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金融改革の最適解とは

デジタル・テクノロジーにより既存ビジネスの枠組みを破壊するディスラプションに注目が集まる。企業はデジタル・テクノロジーを戦略的に活用しながら、ビジネスモデルを変革していくことが課題だ。2017年の銀行法改正により、オープンAPIを通じて金融機関とFinTech企業のオープン・イノベーションが進むことが予想される金融ビジネスも例外ではない。そこで金融ビジネスの新たな価値創造の考え方や、先進テクノロジーの活用事例を解説する。

デジタル化にはフィジカルとデジタルの顧客接点の融合が重要

 デジタル・テクノロジーの進展は従来のような業種・業態の枠を“破壊”しており、テクノロジーを戦略的に活用してビジネスモデルを変革できるかが、これからの企業経営において重要な課題となっている。

 ビジネスモデルの変革を考える上で、従来のアナログな(フィジカルな)顧客接点と、インターネットを中心にデジタル化されたデジタルな顧客接点の双方を最適化していくことが重要だ。

 たとえば、金融ビジネスを例にとってみると、フィジカルなビジネス戦略は、営業店網という物理的な資産を所有、整備することで、数多くの顧客にリーチし、対面のサービスを提供することで顧客を拡大、自社ビジネスの成長につなげていく考え方だった。

蓑輪 圭樹 氏
日本アイ・ビー・エム株式会社
常務執行役員
グローバル・ビジネス・サービス事業本部 サービス事業戦略担当
蓑輪 圭樹 氏

 一方、デジタル戦略の最大の特性は「ゼロ資産」でサービスを提供することが可能な点だ。

 このたび開催された「IBM FINANCE×DIGITAL SHIFT [実証]から[実装]へと向かうFinTech技術の最前線」に登壇した日本アイ・ビー・エム(IBM) 常務執行役員 グローバル・ビジネス・サービス事業本部 サービス事業戦略担当の蓑輪 圭樹氏は、営業店をはじめとするフィジカルなコア業務と、デジタルの顧客接点を融合させることで、新たな価値を生み出す「金融ビジネスのプラットフォーム化」を進めていくことが肝要であると説明した。

 つまり、フィジカルな顧客接点、ビジネスプロセスを、どのようにデジタルで「再構築」していくかがカギを握る。

 金融機関のデジタル化の歴史を見てみると、ワークフロー自動化やWeb通帳などのテクノロジーでアナログな事務作業をデジタル化し、省力化する「デジタイゼーション」の段階を経て、FinTechやRPA(Robotic Process Automation:ロボティック・プロセス・オートメーション)、AIによる応答自動化などを用い、データ活用と自動化を進める「デジタル・トランスフォーメーション」の段階に至っている。

(図1)
デジタル技術を活用し、アナログ事務から自動処理へ変革し、知見を機会学習することによるインテリジェンスの可視化、汎用化、さらに自社だけでなく外部との連携による新たなデジタルビジネスを実現する
デジタル技術を活用し、カスタマージャーニー思考で新たなサービスを生み出すことが必要だ
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 「今後はAIがさらに高度化し、デジタル化は第3の段階に進んでいく」と蓑輪氏。AIがスマホアプリや店舗端末などのインターフェースに組み込まれ、コンシェルジュのようなパーソナルアドバイザーの役割を果たし、さらにブロックチェーンやAPIエコシステムなどのテクノロジーにより、金融機関は金融以外の外部サービスを提供するプラットフォームへと進化していく。こうしたビジネスプロセスの再構築を、IBMでは「デジタル・リインベンション」と呼んでいる。

 蓑輪氏は「金融機関が新たな金融サービス、新たな価値づくりを、顧客視点で進めていくには、顧客接点の変革とコア業務の変革を両輪で進めていくことが重要だ」と説明した。

 では、今後想定されるデジタル・テクノロジーを活用した新たな金融サービスのユースケースはどのようなものか、見てみよう。