
人口は世界4位の2億5871万人(2017年推計値)。東南アジア諸国連合(ASEAN)人口の4割を占めるインドネシアは、1万3000の島々から構成され、「多様性の中の統一」を国是とする世界最多のイスラム教徒人口を擁する、共和国である。民主主義、人道主義などの「建国5原則」の下、国家の発展に取り組んできた。
また石油、天然ガス、石炭などの豊かな天然資源と、毎年200万~300万人の就労人口増が続く豊富な労働力を背景に急速な経済成長を遂げ、2008年にはASEANで唯一、世界主要20カ国・地域(G20)入りを果たした。政治・外交面では、南シナ海問題を含む地域的課題にリーダーシップを発揮し、“ASEANの雄”としての存在感を示す。
日本は、そのインドネシアにとって最大のODA(政府開発援助)提供国であり(2016年度までの累計は5.5兆円超)、直接投資でもシンガポールに次ぐ第2位の投資国となっている(2018年)。

インドネシアでは、世帯年収5000~3万5000ドルの中間所得層が急激に増加している。2009年には人口の約30%、8000万人だった中間所得層は2020年には同70%超の1億9000万人になると予測されている。
この中で、日本にとってのインドネシアは、援助・開発協力の対象国から投資の対象国としての重みを増しつつある。労働力の安定的な供給とともに内需の拡大が期待できるため、自動車や電子・電機産業の製造拠点としての日系企業による進出はもちろんのこと、近年では小売業やサービス業といった非製造業の進出も増えている。
しかしながら、今後の持続可能な成長に向けては課題もある。
インドネシアの経済成長を期待する日本企業がインドネシアに改善を望む課題の一つがインフラの整備だ。インフラ整備は、2014年に大統領に就任したジョコ・ウィドド大統領が掲げる政策の大きな柱の一つでもある。
首都ジャカルタを含む都市圏は、工業団地が集積する「ジャボデタベック」と呼ばれる大都市圏を形成している。この地域では、港湾・空港―工業団地― 都市間の交通渋滞が慢性的に発生し、時間のロスを含む物流コストの重さが成長を阻害する要因となっている。
こうした状況を踏まえ、首都圏における渋滞の解消やインフラ不足の解消対策を目的として、円借款や国際協力機構(JICA)の技術協力の下、ジャワ島の重要物流拠点であるタンジュンプリオク港の機能強化、ジャカルタ下水道整備などのプロジェクトが実施されている。

一連のプロジェクト群の中でも、 2013年に着工したジャカルタ都市高速鉄道(MRT)事業に注目が集まっている。JICAインドネシア事務所長の山中晋一氏はその意義と進捗状況について、こう話す。
「世界最悪レベルのジャカルタの交通渋滞と大気汚染を改善すべく、市内中心部23.5kmを走る、インドネシア初の地下鉄となるMRT南北線の建設を支援している。現在、2019年3月の開業を目指して15.7km部分の仕上げ工事を行っている。工事中区間の契約パッケージの主契約者はすべて日本企業という“オールジャパン”による支援で、東西線約90kmについても、ジャカルタ特別州内の約32km部分について事業化に向けた調査を実施した」

また、最近、ジョコ大統領はインフラ開発の中でも、地方開発や海運業の育成にもつながる港湾開発に力を入れている。
地方開発の一例が経済特区(SEZ)政策だ。インドネシアはジャワ島にあるジャカルタ首都圏において経済発展が目覚ましいが、11の特区のうち10カ所は、ジャワ島以外の地域に設けられ開発が進んでいる。特に東部の北スマトラにあるセイ・マンケイは、世界一の生産量を誇るパームオイルの産業集積を図りつつ、将来の対ASEAN拠点としての可能性を視野に、工業団地とクアラタンジュン港の開発が進められている。
貨物量の増大に伴う港湾の容量不足も、早期の解決がまたれる課題だ。国際収支改善につながる輸出型産業を育成する上でも、デジタル経済成長の担い手であるEC(電子商取引)市場に対応した物流産業の育成や、インフラの整備が望まれる。
こうした背景から、円借款を活用して開発するジャカルタ首都圏東部のパティンバンに建設予定の新港に期待が集まっている。
JICAインドネシア事務所の山中所長は「年間コンテナ取扱量約750万TEU、完成車取扱量60万台となる国際新港建設を支援している。飽和状態のタンジュンプリオク港向け貨物の分散化を図り、製造拠点を新港近くに有する自動車メーカーなど600を超える日本企業の物流アクセス改善が期待される。2023年の開港を目指し、日本の建設会社による工事が始まっている」と話す。

インフラの整備には膨大な資金が必要となる。そこで、インドネシア政府は国家予算以外に、民間資金や官民パートナーシップ(PPP)方式を活用した資金調達、海外からの直接投資を促進している。円借款で実績のある日本からのインフラ投資には大きな期待が寄せられており、事例も増えている。
日本企業の強みはインフラ事業運営のノウハウ、災害対応力、そして、新興国支援を通じて構築した“クォリティー・インフラ”(インフラのライフサイクルコスト、環境などへの配慮、安全性確保という3大要素を確保した事業推進)の考え方を有する点にある。
クォリティー・インフラの導入には、人材や組織の高度化が欠かせない。人材育成やキャパシティー・ビルディング(能力強化・向上)の重要性について、インドネシアに理解を深めてもらう働きかけを日本は継続することになるだろう。
今後は、社会イノベーションを組み込んだ新産業の育成なども、日本とインドネシアの協力を発展させる上で重要になってくる。
インフラ整備と産業育成・雇用促進、地方開発を一本化した包括的な開発を実践しながら、両国の社会経済における協力関係を一層しなやかに発展させていく姿勢が求められている。