SPECIAL REPORT KAZUTOSHI SAWADA

グローバル業務基盤統一で世界No.1のアイウエアブランドを目指す

株式会社ジンズ IT経営改革室 統括リーダー 澤田 和寿 氏
株式会社ジンズ
IT経営改革室
統括リーダー
澤田 和寿

企業が成長し事業規模が拡大するのに伴い、ガバナンスを効かせて求心力を高めることが必要となる。まして、海外進出する企業ではいかに集中管理を実現するかが、グローバルビジネス成否の鍵を握る。「レンズ追加料金¥0」、機能性アイウエア市場の創出など、メガネ業界の既成概念を覆し次々とイノベーションを起こす JINS。同社がさらなる成長に向け、海外進出の第一歩を踏み出したのは2010年の中国の地からだった。本格的な海外進出を行う上で、それに耐えうる業務基盤( ERP )の構築が急務となった。だが、グローバルレベルで ERP の導入や運用を行うために根本的な課題があった。わずか数名のスタッフで対応しなければならなかったのだ。
「 IT 人材を増強したくても、ERP 導入においてはシステムと業務の両面の知識が必要となるため、当時から人材確保が難しい状態が続いています」と株式会社ジンズ IT経営改革室 統括リーダー 澤田和寿氏は話す。

少数精鋭でグローバルでの ERP 導入をやりきるために澤田氏が描いたロードマップが、共通の ERP パッケージで国内外全ての拠点をカバーする構想だった。「グローバルで単一の ERPに統一すれば、システム運用を圧倒的にスリム化できます。基盤が1つですから、運用していく中でどこかの国で問題が起きた場合、他の国も同様の問題の発生を想定し事前に対策を打つことが可能です。また店舗からの要望や市場のニーズに対し、各国ですべて1からつくるのではなく、横展開することにより開発期間の短縮や IT 投資の抑制が図れます。人も含めてリソースの価値最大化を図ることが業務基盤の集中管理の狙いです」

無駄な作業を省き本来業務への集中を高められることが選定の決め手

JINS では、企画・生産・流通・販売までを自社で一貫して行う SPA( Specialty store retailer of Private label Apparel、製造小売)方式を支える業務基盤として、著名な ERP パッケージを当時日本国内向けにすでに導入していた。しかしグローバルの共通基盤としての既存 ERP の採用は、膨大な IT 投資が必要となることに加え、現場における使いやすさ、つまり“業務集中”の観点でも課題があったと澤田氏は話す。
「既存の ERP パッケージは、現場が業務で利用している画面操作と大きく異なっており、利用するためにトレーニングが必要でした。また従来、手元の資料を見ながら基幹システムに登録する手間が発生しており、現場において本来業務への集中を妨げていました。この手間を解消できる仕組みを構築したかったのです」

新たなグローバル共通業務基盤として JINS が Microsoft Dynamics 365 を選択したのも、コスト削減効果の試算はもとより、懸案だった基幹システムへの自動入力の仕組みを容易に実現できることが決め手になったと澤田氏は強調する。
「当社では以前から Excel を日常業務で利用していました。Excel との統合が標準機能として実装されている Microsoft Dynamics 365 なら、Excelで作成した業務データを、そのまま簡単に取り込むことが可能です。二重入力の手間から現場を開放し、本来業務に集中できる時間を創出できます。またデータ入力のミスや入力時間のタイムラグもなくなり、情報活用の精度とスピードの向上も図れます。さらにトレーニングが必要ないため現場への導入や運用のハードルが非常に低くなり、システム部門の負荷も大幅に軽減できます」

Microsoft Dynamics 365は Excelからデータを直接取り込むことが可能。日々の業務を圧倒的に効率化する。
Microsoft Dynamics 365は Excelからデータを直接取り込むことが可能。日々の業務を圧倒的に効率化する。

スピード出店を支えるグローバルでの運用保守体制を実現

JINSは現在、日本342店舗、中国125店舗、北米4店舗、台湾20店舗、フィリピン1店舗で事業を展開している(2018年4月末)。2014年、グローバル業務基盤として Microsoft Dynamics 365(旧 Microsoft Dynamics AX ) を中国に導入。近年、中国における出店数が急増しているという。「2017年の実績で約30店舗を出店しています。Microsoft Dynamics 365をベースとするグローバル業務基盤の構築により、店舗が増えても PC さえあれば業務を行うことが可能です。ビジネスのスピードに IT インフラが追随できるようになりました」
2015年の北米出店、台湾出店では、PC-POS も含めて Microsoft Dynamics 365 を展開した。PC-POS のメリットについて「 POS 専用端末がなくてもレジ業務ができるため、すぐに店舗を開店できます。また導入コストはもとより新商品販売時などの POS 改修も簡単に対応できるため、店舗運用コストの大幅な低減が図れました」と澤田氏は話す。

JINS の海外店舗例(写真左が北米、写真右が台湾)。迅速な出店展開に Microsoft Dynamics 365 が貢献。

株式会社 日立ソリューションズ マニュファクチャリングイノベーション本部 グローバルSCMソリューション第1部 グループマネージャ 蓮本 晃 氏
株式会社
日立ソリューションズ
マニュファクチャリングイノベーション本部
グローバルSCMソリューション第1部
グループマネージャ
蓮本 晃

北米進出の際、グローバル展開が加速する中でシステム強化を図るべく導入・保守パートナーを変更したと澤田氏。少数精鋭でグローバル事業を支える IT経営改革室において、パートナー選びは IT 戦略の根幹に関わるものだ。
「 Microsoft Dynamics 365 に精通していることはもとより、展開先でのサポート体制の充実や SIer としての卓越した能力、そして海外での豊富な導入実績のもと当社の業務を熟知した上で解決策を提示できることが、パートナーとして日立ソリューションズを選択した理由です」
2016年、JINS の売上高で大きな割合を占める日本国内の既存 ERP を Microsoft Dynamics 365 で刷新し、グローバルでの業務基盤統一を果たした。サポート面について、日立ソリューションズ グローバルSCMソリューション第1部 グループマネージャ 蓮本晃氏はこう話す。
「稼働直後、当社のシステムエンジニアが数名常駐で対応し、その後は集中管理のメリットを活かし遠隔保守や、ロジスティクス面での機能拡張などを継続的に行っています」

運用コストが従来比で約8分の1に削減

Microsoft Dynamics 365 によるグローバル共通業務基盤の構築は、コスト面の効果も大きいと澤田氏は話す。国内の既存ERPをリプレースしたことで、IT 投資や外部委託費などを含めた運用コストが従来比で8分の1に削減できた。加えて運用保守の効率化にもつながっているという。「例えばアメリカで新規店舗の出店が相次いだ場合、そこにIT 要員を集めるといったコントロールがしやすくなりました。日立ソリューションズにはその点を非常にうまくコントロールしてもらっています」(澤田氏)。
澤田氏の話を引き継いで蓮本氏もこう話す。「各国で個別の要望もあるので、ローカライズはどうしても必要となります。どこまでローカライズを許し、どこから統合した仕組みにしていくのか、このバランスをとるのが重要です。遠隔サポートを行う一方で、現場とのコミュニケーションも大切にしています。日本国内ではユーザーの方から課題や改善点のお話を伺う機会を設けています。海外ではマネージャークラスの方と週一回電話会議をさせていただき、そこであがってきた改善点に関して優先度や難易度の高いものは、当社の日本チームで対応しています。日本チームが中心になって、共通化の推進と、本当に必要なところだけをローカルで行う運用・保守体制で JINS 様の海外進出を支えていきます」

現場の集中を加速し AI の活用により人にしかできない創造的な業務へ

現在 JINS では、国内外で100~150名のユーザーが Microsoft Dynamics 365 の販売管理、在庫管理、購買管理、管理会計・財務会計を利用している。現場の評価について澤田氏は「普段使っている Excel を使って簡単に Microsoft Dynamics 365 へデータを入力できます。二重入力といった無駄な業務をすることなく、本来すべき業務に集中できると好評です」と話す。
システムへの速やかなデータ反映により、現地の情報を容易かつリアルタイムに把握できるとし、澤田氏はこう続ける。「経営層に対しグローバル全体での売上を日次で報告しています。新店舗の開店やイベントの開催などでは売上の速報も出しています。また国内外を問わず個店ベースや品目ベースでリアルタイムな在庫情報を確認することが可能です。機会損失の回避とお客様サービス向上の両面を実現するためにeコマースのサイトにも在庫情報を表示しています」

無駄な作業を省き、業務の効率化をさらに進めるためには今後 AI の活用も重要なポイントになる。
「 AIを活用し、効果的な事業展開や在庫の最適化、店舗配分の最適化などにも取り組んでいきたいと思います。その際、ERP から過去のデータを取り出し AI で分析するまでの一連のプロセスを自動化する構想を描いています。AI の活用は、人が人にしかできない創造的な業務にシフトするという視点が大切です。マイクロソフトのクラウドサービス Microsoft Azure 上でAIを活用していくという選択肢も大いにあり得ます」
澤田氏はさらなる成長に向けた展望をそう語ってくれた。

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