日経ビジネスONLINE Special週刊日経ビジネスオンライン SPECIAL日経ビジネスオンライン

第4回・大災害で得た学びから新たな価値が生まれた

物流センターではスタッフに食事を無償提供、定着率が向上

――物流センターの食堂で食事を無償提供されていると伺いました。

岩田:2015年から福岡のセンターで、16年から横浜のセンターで始めました。

 私は物流センターのスタッフももっと稼げるようにしたいですし、正社員化も1000人単位で進めています。そうした雇用の安定を考える中で、最初にやるのは何がいいかと考え、食事の無償化を決めました。周囲は「それより時給を上げたほうがいいのでは」と反対しましたが、私はきちんとした食事によって健全な精神が生まれると思っているんです。

 福岡では長年栄養士を養成してきた学校法人「中村学園」の教授に指導してもらい、一汁三菜の食事を提供しています。産業医の先生に、食事の無償化をする前と後でデータ分析をしていただいたところ、福岡は全センターの中で一番生産性が高くて定着率も高いことが分かっています。新しい大阪のセンターでも食事を無償提供する予定で、求人の応募倍率が高くなっているようです。

 当社は現場で働く多くの人たちと本社で戦略を練る人たちという、ある意味で二層構造になっています。現場で働く人たちをいかにハッピーにするかが大事であり、我々の責任だと思っています。

「ASKUL Logi PARK 福岡」の食堂では、一汁三菜の食事(右)が無償提供される。

――働き方改革において、社長のお考えの基本になっているのはどんなことでしょうか。

岩田:「三面鏡経営」です。2000年代、経営者は資本市場に対して一番いい姿を見せようとしていました。でも三面鏡は両側に社会と従業員という鏡もある。給与は上がらず株式の配当ばかりが上がり続け、労働分配率が下がるという株主偏重の姿勢はいびつな形です。お客様という存在を前提とした上で、社会や従業員もちゃんと見ていく。そういう提言を2012年に出しました。最初はそれほど共感を得られませんでしたが、ようやく世の中が変わってきました。

  一方で、会社が成長するためにはテクノロジーを最大限に活用して、新しい価値をお客様に創造していかなくてはいけません。今年は「イノベーションからトランスフォーメーション」ということを掲げています。「センターにロボットを入れました」「AIで配送ルートを決めました」というイノベーションの段階から、それを社会の価値にどう変換するか。

 例えばドライバーは従来、自分でルートを決めて荷物を積み込むという職人の仕事でした。そのため新しい人はなかなか効率が上がらず、きつい仕事というようになってしまっていた。それがコンピューターで効率的なルートを選んで荷物の積み込みも自動化すると、生産性が上がって稼げる仕事になり、ドライバーが職人からサービス業に変わっていけます。

 テクノロジーと働き方改革が一緒になることによって、新しい働き方が生まれていくのではないでしょうか。

(本記事は、ヒューマンキャピタルオンライン「麓幸子の働き方改革&女性活躍最前線」2018年3月6日掲載の記事を一部改編したものです)