すぐ忘れられやすいものです。その点、優れたストーリーがあれば、それは私たちのメッセージをしっかりと相手の心に刻むことができます。
伝えたいアイデアがあるとき、それをただそのまま伝えてもうまくいきません。そのアイデアの本質的な価値が、分かりやすく相手に伝わるストーリーを考えるべきなのです。