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第11回 徳川家康――本多正信

水谷 俊樹 作家・漫画原作者
日経BP総研 中堅・中小企業ラボ

2019年1月10日(木)

三河以来の譜代の家臣を重用したといわれる徳川家康だが、天下取りの過程で多くの優秀な人材を取り込んだ。

本多正信はその一人。ただ彼は一度家康に反旗を翻し、のちに再び家臣となったいわば“出戻り社員”だった。

家康は、正信の諸国遍歴の体験、そのなかで培った情報分析力と冷静な判断力を評価した。正信はあえて嫌われ役となるなど、家康の天下取りで重要な役割を果たす。

今回は家康と正信の主従関係から現代ビジネスにおける“出戻り社員”の受け入れについて考察する。

「さて、力押しでどの辺りまで進めようか」。家康の問いかけが冗談と分かり、饒舌になった家臣たちの中で、正信は黙って首を振り、家康も同様にうなずき返した。(イラスト=月岡エイタ)
「さて、力押しでどの辺りまで進めようか」。家康の問いかけが冗談と分かり、饒舌になった家臣たちの中で、正信は黙って首を振り、家康も同様にうなずき返した。(イラスト=月岡エイタ)
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“出戻り社員”の受け入れは、アリか、ナシか――

 かつて日本の企業の多くは、自らの意思で辞めた者に対して“裏切り者”というレッテルを貼った。

「二度と、わが社の敷居をまたぐな」

 新卒一括採用・年功序列・終身雇用といった日本独自の雇用システムが機能していた、バブル経済の華やかなりし頃の話だ。戦後日本を支えた彼らは、仲間意識が強く、連帯感が強かった。

 昨今は雇用の流動化の影響もあり、一度、辞めた社員――“出戻り社員”を再雇用する風潮が強まっている。企業が彼らを受け入れるメリットは「即戦力として計算できる」「採用・教育コストが少なくて済む」などがあり、デメリットには「既存社員の反発やモチベーションが低下する」「既存社員に“辞めてもまた採用してもらえる”というイメージがつく」などが挙げられる。

「何を今さら――」

 “出戻り社員”の受け入れが増加傾向にあるとはいえ、少なからず、既存社員の反発はありそうだ。

 徳川家康(1542~1616)が内政・外交の両面で頼りとした本多正信(1538~1616)には、家康を“裏切った”過去があった。にもかかわらず、彼は許されて帰参し、家康の側近として活躍している。

 いったい、どのようにして家康は正信を受け入れ、正信は“帰り新参”として立ち振る舞ったのか。