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事業承継フォーラム

 11月から12月にかけて、大阪、福岡、仙台の3都市で中小企業基盤整備機構(以下:中小機構)が「事業承継フォーラム」を開催します。中小企業経営者が自社の承継を考えるきっかけとするべく、事業承継経験者による講演やパネルディスカッションを軸としたフォーラムです。

 開催の背景には、深刻化する中小企業経営者の高齢化があります。帝国データバンク(TDB)の調査によると、中小企業経営者の年齢別分布を見ると、1995年に最も多かったのは47歳でしたが、20年後の2015年は19歳上がって66歳でした。数値だけを見ると、20年前の経営者がほとんど代替わりせず、そのまま経営者を続けているように映ります。

 さらに、15年から20年にかけて、約30万6000人の中小企業経営者が新たに70歳に達し、約6万3000人が75歳に達します。70歳は引退適齢年齢といわれ、20年ごろに中小企業経営者の大量引退期が到来することが予想されます。

 問題は事業承継に関する準備を行っていない経営者が多い点です。中小企業庁の調査によると、20年までに70歳になる経営者のおよそ60%が、『後継者未定』の状態にあります。同年までに75歳になる経営者でも、事業承継に向けた準備を行っている経営者は半数にとどまっています。

20年ごろに引退適齢年齢の70歳に達する団塊世代の経営者は約30万6000人にのぼる
20年ごろに引退適齢年齢の70歳に達する団塊世代の経営者は約30万6000人にのぼる

廃業予定の理由の3割が後継者難

 16年に日本政策金融公庫総合研究所が行った、「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」によると、60歳以上の経営者のうち、50%超が廃業を予定しています。特に個人事業者では約7割が「自分の代で事業をやめるつもりである」と回答しています。

 廃業の理由としては、「当初から自分の代でやめようと思っていた」が38.2%で最も多く、「事業に将来性がない」が27.9%で続きます。が、「子供に継ぐ意志がない(12.8%)」「子供がいない(9.2%)」「適当な後継者が見つからない(6.6%)」と、後継者難を理由とする経営者も合計で28.6%を占めました。

 こうした状況を受けて中小企業庁では17年、事業承継に関する課題と対応の方向性を示した「事業承継5ヶ年計画」を策定しました。計画が目指す姿は、地域の事業を次世代にしっかりと引き継ぐと同時に、事業承継を契機に後継者が経営革新にチャレンジできる環境の整備です。今後5年程度を事業承継支援の集中実施期間として、支援体制、支援施策を抜本的に強化します。

 そこでまず取り組んだのが、経営者に「気づき」を提供するための、各都道府県単位の事業承継ネットワークの構築です。5年間で25万〜30万社を対象に、プッシュ型の「事業承継診断」を実施しています。

 また、早期の事業承継を促すため、早期承継への税制優遇などの環境整備も進めています。18年4月に改正された、贈与税・相続税の納税猶予及び免除制度を柱とする「事業承継税制」の拡充がその1つです。ほかにもさまざまな支援体制、施策の強化を図っています。

後継者の育成には5年以上かかるケースが大半

 中小機構の調査では、先代から事業を引き継いだときに苦労した点として、「経営力の発揮」を挙げる経営者が最も多く35.8%でした。また、「中小企業白書(14年版)」によると、後継者が経営力を発揮していくための育成には、5〜10年の期間が必要だと考えている経営者が中規模企業で47.4%、小規模事業者で39.9%と、それぞれ多数を占めました。自身の経験などから後継者育成には5年以上を要すると考える経営者が多く、この点から自身の体力面の衰えなどを自覚してから事業承継準備を始めるのでは遅いのです。

 中小機構ではこれまでも「事業承継フォーラム」を各地で開催してきました。これは実際に事業承継を行った、あるいは現在取り組んでいる企業の経営者及び後継者の事業承継の取り組みを講演やパネルディスカッションを通じて紹介するものです。

重永 忠氏
17年度事業承継フォーラム東京会場で基調講演を行った株式会社生活の木・代表取締役社長CEO 重永 忠氏

 17年度の事業承継フォーラムは東京、大阪、名古屋の3会場で開催しました(開催報告の詳細はこちら)。

 東京会場の基調講演では、子息への事業承継に現在進行形で取り組んでいる株式会社生活の木の重永忠社長に登壇いただきました。環境変化の激しい現在においては、単に事業を継がせるのではなく、新しいことを起こさなければ生き残れないという観点から「後継創業」という持論を紹介していただきました。

 パネルディスカッションでは、3会場合わせて6社12人からそれぞれ、経営者、後継者の立場で事業承継について語っていただきました。いずれも事業承継がスムーズに行われたわけではなく、親子での認識のズレや経営者としての覚悟の醸成など、歩調を合わせるのに苦労がつきまとった例ばかりでした。親の気持ち、子供の気持ちはそれぞれ異なります。そういった事業承継のありのままの姿を登壇者から開示していただきました。

17年度事業承継フォーラム名古屋会場で登壇したパネリスト
17年度事業承継フォーラム名古屋会場で登壇したパネリスト

 事業承継に形式化した正解はありません。多くの経験を共有することで、後継者にどのように事業を繋いでいくのかを考えていただく機会を設けることが本フォーラムの最も大きな役割です。

 今年は大阪(11月19日)、福岡(12月5日)、仙台(12月10日)で開催します。
それぞれの基調講演は、大阪が中農製作所の中農康久会長。福岡がオタフクホールディングスの佐々木茂喜社長、仙台が北星鉛筆の杉谷和俊社長です。皆様、事業承継の当事者として貴重な経験談をお話しいただきます。

 親子で登壇いただくパネルディスカッションは今年もあります。事業承継の実態に触れられるまたとない機会です。是非、会社の将来を考えるきっかけとしてください。

中小機構主催「事業承継フォーラム」の詳細・申し込みはこちら