医療ビッグデータ活用の「壁」とその「壊し方」~ 病院経営や医療現場の問題をどう解決する~

医療ビッグデータ活用の「壁」となる
データ構造の違い

株式会社 医用工学研究所 代表取締役社長 北岡 義国氏

 医療機関に蓄積されたビッグデータを柔軟に活用したいというニーズが増えている。その目的は、高度医療に向けた臨床研究の推進、地域包括ケアを支える診療情報の広範な共有、医療機関の健全経営を維持するための業務改善、施設基準の遵守など様々だ。

 少子高齢化が進む中、今後も医療環境や診療報酬制度などは大きく変化していくことが予想されるが、人手不足が顕在化している医療機関では、それを補うデジタルデータの活用が、医療の質向上と経営効率改善に欠かせない要素となってくる。

 だが現実には、「なかなかデータ活用が進まない」と頭を抱える医療機関も少なくない。そこにはどのような課題があるのか。医用工学研究所の北岡 義国氏は次のように指摘する。

 「病院の中では、電子カルテ、オーダリング、医事会計など、様々なシステムが稼働しています。診療や病院経営の実態を知ろうとすれば、これらのシステムを横断した統合的なデータ分析が必要となります。ですが電子カルテ1つをとっても開発ベンダーそれぞれにデータ形式が異なるため、院内やグループ、地域内でもデータ連携がうまく図れません。各種システムのデータの違いを読み解き、活用できるスキルを持つ人材が病院内には少ない現実も含めて、データ活用が遅々として進まない状況にあるのです」

 こうした“壁”を取り崩すためのソリューションが、医用工学研究所が開発した「医療データウェアハウス CLISTA!」である。三重大学大学院で医療情報工学を学んだ北岡氏が大学発ベンチャーとして立ち上げた同社は、医療DWHシステムや病院経営分析システムの開発・導入、それに付帯するコンサルティング等のサービスを行っている。

 「CLISTA!は、病院内に散在する、あらゆるシステムからデータを集約し、そのデータから自由自在に統計資料を出力したり分析したりできるシステムです。日々の診療データを数値化して“見える化”し、幅広い用途での効率的なデータ活用を支援します」(北岡氏)

組織横断の効率的なデータ活用を実現するCLISTA!

 いま電子カルテの開発ベンダーは国内約10社でシェアの90%を占めている。CLISTA!はそのすべてに対応実績があり、「接続できないケースはほぼない」と北岡氏は言う。

図1 CLISTA!の特長
図1 CLISTA!の特長
電子カルテや部門システムがどこのベンダーであっても、データ連携・取得が可能。将来的に電子カルテのベンダーを変更した際も、蓄積したデータを継続して活用できるメリットがある
(図はクリックで拡大表示できます)

 またオーダリングや医事会計、看護記録、病理検査、薬剤管理、手術、物流など、様々な部門システムとも柔軟に連携し、あらゆる院内データの統計・分析に対応する。このため電子カルテのベンダーを将来的に変更しても、過去に蓄積されたデータを継続的に活用できるメリットも生まれる(図1)。


図2 CLISTA!の統計画面のイメージ
図2 CLISTA!の統計画面のイメージ
平均在院日数統計、地区別来院患者統計、患者待時間統計、手術室利用統計、放射線や処方などのオーダー統計など、多様な視点での統計・指標を自動算出し、病院の経営管理をサポートする
(図はクリックで拡大表示できます)

 「電子カルテに蓄積された患者さん一人ひとりのデータは、長年の診療経過を示す貴重な情報です。また各種部門システムのデータを多様な視点で日/月/年次統計した情報は、病床稼働率や外来待ち時間の変化、診療報酬算定漏れや医療安全管理のチェック、原価計算などに生かすことができ、病院の経営管理に欠かせない指標となります。多様な医療データを可視化して、そこから得られた分析結果を次なるアクション、新たな価値へとつなげていくことがCLISTA!の重要な役割となります」と北岡氏は説明する(図2)。

 このように幅広い医療データの管理プラットフォームとなるCLISTA!は、既に100を超える国内医療機関で採用されている。例えば愛媛県の「HITO病院」では、輸血システムの実施入力記載の評価や、管理料・指導料などの算定漏れ防止に活用。「京都医療センター」では医療安全管理の推進に、また「豊橋市民病院」では各種医療システムの効率運用やコスト削減シミュレーション、来院から会計に至るまでの患者待ち時間調査などに活用し、それぞれ高い効果を上げている。

 なかでも統計報告資料の作成や各種指標のスピーディーな算出・分析はCLISTA!が得意とする業務だけに、現場職員にとって大きな負担となっていたノンコア業務が激減。労働時間の短縮と働き方改革にも貢献する業務改善効果を生み出しているという。

Dell EMCとの協業でDWHアプライアンスを開発

 さらに医用工学研究所ではCLISTA!を活用し、より簡便にデータ活用を行なえるアプライアンスの開発にも着手した。

 「年々増え続けるデータを柔軟にハンドリングしていくため、CLISTA!を活用した医療データ管理プラットフォームの構築には、トランザクション処理のパフォーマンスや拡張性、運用性などを考慮した緻密なインフラ設計が必要となります。しかし医療現場では、なるべくシンプルにシステム導入を図りたい、運用管理の工数を減らしたいというニーズが強い。そこで新たに、短期間で容易に導入できる『CLISTA! DWHアプライアンス』を提供することにしました」(北岡氏)

 同アプライアンスのインフラ基盤に採用されたのが、「Dell EMC Power Edge」(以下、Power Edge)である。パートナーにDell EMCを選んだ理由を、北岡氏は次のように説明する。

 「医療機関向けのシステムは、情報系といえども24時間365日のミッションクリティカル性が要求されます。そこにハードとソフトを一体化したアプライアンスとして提供する製品には、処理性能の高さだけでなく、ハードウエアとしての信頼性、万一の際のサポート体制がしっかりしていることが求められます。その点、Dell EMCのx86サーバーは出荷台数・出荷金額ともに世界一という評価が、優れた信頼性を裏付けていますし、国内のコールセンターやサポート拠点が全国280カ所に広がっていることも、幅広い医療機関のお客様の安心感を担保できると考えました」

 アプライアンス開発の構想は3年ほど前に始まったという。その後、CLISTA!の機能とパフォーマンスを最大化できるハードウエア選定が始まり、SQL Serverやネットワーク、管理ソフトも含めた信頼性と可用性、各種構成でのベンチマーク検証、障害時の切り分け体制などの検討を重ね、Dell EMCとの協業に踏み切ったと北岡氏は振り返る。

 「お客様には“いいものを安く買いたい”というニーズがあります。CLISTA!活用のインフラとして、適正な価格帯と高信頼性、安心できるサポート体制を追求していくと、自ずとPower Edgeに行き着いたのです。実際のリリースは2018年7月を予定しておりますが、このアプライアンスを導入していただくことで、複雑な導入設計や日々の運用管理に頭を悩ませることなく、シンプルかつ低コスト、スピーディーにCLISTA!活用をスタートしていただくことができます」(北岡氏)

 医用工学研究所とDell EMCの協業は、アプライアンス開発だけにとどまらない。『CLISTA! DWHアプライアンス』のリリース時にアドオン提供される「CLISTA!ベンチマークサービス」がその一例だ。同サービスは、様々な医療機関から匿名加工されたデータをクラウドに集約し、診療プロセスや材料費、人件費などの原価計算から病院間ベンチマークが行えるサービスである。Dell EMCのセキュアなクラウド環境とCLISTA!の機能を活用することで、自院だけでなく複数の医療施設を管理するグループ、地方自治体、地域医療圏などの中で自院のポジションと状況を把握でき、迅速な経営戦略立案と改善に向けたアクションを支援する。

 北岡氏はさらに、『CLISTA! DWHアプライアンス』を活用したオープンなエコシステム構想についても下記のように言及する。

 「われわれは今回のアプライアンスをCLISTA!に閉じたシステムにしようとは考えていません。データベース基盤の実装により、医療機関やベンダーが垣根を越え、他の事業者も巻き込みながら、膨大な医療情報を活用した新たなサービス開発などが行える、開かれたプラットフォームにしていきたいと考えているのです」

 イノベーティブなデータ活用で、病院経営の効率化と、質の高い医療の実現を目指す医用工学研究所の取り組みは、社会的にも意義の大きなチャレンジとなるはずだ。

※出典: IDC WW Quarterly Server Tracker 2017Q4 (Share by Company) - Unit and Revenue, product category: x86

プロフィール

株式会社 医用工学研究所

事業内容:医療用データウェアハウスシステムの立案・構築・導入、病院経営分析システムの開発および提供、コンサルティングサービスなど
所在地:三重県津市栄町3丁目141番地1 モアビル6階
創業:2004年12月14日
資本金:9,120万円
URL:https://www.meiz.co.jp/

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デル株式会社

URL:http://www.dell.co.jp