日経xTREND SPECIAL

メーカー特有の課題を解決できるのか/データで顧客理解を深化させるパナソニックの戦略 富岡広通氏×音部大輔氏

洗濯機やエアコン、電子レンジといった家電を購入する際の接点が、デジタルによって大きく変わろうとしている。これからの未来、データやデジタルテクノロジーの活用が不可欠となる。パナソニックはデータ活用でどこを目指し、何を実現しようとしているのか。音部大輔氏とパナソニックの富岡広通氏が語り合った。

スコアリングで測る人生の価値観
データが示す真の顧客心理とは

冨岡 氏
パナソニック株式会社 アプライアンス社
コンシューマーマーケティングジャパン本部
コミュニケーション部
エンゲージメントプランニング課
主務
富岡広通
学生起業を経て、デジタル×顧客接点を軸に、メーカーとベンダーを行き来した後、2012年よりパナソニックに参画。現在はマーケティング・CRM領域のデジタルトランスフォーメーション推進に従事する。

音部:パナソニックさんは、CDPを活用した態度変容スコアリングのデータから顧客の潜在価値観をひも解くことで、従来の年代・性別・年収などによらない、“人生の価値観”のようなものに立脚したセグメンテーションを行っているとお聞きしました。既存広告の約2倍の成果を出されたこともあるということですが、これは本当に素晴らしいことだと思います。この態度変容スコアリングを始めようと思われたきっかけを教えていただけますか?

富岡:まず前提として、我々メーカーは購買データを持てないがゆえに、カスタマージャーニーが見えにくいという課題があります。その中で、デジタルを活用することで、「限りなく購買データに近しい意義のあるデータを手に入れることができるのでは」と考えた末、行き着いたのが態度変容スコアリングです。スコアはどのIDのお客様がどの製品ページをどの程度読み込んでくれたのか、といったサイト回遊行動から算出しています。

 とはいえ、我々が手にできるデータは自社の商品サイト内のお客様のデータだけです。そもそも商品を購入していただいたお客様のうち、どれだけの人が商品サイトを見ているか、その全体像が見えないと、本来は説明できないはずなので、現在は商品サイト以外の外部のデジタル接点データの解析に注力をし始めています。

音部 氏
株式会社クー・マーケティング・カンパニー
代表取締役
音部大輔
P&Gジャパンに17年在籍し、資生堂ジャパンではCMOを務めるなど25年以上にわたりブランドマネジメントやマーケティング組織の構築に従事。2018年1月より現職。博士(経営学 神戸大学)。

音部:年間の販売台数と比較して、そのうちの何割の人が商品サイトを回遊していたかを把握する必要があるということですね。

富岡:その通りです。商品特性によって、商品サイトを見るか否かは、全く変わってくるんですよ。これもスコアリングをして分かったことなのですが、同じ大型家電の中でも、洗濯機の商品サイトは見られるのに、エアコンはほとんど見られません。洗濯機は他社製品と機能比較をするために商品サイトを見てもらえますが、エアコンは部屋の大きさに合ったサイズはどのサイズなのか? などしか気にならないのかもしれません。

音部:エアコンは自社の商品サイト以外のところで情報接触している可能性もゼロではないと思いますが、同じ大型家電の中でも差があるというのは興味深いですね。大型家電は頻繁に購買する商材ではありません。だからこそ顧客一人ひとりを理解し、訴求を研ぎ澄ますためにはスコアリングは有用な手段ですね。

 様々なジレンマを抱えながらも、データを活用することで顧客理解に活路を見いだそうと試みているパナソニック。次ページでは、具体的にどんなデータをどのように活用しているのか、パーセプションフロー・モデルの観点もまじえながら、さらに深掘りしていく。