仮想通貨の普及により注目を集めたブロックチェーン(分散型台帳)技術の活用が広がっている。改ざんが極めて困難で、透明性が高い取引を実現することから決済処理を中心に金融業界での活用がメインだったブロックチェーンは現在、流通業など非金融業界での活用が急速に拡大している。世界中で様々な企業が実証実験を行い、実際のビジネスシーンでの運用が開始されている。そんな中、米国小売最大手ウォルマートが消費者の信頼を高めるため、食の安心・安全に向けてグローバルな食品サプライチェーンシステムにブロックチェーンの導入を始めた。今後のブロックチェーン活用の展望とは。

ブロックチェーンの衝撃

日本アイ・ビー・エム株式会社
執行役員
インダストリー・ソリューション事業開発担当
鶴田規久氏

「ブロックチェーン技術は世の中の仕組みを変えると強く思いました」と語るのは、日本IBM執行役員 インダストリー・ソリューション事業開発担当の鶴田規久氏だ。金融業界を担当していた鶴田氏は、2015年10月にシンガポールで開催された国際的な金融イベント「Sibos(サイボス)」でブロックチェーン技術への関心の高まりと急速な拡大に衝撃を受ける。

「ほとんどのセッションはブロックチェーンでもちきりでした。これは大きな波になると思い、すぐに次期事業計画に盛り込み、専任チームを編成しました」と鶴田氏。時期を同じくしてIBMはグローバルレベルでもブロックチェーン関連プロジェクトを複数始動させた。ただし、2016年当時のブロックチェーンは資金決済技術という色合いが濃く、金融業界での活用をメインとしていた。実際に2017年までのブロックチェーン関連プロジェクトは、金融業界が大半を占めていた。

トレンドの変遷、
ブロックチェーン活用が非金融業界で拡大

「2018年に入り、トレンドが変わりました。ブロックチェーン活用における金融分野とそれ以外の割合が逆転したのです。2018年前半だけで、日本でも100を超えるブロックチェーン関連プロジェクトが立ち上がりましたが、その6割は非金融業界です」(鶴田氏)

その代表が、スムーズな連携処理を必要とするポイント・リワード、情報の信頼性確保が求められる不動産、セキュアなデータ管理が必須な医薬、ステークホルダーが多く煩雑な書類処理と決済を伴う貿易、サプライチェーンが長く複雑な小売・消費財で、多くのエリア・業界でブロックチェーンの実証実験が始まった。

中でもいち早く実装段階に入った業界が小売業界だ。狙いはトレーサビリティーの確立である。改ざんが極めて困難で透明性の高いブロックチェーン技術を活用すれば、食の生産地から小売店舗の棚に並ぶまで、仕入れルートのサプライチェーンをトレースすることができ、食の安心・安全につながる情報を担保できる。

そこに着目したのが、ウォルマートである。実証実験の結果から確かな手応えを得た同社は2018年9月、取引先にブロックチェーンを活用したトレーサビリティープラットフォームへの参加を要請するアナウンスを行った。さらに、フランスの小売最大手カルフールも同様にプラットフォームへの参加表明をした。今、小売業界に何が起きているのだろうか。

食の安全性確保と高付加価値戦略に
ブロックチェーン活用

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