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日本・インドネシア国交60周年

2018年現在、インドネシアは、独立100周年に当たる2045年に向けた国家ビジョン「VISION 2045」を構想している。世界上位の高所得国となり、国民の繁栄とともに国際社会での役割を果たすことを掲げた内容だ。

2045年時点の世界的なトレンドを設定した上で自国の長期戦略を描いている。大きな柱は、①人材開発と科学技術力の振興、②持続可能な経済発展、③公平な開発、④強靭な国土づくりとガバナンスの強化、である。

これらはより細分化された項目に展開されている。公平な教育の浸透、科学技術振興、健康と生活の質の向上、労働市場改革、産業振興、海事研究、食の安全と農民の福祉、安全な水やエネルギーの確保、地方格差是正、インフラ整備、汚職追放――。内容は広範かつ多岐にわたる(下図参照)。

VISION2045 出所:インドネシア国家開発企画庁(BAPPENAS)提供「Indonesia VISION 2045」から作成
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インドネシアのVISION 2045に呼応する形で、日本側でも、2045年に向けた協力のあり方について両国の有識者が議論し、その成果を政策提言リポートやシンポジウムで発信していくプロジェクト「PROJECT 2045:For the Common Future of Indonesia and Japan」が今春スタートした。拠出は日本政府。国連開発計画(UNDP)の事業として、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)が事務局を担当する。

PROJECT 2045を日本側でリードする在インドネシア日本国大使館の石井正文大使はこう語る。

「国際社会の不確実性が高まる中で、普遍的価値を共有する、海洋国家かつ民主主義国家である日本とインドネシアとの連携は大変重要である。少子高齢化が加速する我が国と人口ボーナスの続くインドネシアは相互補完的な関係にあり、お互いにとって真にプラスとなるWin-Winな協力が可能と考える。2045年の日本とインドネシアの姿を予測し、両国がこれからも平和と繁栄を享受するため、どのような取り組みを一緒に進めるべきかを明らかにし、具体的なアクションにつなげていきたい」

2国間協力のパラダイム転換

石井大使が指摘した、「お互いにとって真にプラスとなるWin-Winの協力」とはどのような協力を指すのだろうか。

四半世紀余り先の2045年を見通すとき、世界経済におけるインドネシアの存在感は現在よりも格段に増している可能性が高い。コンサルティングファームの中には、インドネシアが世界の国内総生産(GDP)ランキングで4位に上昇すると予測する会社もある。

もちろん、経済の躍進が現時点で約束されているわけではない。VISION 2045で掲げた4つの柱は、インドネシアが大国となる上で避けて通れない課題との見方もできる。

科学技術を担う高等人材は不足しており、製造現場でも企業の要求に見合う能力を備えた人材が足りていない。前章で触れた都市の交通や電力供給などインフラ整備は不十分で、首都圏とそれ以外の地方との所得格差も解決が望まれる。法制度の透明性についても、海外からの投資を呼び込むためには改善が急務だ。

一方の日本は今後、世界でどの国も経験したことのない、少子高齢化・人口減少の時代に突入する。国立社会保障・人口問題研究所によると、2045年の日本の総人口は1億642万1000人(2017年度、中位推計)、総人口に占める65歳以上人口の比率は36.8%(同)と見込まれている。

日本は今後、課題先進国として、デジタル技術などを駆使したオープンイノベーションを取り込みながら、生産年齢人口の減少を含む人口構造変化に伴う諸課題の克服に挑む。変革領域は教育、産業、インフラ、医療、行政サービス、コミュニティーなどあらゆる分野に及ぶだろう。

日本の課題にインドネシアが協力

前章で見たように、これまでの日本とインドネシアの社会経済協力は、インドネシアに対して、先進国の日本が支援を行う形の協力が多くを占めた。

今後は、日本の課題解決にインドネシアが貢献する局面が増えるだろう。

例えば、日本では高齢化に伴い、看護・介護分野における需給のミスマッチが発生している。この中で経済産業省は、日本の介護人材が2035年に約79万人不足すると予測する。

日本は、インドネシアとの経済連携協定(EPA)に基づき、インドネシアから看護師候補者と介護福祉士候補者を受け入れている。これまでの経験を踏まえて制度改善を図った上で、受け入れを拡大すれば、需給ギャップの緩和に役立つとの期待がある。インドネシアでも医療ニーズの高まりに応じて看護人材などが不足している。日本で経験を積んだ人材は、帰国後は即戦力として医療や福祉の現場で活躍することができる。

政策提言書を11月に発行予定

また、両国が共通して直面している課題への取り組みも活発になることが期待される。その象徴と言えるのが、防災に関する協力である。

日本もインドネシアも火山の多い島国で、大地震や津波の被害を受け、災害の脅威にさらされている。互いの経験やデータを共有し、地震や津波の予知、防災の共同研究を進めることは有益だ。

地球温暖化に伴う気候変動への対応なども協力の視野に入る。いずれも日本とインドネシアに限らず、世界のどの国も抜本的な解決策を見いだせない、地球規模の課題である。両国が協力することで得られる知見は世界全体への貢献にもつながるだろう。

2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」は、国際社会のすべての国が取り組むべき普遍的な目標を定めている。すべての国民への医療サービスの提供、再生エネルギーの利用拡大、生物多様性の保護など、日本とインドネシアが国際社会の一員として果たすべき役割は多い。

PROJECT 2045では、両国の有識者が議論を重ね、今年11月には、協力のあり方についての政策提言書をERIAから発行予定である。日本またはインドネシアのどちらかの一方に有益な協力のプランに限らず、互いの国の持続的な発展を確かなものとし、結果的に国際社会全体が恩恵を享受できるような、意欲的な新しいパートナーシップの方向性が示されることを期待したい。

Special
Interview
「真の友」として協力関係の一層の進化を

二階俊博氏 衆議院議員、自由民主党幹事長、日本・インドネシア国会議員連盟会長

二階俊博氏
(写真:佐々木睦)

日本とインドネシアの国交60周年となる今年、両国の有識者が両国の関係の将来について自由闊達に議論し、提言を作成することは、非常に時宜を得た取り組みと考える。インドネシアの目覚ましい発展により、日本とインドネシアが、共通の未来に向けて、お互いのために、地域・国際社会のために一緒に何を協力すべきかを考える時代に移りつつある。

私が経済産業大臣を務めていた2006年、アジア通貨危機を乗り切ったASEANは、先を行く中国を追うべく、一層の統合促進に舵を切ろうとしていた。私は、東アジアが一体となって成長するための政策支援を行う国際機関が不可欠だと考え、「東アジア版OECD」としての東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)創立を提唱し、ASEAN10カ国、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドという各国からの強い支持をいただいた。

そのERIAがこの10年間で目覚ましく成長し、今回の「PROJECT 2045」で重要な役割を果たしていること、東アジアの国際機関として高く評価され、地域の発展に貢献されていることを大変うれしく思う。

「困ったときの友は真の友」という。日本とインドネシアもこの関係と同じだ。両国は2004年のスマトラ沖大地震、2011年の東日本大震災など困難な局面で互いを助け合ってきた。

今後、日本は少子高齢化が急速に進み、中小企業を中心とする事業や技術の継承が深刻な課題となる。インドネシアにおいては、膨大な若年人口の雇用や格差是正のため、さらなる投資・技術の受け入れ、人材育成、インフラ整備が必要となる。日本とインドネシアが将来に向けて解決すべき課題は他にもあるだろう。協力関係の一層の進化が、双方の課題解決の鍵となるはずである。(談)