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第1回・「働き方改革は生き方改革」を全社で徹底化する

日経BP総研

2018年8月1日(水)

カゴメの働き方の改革は、多くの企業がそうであるように生産性を上げることを目的に掲げてスタートした。ただし、目的に向かうためのアプローチに他社との違いがあると寺田直行社長は語る。「大切なのは、改革を通して自分自身の人生を見つめ直すこと」というメッセージを一貫して従業員に発信し続けている寺田氏に、働き方改革の本質と、現場で起きている変化について聞いた。(取材=麓幸子:日経BP総研フェロー、文=谷口絵美)

総労働時間1,800時間、有休取得100%目指す

――社長に就任した2014年、すぐに働き方改革についてのメッセージを出したと伺いました。

寺田社長(以下:寺田):はい。まずは「20時までに退社」を呼びかけました。それを少しずつ進化させて、今年は年度方針として、2020年までに年間の総労働時間を1800時間(※)にすることを打ち出しました。また、有給休暇取得率も当初は50%程度でしたが、今年は70%を超える見込みで、段階的に100%までもっていくことを目指しています。そのために、平日5日間の連続休暇を取ることも2018年度のKPIに掲げています。

(※)休日と有給休暇20日を除く労働日数224日 × 労働時間 8時間/日

寺田 直行氏 1978年カゴメ入社。2004年営業推進部長。05年取締役執行役員。06年東京支社長。08年取締役常務執行役員。コンシューマー事業本部長。10年取締役専務執行役員。13年代表取締役専務執行役員。14年代表取締役社長
寺田 直行氏
1978年カゴメ入社。2004年営業推進部長。05年取締役執行役員。06年東京支社長。08年取締役常務執行役員。コンシューマー事業本部長。10年取締役専務執行役員。13年代表取締役専務執行役員。14年代表取締役社長

――なぜそのような目標を設定されたのでしょうか。

寺田:どの企業もそうだと思いますが、根本的には会社として生産性を上げるためです。ただ、アプローチの視点として、カゴメでは「働き方の改革をすることが、従業員一人ひとりにとってどういう意味を持つことなのか」をきちんと発信し、なおかつ自分で考えさせることに重きを置いています。

 1年間の総時間は24×365=8,760時間ですので、1,800時間というのはそのうち約2割にすぎません。一方で、総時間から仕事の1,800時間と睡眠時間、通勤時間を引いた「可処分時間」は、総時間のおよそ38%を占めます。つまり、仕事の時間の倍近くもある訳です

 今までは多くの人が40年間の会社員人生のほとんどを会社で過ごしていましたが、この可処分時間をどう過ごすかということも、人生において大切なことです。残業が減って、高効率の仕事をして高い成果を出せば収入もついてくるし、さらに自分で自由に使える時間も確保されます。効率を上げる仕事に変えることが、人生を豊かに過ごすベースになる。「働き方の改革」は「生き方改革」。そのことをまず従業員が腑に落ちてほしいと思っています。

――そうしたメッセージは、従業員にどうやって伝えているのでしょうか。

寺田:3カ月ごとに発行している社内報のほか、行事や研修などのあいさつでも、「働き方の改革は皆さん自身のためのものである」と毎回伝えています。従業員アンケートなどで見ると、だいぶ浸透しているようです。

――目標を達成するために、どんな取り組みを進めているのでしょうか。

寺田:1つは仕事の定量化です。目的と成果を見える化できれば、評価にばらつきがなくなります。まず役員と部長クラスですべてKPI化して、18年の目標シートから導入します。全従業員に対しては19年から始めていく予定です。

 もう1つは仕事の属人化の防止です。これは非常にハードルが高く、特に工場ではいろいろな難しさがあります。1人のオペレーターにある工程を全部任せていると、休むことができません。そこで、多能工化したり、代わりの人間を育成したりといった知恵を現場で出し合っているところです。

 大切なのは、上からの指示だからやるのではなく、従業員自身が自主性を持って仕事を見直していこうと思うこと。1,800時間以外の可処分時間を有効に使えれば、会社を含めた自分の人生が豊かなものになる。言ってみれば、カゴメで働いて幸せな人生が送れたかどうかが最終的なKPIです。