日経ビジネスONLINE Special週刊日経ビジネスオンライン SPECIAL日経ビジネスオンライン

第11回・AI時代の会社に必要な“妄想力”

ABEJAの岡田陽介社長に聞く

AIを闇雲に導入しても意味がない

髙橋:確かにどの意見も全部仮説に過ぎませんね。

岡田:そうなのです。ぼんやりした仮説を数値に基づくファクトで裏付けることで、どういう店づくりをするか、どういう商品を適切に提供するか、どういうターゲットに対してマーケティングするかをすべて可視化できる。これにより売り上げがどんどん増えていく。ICI石井スポーツさんはこの好循環を回せています。

髙橋明希(たかはし・あき)
1976年東京都生まれ。獨協大学卒業後、竹の塚モータースクールを経て、2001年武蔵境自動車教習所に入社。09年に社長就任。早稲田大学大学院修了。米スタンフォード大学留学を経て、17年米シリコンバレーに日本と米国の事業の橋渡しを手掛けるコンサルティング会社、ブリリアントホープを設立
写真:菊池一郎

髙橋:どんな業種、企業でもAIの導入で変化が生まれますか。

岡田:ただ闇雲に導入すればいいというものではありません。私は「AIが賢くなれば賢くなるほど、勝手にどんどん利益が上がっていく仕組みをつくっていくべきですよ」とよくお話ししています。

 ダイキン工業さんで、故障修理対応業務の効率化を行った例が分かりやすいと思います。従来は「空調機が壊れた」という修理依頼があった場合、空調機を構成する部品点数40万個の中から修理に必要なものを探り当てなければいけませんでした。

 これは至難の技です。なぜなら、電話を受けるオペレーターが顧客から空調機の機種や故障の症状などを聞いて、必要な修理部品や対応を修理スタッフに伝えなければいけないわけです。熟練者だと長年の勘と経験で「この地域でこうした症状だから、修理にはこの部品が必要だろう」ということを当てられるそうですが、2~3年目の新人担当者だとほぼ当たらない。

 するとどうなるか。1回の訪問で修理が完了できないので、複数回の出動が発生します。1回で終わっても、3回で終わっても、修理代は変わりません。一方で、顧客はすぐに使えるようにしてほしいわけで、時間がかかるほど不満が溜まっていきます。つまり、ヒアリングによって適切な部品を割り出し、修理にかかる訪問回数を減らすことが、収益改善に大きく貢献するキードライバーとなっていたわけです。

 そこでAIを活用して空調機の修理に関する過去の膨大なデータを、ディープラーニング技術で学習して、新人担当者でも的確な部品を選べるようになれば、1回で修理が完了する確率が上がります。出動回数の平均が数回から仮に1回になると、この分のコストがすべて浮きます。

 そして、AIの予測精度が上がれば上がるほど、修理に行く回数が減り、利益が増える。相乗効果で、強いモデルが出来上がると思います。

 しかし、何が収益改善のキードライバーになるのかが分からないと、意味のないAI化になってしまいます。商談の際に「どうしてそれをAI化しようとするのですか」と聞くと、「AIでできると聞いたから」という。それではAI化は成功しても、利益率は1%も上がらない。「AIプロセスでやることが果たして最適かどうかを、もう一度考え直したほうがいい」と指摘すると、ハッとされる人が少なくありません。