Mixed Realityから始まる産業革命

導入しなければビジネスが成り立たない程のインパクトが Mixed Reality にはある

ファーストラインワーカーの生産性、創造性を高めるアプリケーションを

― 今回リリースされた「 Microsoft Dynamics 365 Remote Assist 」、「 Microsoft Dynamics 365 Layout 」はどのようなアプリケーションですか。
鈴木:日本マイクロソフトは、「時間と場所に縛られることなく仕事ができる」「短時間でより多くの人と関わることで成果に結びつける」ことをテーマに様々な働き方改革をお客様に提案してきました。時間と場所という観点では、インフォメーションワーカーの方達に向けたソリューションが多く、工場や建築現場等で働くファーストラインワーカーの方達にはあまり関連がない企業という印象を持たれていたかと思います。
2017年に発売された Microsoft HoloLens の登場で、着実にファーストラインワーカーの方達の働き方改革をサポートできるようなってきたことは、大きな転換点だと感じています。Microsoft HoloLens 導入のハードルを下げると同時に、Mixed Reality の活用で現場の生産性、創造性を高めるために開発したアプリケーションが「 Microsoft Dynamics 365 Remote Assist 」、「 Microsoft Dynamics 365 Layout 」です。
日本マイクロソフト株式会社 マイクロソフトテクノロジーセンター
テクノロジーアーキテクト 鈴木敦史氏

現場と本部のコミュニケーションを変える
「 Microsoft Dynamics 365 Remote Assist 」

― ではまず「 Microsoft Dynamics 365 Remote Assist 」について詳しくお聞かせください。
鈴木:例えば、現場にオペレーターしかいない状況で工場のラインに機械トラブルが起きた際、敷地の広い工場では連絡が来てから技術者が駆けつけるのに10分20分かかってしまうケースも多いと思います。その間、ラインがダウンタイムになってしまうのは大きな損失ではないでしょうか。その点、「 Microsoft Dynamics 365 Remote Assist 」を使えば、Microsoft HoloLens を装着したオペレーターの視点画像を共有しながら、遠隔地から PC やスマートフォンを通して指示を出すことができます。
実際に海外の工場でトラブルが起きた際、日本にいるエンジニアが遠隔サポートすることで問題を解決したという使用事例もあります。海外にエンジニアを派遣したり、常駐させるコストを考えると画期的なソリューションと言えるかと思います。製造業を例にお話ししましたが、建築不動産業界や医療分野をはじめ、現場と本部間のコミュニケーションが必要とされる、あらゆるビジネスで活用できる汎用性が「 Microsoft Dynamics 365 Remote Assist 」にはあります。
現場の作業者は Microsoft HoloLens を装着し、両手が使える状態でいつも通りの作業ができる。作業者の視界には本部からの指示が 3D 空間上に共有される。
遠隔地にある本部などから、現場作業者の視界を共有し、その視界の中に直接さまざまな指示を書き込むことができる。もちろん映像と音声によるコミュニケーションも同時に可能だ。
― リアルタイムの情報共有という面では経営判断にも役立ちそうですね。
鈴木:Microsoft HoloLens を装着して仕事している人の動きのデータをリアルタイムに取得できますので、経営側や管理側から見ると建築現場や工場等で行われている作業の進捗を把握するツールにもなります。PC やタブレットを持ち込みにくい現場の状況がタイムリーに分かることで、さらなる生産性の向上や作業の可視化、さらには事故などのリスクの回避にも役立つでしょう。
また、IT資産の有効活用という面では、Microsoft 365 との連携があります。「 Microsoft Dynamics 365 Remote Assist 」は、Microsoft 365 の標準ツールである Microsoft Teams 上で動かすアプリケーションなので、利用に際し特別な研修も必要ありません。また、いつもの自分の Microsoft アカウントで利用できるのもメリットです。
「 Microsoft Dynamics 365 Remote Assist 」紹介動画

等身大の目線で空間配置をシミュレーションできる
「 Microsoft Dynamics 365 Layout 」

― もう1つのアプリケーション「 Microsoft Dynamics 365 Layout 」はどのような活用シーンを想定されますか。
鈴木:Microsoft HoloLens を装着することで、現実空間にバーチャルの 3D データを配置し、空間配置をシミュレーションできるのが「 Microsoft Dynamics 365 Layout 」です。最近では VR を使った空間配置シミュレーションソフトも出てきていますが、ゴーグルで視界を覆ってしまうため歩き回ることができず、大きさや距離の概念がつかみにくいというデメリットがありました。
その点、「 Microsoft Dynamics 365 Layout 」は Microsoft HoloLens の高度なセンサーを活用して、現実空間の中を自在に歩き回りながら、配置シミュレーションや、動線の検証をすることができます。例えば、機器を配置した空間を人が通れるか、通れないか等は簡単に分かります。建築現場で機材を配置する際に「職人の作業動線がどうなるのか」、「作業姿勢は体に負担がかからないか」といったことを等身大の空間レイアウトの中で確認することができるのです。また現場では作業効率に加えて、作業する人の安全確保も重要になるかと思いますが、筆記アンケート等による主観的なフィードバックではなく、実際の人の動きや姿勢を数値データとして蓄積できるため、継続的なモニタリングを通して改善していく活用法も想定しています。
「 Microsoft Dynamics 365 Layout 」では、事前に設備配置のデータを作成し、クラウドに保存しておくことが可能。また、間取りのデータがない場合でも、現場で直接 Microsoft HoloLens によるスキャニングもできる。
Microsoft HoloLens 装着者の視界には、部屋の左奥に設備機器の 3D モデルが見えている。3D モデルの移動はもちろん、拡大縮小も指先のジェスチャーで可能だ。
仮想的に配置した設備機器に歩み寄って、操作盤の高さを検証している鈴木氏。
「 Microsoft Dynamics 365 Layout 」紹介動画

IoT データと人の動きのデータを組み合わせた分析も可能に

― IoT の活用が進む中で、Microsoft HoloLens と組み合わせた分析がもたらす可能性をお聞かせください。
鈴木:人が身につけて動くコンピュータである Microsoft HoloLens は、先ほど申し上げたように“人の動き”をデータ化することができます。全世界的に IoT が進化してきて、特に製造業ではデジタル化により製造コストを削減するインダストリー4.0 がキーワードになっていますが、デジタルツインの要素に人間の情報が含まれていないのが現状です。IoT データからマシンラーニング、ディープラーニングで導き出せるデータの中に、「人の行動」という予測しにくい要素を加えることでより確実な機械の故障予測や、機械の動作シミュレーションを実現することができます。例えば熟練した人の作業工程と新人の作業工程をデータ上で比較することで、製品がどういう形状になっていれば作業効率が良いのか、どう改善していけるのか等の改善につなげていくことが可能です。その意味でも Mixed Reality が現場業務にもたらすインパクトは大きなものとなるでしょう。こうした Mixed Reality 活用を広げ、企業における導入を支援していくために、21社の開発パートナーが参加する Mixed Reality Partner Program も整えています。また Microsoft HoloLens のリセラーとして日本ビジネスシステムズ様と大塚商会様が加わったことも大きなトピックです。

Mixed Reality は現場コミュニケーションや組織づくりに変革を起こしていく

― 今までも AR や VR といったテクノロジーが出てきましたが、MR の優位点や MR だからこそ実現できることは何でしょうか。
鈴木:以前から AR( Augmented Reality、拡張現実 )のテクノロジーはあり、スマートフォンが出てきた2007年位から市場で活用され始めました。同時期にスマートグラスが話題になり、「現実空間に情報を付加できる」という価値が評価されましたが、爆発的には広がらなかったという経緯があります。その後、VR( Virtual Reality、仮想現実 )の技術が実用化され出し、映像やゲーム等のエンタテイメント市場を中心に盛り上がりましたが、ビジネスの現場で活用されるソリューションにはなり得ませんでした。
AR も VR も、“このテクノロジーがなければ業務が成り立たない”というものではなく“あったら面白そうだけど、なくても問題はない”という段階から抜け出せていないのが現状です。一方で、Mixed Reality は幅広いビジネス領域において“ MR がなければこの業務が成り立たない”と断言できるほどの付加価値を提供できる存在です。
「 Microsoft Dynamics 365 Remote Assist 」が、現場と本部をスムーズにつなぎコミュニケーションや移動コストに革命をもたらすというお話をさせていただきましたが、Microsoft HoloLens による Mixed Reality 活用を前提としたビジネス設計をしていただくことで、最適な人員配置や組織全体の業務効率化を進めることが可能です。
例えば、今まで工場のラインや建築現場等において複数人で行って作業に対して、センター集中型でエキスパートの保守部隊を置くことにより、現場に配置する人を1人にするという組織づくりも実現できます。今後、Mixed Reality は、かつてビジネスの現場にPCやスマートフォンが登場した時のように、産業を根底から変えていく圧倒的なインパクトを与える存在となっていくでしょう。我々としても、Microsoft HoloLens の機能や連携するソリューションをさらに発展させることで、日本企業の皆様の働き方改革とビジネスイノベーションをサポートしていければと考えています。

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