米国では2017年小売店舗の閉店数が開店数の2倍を超えた。消費者の店舗離れが進み、その理由としてEC(電子商取引)の普及・拡大が指摘されるが、小売・消費財メーカーは本質を見誤ってはいけない。業界を破壊の波に晒したのは、デジタル技術を駆使したテックジャイアントのみならず、実は、消費者なのである。デジタル時代に必要な勝ち残りを賭けた変革はどこにあるのか。変化の激しい小売・消費財業界にスポットを当てて考えてみたい。

小売・消費財業界を変えたのは
“破壊者”ではなく“消費者”だった

“小売・消費財業界は破壊の波に晒されている” この認識は業界関係者に共通したものだろう。「ITを駆使したテックジャイアント、いわゆる“創造的破壊者(ディスラプター)”に顧客を奪われ、店舗で買い物をする人たちが減った」と嘆く声が聞こえてくる。しかし、本当に“創造的破壊者(ディスラプター)”が実店舗での消費を減少させる本質的な原因なのだろうか。

日本アイ・ビー・エム株式会社
グローバル・ビジネス・サービス事業
流通サービス事業部
パートナー 松尾明氏

日本IBMで流通業界向けにコンサルティングを担当する松尾明氏は「実は、消費者こそが“破壊者”なのです。この点を見誤ると業界で勝ち残ることはできません」と警鐘を鳴らす。

実店舗で買い物をする消費者の割合は依然高く、消費者は、ECと実店舗を組み合わせたオムニチャネルを好む傾向にある。重要なのは、消費者の購買行動を変化させるベースとなる人口減少や少子高齢化といった人口動態を捉え、急速に拡大するデジタル化に対応することなのだ。

「人口構成の変化は確実に予測できる社会の変動要因です。それを踏まえた対策を打つのは当然です」と松尾氏が指摘するように、日本の少子高齢化社会は急速に進み、2025年には約3分の1が65歳以上の高齢者になる。しかし、高齢者といっても一昔前の高齢者とは異なる。現状ですら高齢者いわゆる“シニア”の消費が活発なこと、PCやスマートフォンを駆使する高齢者がテレビなどのメディアに取り上げられるが、2025年の高齢者はデジタルに精通した世代となるのだ。つまり、デジタル化への対応は今後さらに重要性を増していくことになる。

デジタルの普及は消費者の行動をどう変えたのか。消費者はインターネットから多くの情報を得てトレンドを理解し、自らの消費行動に反映させる。企業から発信された情報のみならず、同じ消費者からの発信された情報をも参考にし、また自ら情報も発信し、情報を供給する側にもまわる。消費者の発信情報の影響力はますます重要性を増している。一方、国境を越えて購買する越境ECも拡大している。消費者にとっては選択肢が増えたことで、特定ブランドへのロイヤリティー低下を招いた。それに伴い、他ブランドへの乗り換えも容易となった。

「こうした消費者を相手にビジネスをするという認識が重要です」。松尾氏は、消費者を中心とした実店舗とデジタルの融合によるビジネスモデルの再構築を提唱する。そして、そこには「店舗のフィジタル化(フィジカル+デジタルの造語)」「パーソナライズ化」「デジタルによる業務効率化」「エコシステム連携」の4つの変革があるという。

4つの変革 - その1
店舗のフィジタル化

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