AI・IoT時代のデータ活用羅針盤 ビッグデータ・コンパス2018

トップと現場の意識改革でAIを“お家芸”に!

AIのビジネス化は経営ビジョンのもとに取り組むべき課題

「 AIを使って何かをやりたいというお客様は非常に多くいらっしゃいます。しかし、何をやりたいのか。どのように使うのか。当社の AI 商談において全体の約7割はテーマが決まっていない状態からスタートしています」と、伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC) AIビジネス推進部 AIプラットフォーム課 藤澤好民氏は AI 利用の現状について話す。先進の IT 技術を駆使するソリューションプロバイダの CTC は、企業における AI のビジネス活用を加速するためにコンサルテーションから開発、構築、プラットフォームの提供、運用までをトータルに支援する体制を整えている。
「何も決まっていな状態」からビジネス化し成功に至る道のりには、どのようなプロセスがあるのだろうか?
「ワークショップやコンサルタントにより、AI で解決すべき課題を見つけるのが最初のステップです。次に PoC( Proof of Concept、概念実証) を行い、効果確認とともに投資の妥当性を判断します。投資決定の後、ビジネス化に向けたプラットフォームを構築し運用のフェーズに入ります。どのプロセスも大切ですが、成功するか否か、すべては最初のステップにかかっています」と藤澤氏は指摘する。

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
セキュリティ・ITサービス企画本部
AIビジネス推進部
AIプラットフォーム課

藤澤 好民氏

CTC が開催する AI 活用のためのワークショップでは、経営者と現場部門の参加を促しているという。経営者の参加について藤澤氏は「 AI の導入には相応の投資が必要です。投資の判断を行う経営者には AI の正しい理解と、AI で実現するビジョンを持っていただくことが非常に重要です」と話しこう続ける。「 AI は万能ではありません。できること、できないことが存在します。またトライ&エラーを繰り返すことも必要です。データ不足で思っていた結果を得られないこともあるため、PoC の結果だけで投資の妥当性を判断するとビジネス化への一歩がなかなか踏み出せません。大事なのは課題解決の先にある、AI活用によるビジネス価値を評価することです」

1部門だけでは得られない費用対効果をいかにスケールするか

AIで課題を解決することは目的ではなく、課題解決の先にあるビジネス価値こそが、向かうべきゴールになると、CTC AIビジネス推進部 AIプラットフォーム課 課長 小野友和氏も強調する。「例えば1つの部門や生産ラインがコスト削減のために PoC を実施し一定の成果が出たとしても、1部門のコスト削減効果だけでは AI 導入に進むのは難しい現実に直面します。トップが会社の方針として AI を全社的に活用していくといったビジョンを示し、全社員が同じ方向を向いて動き出すことが大切なのです。すべての業務に AI を利用し全社でコスト削減を図っていく。AI を利用し1部門だけでなくすべての生産ラインを最適化していく。全社に展開することでスケールメリットによる効果の最大化が図れます」

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
セキュリティ・ITサービス企画本部
AIビジネス推進部
AIプラットフォーム課
課長

小野 友和氏

経営者とともに、現場部門のワークショップ参加が必要な理由について小野氏は説明を加える。「現場が課題を把握しており、ビジョンを具現化する上で現場の視点は欠かせません。また AI 開発では精度を高めるために現場の知見を活かすことが大切です。さらに AI 利用が押し付けられたものではなく、現場も一緒になって考え、取り組むことにより運用段階で理解や共感を得やすくなります。AI のビジネス利用を拡大するためには、トップダウンとボトムアップの両輪が必要なのです」

全社展開では事業部門や製品・サービスに合わせた専用AIを

そして AI 利用の全社展開において技術的な観点からもう1つ、AI の誤解を解く必要があると藤澤氏は話す。「汎用的に AI を使いたいというニーズがあります。しかし汎用性を高めるほどに精度は低下します。例えば AI を利用し産業用スマートメーターでビルや店舗等の電力最適化を図りたいという場合、地域性やテナント、営業時間など環境がそれぞれ異なるため、1つの汎用 AI では精度を出すことができません。専用 AI がビルや店舗等の電力消費の特徴を学習することで電力消費の異常などの検知が可能となるのです。画像認識による外観検査なども個別のラインごと、製品ごとに特化した専用 AI の利用によってはじめてビジネスニーズに応える精度を実現することができます」
そして 専用 AI だからといって、AI の数だけシステム構築が必要になるわけではないと小野氏は捕捉する。「肝心なのは、複数の専用 AI を統合管理する1つのプラットフォームを構築し、その上に、部門ごと、業務ごとの AI を載せていくアプローチです。こうすることで、部門ごとに最適化された“専用 AI ”を100個、200個と作りながらも、その運用はワンストップで行うことができ、コストも最適化できます」

ハイブリッドクラウド環境で AI 投資の最適化を図る

AIのプラットフォームには、データを収集・蓄積し高速に処理する基盤と、AI が最新データを学習し精度の向上を図っていく基盤の2つの役割が求められると小野氏は語る。「 AI の精度は学習するデータ量に大きく影響されます。一度 AI のエンジンを作って終わりでなく、変化への対応が必要なのです。先ほどの AI を利用したスマートメーターの例でいえば、あるビルでテナントが入れ替わるなど環境に変化があれば電力消費量も変化します。そうした変化を AI は常に学習し続けなければなりません」
こうした課題に応えるため、CTC では、AI 開発のプロセスと技術を体系化し開発の基盤となる AI ハイブリッドクラウド環境「 CINAPS(シナプス)」を提供している。
「投資の最適化を図りながら、開発、学習など AI のライフサイクルやセキュリティ要件、規模、予算などに応えるためには、クラウドとオンプレミスを上手く組み合わせて利用できるプラットフォームが必要です。例えば、PoC はクラウドで、本番はセキュリティの観点からオンプレミスで行いたい。あるいは AI はクラウドで利用し、計算処理はコスト面からオンプレミスで実施したいなど、CINAPS は様々な要件に応じてオンプレミスとクラウド間のシームレスな連携を実現します。さらに国内最大規模の検証施設で検証済みの環境を提供するため即座に提供できます」(小野氏)

CTC が提供するAI 活用のためのハイブリッドクラウド環境「 CINAPS 」。オンプレミスとクラウドをシームレスにつなぎ、AI の開発から運用までのライフサイクルをカバーするプラットフォームだ。

AI 利活用の基盤として親和性の高い Microsoft Azure

CINAPS とマイクロソフトのクラウド プラットフォーム Microsoft Azure の親和性は高いと小野氏は話す。「本番環境をオンプレミスに移行し、アプリケーションの基盤だけを Azure で利用する場合、CTC のデータセンターと Azure は太い回線で結ばれており、当社データセンターのデータを Azure 上にあるかのように利用することが可能です。また AI の追加学習を行う場合も、Azure のリソースを必要な期間だけ利用することによりオンプレミスの拡張を不要としコストの抑制が図れます」
AI の PoC 基盤としても Microsoft Azureに優位性があると藤澤氏は付け加える。「 Microsoft Azureには AI の開発・活用するためのリソースもツールも完備されており、PoC をすぐに始めることができます。またトライ&エラーで失敗したら次の環境をつくって即座にテストを実施し、テスト結果が良かったらすぐに適用できる。このスピード感は Azure ならではの特長だと思います。さらに多種大量のデータを収集・活用し AI を成長させることも可能です」

AIを企業競争力につなげるために“ AI の内製化”が必須

AI のビジネス利用を拡大し自社の“お家芸”とするためには、AI の内製化が欠かせないと小野氏は力をこめる。「ビジネスは日々動いています。AI の精度向上のための再学習を行うたびに、外注に出していてはコストがふくらむばかりです。CTC では PoC で行った内容について情報システム部門と現場部門に対し体験型トレーニングを行い、次からは自分たちでできるようにフィードバックさせていただいています。正確な学習データをつくることが AI 開発の肝となるため、そのデータが正しいかどうかを判断できる現場部門にもトレーニングの参加をお願いしています。AI のビジネス活用は全社で取り組むべき課題です。AI 利用のビジョンをつくり、トップのリーダーシップのもとビジョンの実現に向けて全社一丸となって邁進していくことが大切です」
AI 利用は検証からビジネスに直結し利益に結びつける時代へ――。AI 分野で先進的な取り組みを行っている CTCとマイクロソフトは密に連携しながらそれぞれの強みを活かし、AI のビジネス活用に取り組む企業に現実解を提供していく。

企業がトップの意思を持って取り組むべき AI のビジネス化について具体的アプローチを語ってくれた小野氏と藤澤氏。

関連リンク

CTC の AI 活用のためのハイブリッドクラウド環境「 CINAPS 」

http://www.ctc-g.co.jp/news/press/20171013b.html

CTCの Cloud Everywhere 提供メニュー「製造業向けAI適用可能性診断サービス」

https://www.microsoft.com/ja-jp/cloud-platform/cloud-everywhere

日本マイクロソフトの AI ×ビッグデータ活用ソリューション

https://azure.microsoft.com/ja-jp/solutions/big-data/

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  • 1部門だけでは得られない費用対効果をいかにスケールするか
  • 全社展開では事業部門や製品・サービスに合わせた専用AIを
  • ハイブリッドクラウド環境で AI 投資の最適化を図る
  • AI 利活用の基盤として親和性の高い Microsoft Azure
  • AIを企業競争力につなげるために“ AI の内製化”が必須

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