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不動産登記情報のトーラス、事業領域を拡大

公共サービスのIT化が進み、不動産登記簿に記載されている情報はデジタルデータで提供されるようになった。しかも「登記記録」と言われるこのデータは、Webサイトで誰でも容易に閲覧できる。オープンデータであるこのデータを活用したデータベースビジネスも広がりつつあり、その先駆的存在である株式会社トーラス(以下、トーラス)では、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)を提供することで事業領域の拡大を目指している。そこにはどんな戦略があるのだろうか。

情報取得代行ビジネスでビッグデータを蓄積

木村幹夫氏
株式会社トーラス
代表取締役
木村幹夫

 トーラスの代表取締役である木村幹夫氏が不動産登記簿の重要性に気づいたのは、銀行員時代のことだ。「富裕層向けの新規開拓を担当していたときに、高い業績を上げている先輩行員がいました。その行動を確認すると、法務局に行って登記簿を閲覧していたんです」と木村氏。不動産登記簿は法務局に行けば誰でも閲覧できる。実はそこに宝の山が眠っていたのだ。

 不動産登記簿には、土地や家屋の所在地や所有者名といった基本情報のほかに、土地や建物の所有権の移転履歴や抵当権の設定などの付帯情報が記載されている。その情報から「いつ所有権が移転したのか」「二次相続がいつごろ発生するのか」「借りているローンの利率はいくらなのか」などを読み取ることができる。

 これらの情報は、資金ニーズのある富裕層を探している銀行員にとって“魚群探知機”のようなものだ。どこにどんな見込み客がいるのかがわかっていれば、敷居の高い富裕層に会うための突破口を見つけることができ、提案が通る可能性も高くなる。

 先輩行員の営業スタイルを研究して不動産登記簿の価値に気づいた木村氏だが、視線はその先にあった。木村氏が着目したのは1988年から開始された登記事務のIT化だった。「IT化が進めばもっと活用範囲が広がるはず」と考えた木村氏は、2003年にトーラスを設立。不動産情報というビッグデータの事業化に乗り出した。

 同社が主に手がけてきたのは、不動産会社や銀行、司法書士など、不動産登記簿を必要とする人たち向けの情報取得を代行するサービスだ。「今のようにRPA(Robotic Process Automation)という言葉はありませんでしたが、ソフトウェアでロボットをつくり、登記取得からデータへの分解を自動化させました。人手でやることは初めから一切考えていませんでした」と木村氏。

 ロボットであれば、瞬時に正確な情報を集めることができる。しかも、人手でやるよりもコストは断然安い。それを武器に同社は順調に事業を拡大していく。情報取得の代行サービスという形で事業を展開しながら、不動産情報というビッグデータの収集を進めてきたのである。