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AIで生産性を高める、IBMの働き方改革

働き方改革が叫ばれる中で、オフィスの生産性向上が大きなテーマとして注目されている。オフィスで働く人たちにとって、乱立するアプリケーションは仕事への集中を途切れさせかねない大きな課題だ。そこでIBMは、多数のアプリケーションをAI(人工知能)という接着剤でつなぎ、仕事の流れとコラボレーションをサポートするワークスペースを提案している。それが「IBM Watson Workspace」である。

IBM Watson Workspaceにより、
仕事の流れをAIでインテリジェント化

行木陽子氏
日本アイ・ビー・エム株式会社
技術理事
コラボレーション&タレント・ソリューション事業部
行木陽子

 オフィスで受けた電話などで、仕事への集中が途切れてしまった経験を持つビジネスパーソンは多いだろう。米カリフォルニア大学アーバイン校の研究によると、人が一度中断した作業に集中し直すまでに、平均で23分15秒の時間がかかるという。このようなことが1日に何度もあれば、生産性に大きな影響が出る。

 電話と同じようなことが情報システムでも起きている。これは、働き方改革や生産性の向上に取り組む企業にとって重要なテーマだろう。日本IBMの行木陽子氏はこう語る。

「業務ごとに多種多様なアプリケーションが使われています。メールを見たり、データの分析をしたり、出張の申請をしたり。いろいろなアプリケーションをその都度立ち上げるといった使い方が、業務への集中を妨げている面もあると思います。多くのアプリケーションをつなぐ接着剤としてAIを活用することで、仕事に集中しやすい環境を実現することができる。それが、IBMの働き方改革への基本的なアプローチです」

 そのコンセプトは“インテリジェント・ワークストリーム・コラボレーション”。コラボレーションしながら仕事をする、その流れをAIでインテリジェント化する。それにより、仕事の質と効率を高めようという考え方だ。こうした働き方を実現するうえで中核となるソリューションが「IBM Watson Workspace」である(図1)。

「タスクごとにコミュニケーションの場であるスペースをつくり、その中で会話やファイル共有、ビデオ会議などができます。IBM Watson Workspaceは1つのユーザーインターフェースで、こうしたコラボレーションの環境を実現します」と行木氏。スペースは複数人とやり取りする場にも、1対1の会話の場にもなる。また、PCだけでなく、スマート端末でもこの環境を利用することができる。

(図1)IBM Watson Workspaceとは
(図1)IBM Watson Workspaceとは
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ワークスペースの中で業務を完結、
アプリケーション探しの手間は不要

 IBM Watson WorkspaceはAIとも連携する。その一例が、会話をまとめる集約機能だ。複数人で会話をしているとき、中座したとしてもWatsonが内容をまとめて示してくれる。こうしたスペースを活用することで、行木氏自身の働き方は大きく変わったという。

「以前はメールでのやり取りが主体だったのですが、今ではスペース上でほとんどのコミュニケーションをしています。メールのように『お疲れさまです』といった定型文を打ち込むことがありませんし、CCとかFWの送付先が肥大化することもありません。コミュニケーションのスピードが速くなり、生産性が上がったという実感があります」

 図2に示したように、IBM Watson Workspaceは他の様々なサービスとつながっている。業務特化型スペースやビジネス会話の理解、アクションの実行といったサービスを含む「IBM Watson Work Services Platform」の上にIBM Watson Workspaceが載っており、両者はAPIで接続される。

(図2)Intelligent Workstream Collaborationプラットフォーム
(図2)Intelligent Workstream Collaborationプラットフォーム
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 各種サービスとの連携の1つが前述した集約機能だが、特に便利なのは既存アプリケーションとつないで業務の流れを支援する機能だろう。

「例えば、中国に出張が決まったとき、携帯電話の貸し出しを申請するとしましょう。当社では従来、申請用のアプリケーションにアクセスする必要があったのですが、日常的に使うものではないので、見つけ出すのに苦労することがありました。申請用のアプリケーションに限らず、同じような経験を持つ方は多いのではないでしょうか」と行木氏は話す。

 スペースに「携帯電話を借りたい」とメッセージを入力すると、Watsonが内容を理解して申請用のアプリケーションを呼び出すことができる。かつてのように、アプリケーションを探すのに時間をかける必要はなく、申請用アプリケーション画面を開いて作業する必要もない。スペース上で申請が完了する。

「ワークスペースの中で業務を完結させる」。それは、IBM Watson Workspaceの重要なポイントだ。もう1つのポイントは「業務に寄り添う」。それを実現するのがテンプレートAPIと業務特化型スペースである。

既存アプリケーションと連携し、
ユーザー個々の業務に寄り添う

 どのように業務に寄り添うのか、行木氏は飲料メーカーの顧客対応のシナリオで説明する。

「顧客対応部門のAさんに『ペットボトルのフタが開けにくい』というクレームが入ったとしましょう。いつもは分析担当者に相談するのですが、今日は不在とのこと。そこで、クレームの一覧を見てヒントを探そうとしたのですが、リストは膨大です。分析ツールの使い方もわからず、途方に暮れてしまいました」

 そのとき、AさんはIT部がこんなときのために「IBM Watson Workspaceのテンプレートを用意した」と話していたことを思い出した。

「IBM Watson Workspaceでは、業務に応じた様々なテンプレートを作成することができます。Aさんは分析用テンプレートをスペースに呼び出しました。これを使えば、分析ツールに詳しくなくてもペットボトルのフタについて分析することができます。また、担当者検索の機能を活用し、詳しい社員とコミュニケーションをとることも簡単です」

 Aさんは分析ツールを使って、リンゴジュース用のペットボトルのフタへのクレームが多いと気づいた。そこで、リンゴジュースの品質管理担当者をスペースに招待する。担当者とはすぐにつながり、スペース上でのビデオ会議に移行。担当者から解決のためのヒントを得ることができた。以上は顧客対応を例にしたシナリオだが、IBM社内ではIBM Watson WorkspaceがIT運用業務に使われているという。問題が発生すると必要なアプリケーションを組み込んだワークスペースを作成し、関係者がスペース内に集められ、迅速に解決に取り組む。

 企業内にはすでに多数のアプリケーションが存在する。こうした既存アプリケーションとスムーズに連携できる点は、IBM Watson Workspaceの特長の1つ(図3)。それが業務に寄り添うワークスペースの実現に役立つ。また、IBMはアプリケーション開発を担うパートナーとの連携にも注力している。

「便利で生産性を向上させるワークスペースづくりを、IBMだけでカバーしようとは考えていません。多くのパートナー企業が、すでに連携アプリケーションを提供しています。自社に最適なものを選ぶことで、よりよいワークスペースを構築していただきたい」と行木氏は言う。こうした取り組みが結果として、インテリジェント・ワークストリーム・コラボレーションの実現につながるはずだ。

(図3)ビジネスデータとWatson Workspaceの連携例
(図3)ビジネスデータとWatson Workspaceの連携例
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