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最終回・やる気を引き出し、サービスと生産性を両立

ビジネスで宿泊した人の家族にも人気

髙橋:どういうお客様の宿泊が多いのですか。

黒田:やはりビジネスでの利用が多いですね。会員の比率は男性が7割、女性が3割です。ビジネスのお客様が主なターゲットですが、最近はご家族が観光でご利用になることが増えています。今は土曜日が一番の高稼働なんです。

髙橋:仕事で利用したお客様が、家族を連れて来られているのかもしれませんね。生産性を向上させると、ともするとサービスが低下します。その反対もしかりです。東横インではどのように両立させていますか。

黒田:スタッフの人数を増やせば増やすだけ、お客様には手厚いサービスが提供できるかもしれませんが、それは、宿泊料金を上げないと難しいでしょう。

 当社ではお客様が求める最低のニーズをかなえようという気持ちでやっています。すべてのニーズをかなえて差し上げることは難しいです。だからアンケート結果でも、「大満足」という人を増やすよりも、「不満足」な人をいかに減らすかに力を注いでいます。

(構成:荻島央江、編集:日経BP総研 中堅・中小企業ラボ)

本社内にある東横インのロゴマーク前に立つ、黒田社長(左)と髙橋社長
写真:菊池一郎

インタビューを終えて

人材の採用、そして社員のモチベーションの維持は年々深刻さを増している。もちろん今回の東横インも同じ環境にあるが、地域性を理解した支配人に徹底的に任せ、柔軟な対応をしているために、そこまでの深刻さは感じられない。

私の会社と比べると、この会社は厳しい! お客様の最低ニーズを満たしていない場合は、徹底的に話し合い、二度と同じミスをしないように行動に落とし込んでいる。こうした厳しさがあるから毎年20~30店という積極的な出店ができるのだろう。

そして、厳しいからこそ東横インのこだわりが現場のスタッフまで浸透している。たとえ1泊でも普段とは異なる環境に宿泊するのはストレスだが、東横インでは全店で同じ間取り、同じサービスを提供し、宿泊客に安心感を与えている。ここまで徹底してできているのはすごいと思う。

これまで1年間、さまざまな環境、業種、バックグラウンドのトップの方々12人に話を聞いた。みなさんの考えには共通している部分が多々ある。

(1)外部環境に流されず、自社のあるべき姿を表現している。
(2)自社はどのような未来をつくりたいのかにこだわりを持ち、進んでいる。
(3)自社独自の働き方を採用し、社員一人ひとりに個別対応をしている。一見、効率が悪く思えるが、いずれの会社も効率化につなげている。
(4)知的好奇心に溢れ、異業種と柔軟に関わり、自社の知的財産に変換している。

今、経営者は企業の規模は関係なく自社がつくりたい未来を大きく描き、小さなことから行動する時代である。シリコンバレーでは、「やったもの勝ち!」という共通の価値観がある。とにかくやってみる。そこにはやった人しか分からない世界がある。

以前、あるセミナーに参加した時、講師は「ルールは破るためにある! ルールを破った先に新しい世界が見える」と言っていた。確かにそうかもしれない。そのとき私は強いショックを覚えたが、この考え方がグローバルスタンダードになりつつあるのだから、やはり先駆けてやるのみである。(髙橋明希)