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第11回・AI時代の会社に必要な“妄想力”

ABEJAの岡田陽介社長に聞く

リベラルアーツの重要性が増す

髙橋:コンピューターやインターネットの普及で、逆に忙しくなりましたよね。

岡田:例えば、スマートフォンのおかげでどこにいても仕事ができるので、働き方が変わりましたよね。仕事のあり方と働き方が変わるだけで、仕事自体はなくなりません。

 とはいえ、AIで定型業務は回ってしまうので、ここからは妄想力が求められます。その意味では非常に面白い世界に突入していくと思っています。

髙橋:どうしたら妄想力は鍛えられますか。

岡田:リベラルアーツを学ぶことでしょう。私は哲学書など、仕事とは直結しない本を読むのが好きです。映画や音楽も好きだし、美術館にもよく行きます。本物だけを見続けることが大事だと思っています。

 この会議室に飾っているのは、米ニューヨーク在住のアーティスト、松山智一さんの絵です。重要なのは、常にいいものに触れていたほうが新しい発想が生まれやすい、ということです。

取材を終え、松山智一氏の作品の前に立つ岡田社長(左)と髙橋社長
写真:菊池一郎

(構成:荻島央江、編集:日経BP総研 中堅・中小企業ラボ)

インタビューを終えて

企業各社がAIを導入し、日常的に経営のために活用するようになる日は想像以上に近いのではないか? しかし、その前に、企業が将来の「ありたい姿」を描かなければ、岡田社長が指摘するように、1円の利益を上げるために100円の投資をしてしまうことになる。

早いもので、私が経営者の立場になり2019年で10年になる。この10年の間に経営環境は大きく変化したが、将来のありたい姿を描き、それを実現するために舵を取り、知恵を働かせ、行動するという点では変わらない。ただ、以前にも増して経営者のありたい姿を描く力が重要になっているのだと思う。

ありたい姿が明確になれば業種や企業規模にかかわらず、個性を発揮でき、差別化が図れるのではないだろうか。

「AIが私たちの仕事を奪う」という危機感をあおる情報が氾濫しているが、私はこのインタビューの中でそうとは感じなかった。AIに任せられることは任せ、その分、人間は「ありたい姿」を実現するための創造的な活動に注力すれば、より個性を発揮できる世の中になるだろう。今から楽しみだ。(髙橋明希)