Figmaを導入する以前はどのようにデザイン・開発が行われていたのか。佐竹氏は答えていう。

「以前はデザイン・開発を協力会社に外注していました。要件定義や画面の仕様などはテキストベースで行っていたため、上がってきたデザインにイメージとのギャップを感じることも。また、正式な決裁を経た決定版のドキュメントだけをやりとりしていたため、出し戻しに時間がかかります。開発期間が決まっているためキャッチボールの回数は限られ、100%満足のいく仕上がりでのリリースにならないこともありました」(佐竹氏)

UX/UI改善における中心メンバーの佐竹氏と永井氏

従来、銀行はジェネラリスト採用が中心であり、配属部署が変わるたびに必要な専門知識をインプットしていくことが通常だった。しかしデジタルが主戦場になりさまざまな業務での専門性が細分化されていく中で、専門職種の採用を決断。そのひとつがデザイナーであり、各プロダクト、特にデジタルにおけるデザインの重要性が行内で認知されてきた流れの中で、Figmaの導入がいよいよ必要だと感じたという。

「当行での導入以前から、外部のデザインファームの環境を借りる形でFigmaを使用した経験がありました。当時すでにFigmaはデザイナーの共通言語でしたので、何かきっかけがあったというよりは、当たり前のツールを当たり前に使えるようにした、というイメージです」(佐竹氏)

しかし、導入には高いハードルがあった。銀行という業種柄、新しいSaasを使用するためには厳しいセキュリティー要件をクリアせねばならず、そのチェック項目はざっと1000を上回ったという。

「ビジネスプランからスタートしたので、不明点は基本的に自分たちで調べて解決する必要がありました。当時はまだFigmaの日本法人がなかったので、本国に問合せをしたこともあります。これはなかなか骨が折れる作業でしたね。約4カ月をかけて無事にセキュリティーチェックをクリアし、2021年11月にFigmaの利用がスタートしました」(佐竹氏)

サービスをグロースする面白さを語る佐竹氏

アイデアを広げ、形にするFigJamは
メンバーのモチベーションにも好影響

Figmaを使ったデザイン・コミュニケーションについてどのようなメリットを感じているのか、デジタルマーケティング部 マーケティングプラットフォームチーム シニアデザイナー(UX)永井明範氏は説明する。

「私の仕事は、UXデザイナーとしてデザイン前の顧客体験、システムフィジビリティ、ビジネス要件をバランスよく見つつ、あるべきデザインを整理していくことです。Figmaの機能で特に便利に感じているのはFigJam。部内のデザイナーと、デザインのあり方やトレンドについて週に2回ほど議論する場を設けているのですが、そこでFigJamをホワイトボードのように使っています。パワーポイントを使うくらい簡単に操作でき、直感的に思考の整理ができるのが利点。この場がなければ生まれていないであろうプロジェクトもあり、アイデアを広げまとめていくという点で非常に役立っています」(永井氏)

証券会社でのディレクション経験を経て活躍する永井氏

「その点は私も同感です。今まではテキストベースでやりとりをする世界でしたので、すべてのことに結論やロジックを求めがちだったのですが、ビジュアルベースでのブレストがうまくできるようになったんです。まだあいまいな状態でアイデアを持ち寄り、それを具体的な形にしていけるので、結果的に案件の立ち上がりが高速化しました」(佐竹氏)

「従来のような会議で決めていく方法だと、ファシリテートする人が相当しっかり準備をする必要があったんじゃないでしょうか。リードメンバーが意見を吸い上げてまとめていたことがメンバー共同での作業になり、負担が軽減したのではと思います」(永井氏)

「会議では、発言できる人と、できない人に分かれてしまいがちですしね。そこを『とりあえずコメントをあげていい』という文化に変えることができたことは、メンバーのモチベーションにも影響していると思います。最近ではPMのメンバーでHCD-Netの人間中心設計スペシャリストの資格を取得した人もいて、デザインへの意識が部門全体で高まっていることを感じています」(佐竹氏)

「FigJamはタスク管理にも意外と役立っています。選択肢が多くない分、シンプルに使える点がいいですね。リモートワークとも相性が良いので、コロナ禍以降の働き方の多様化にもフィットしています」(永井氏)

コミュニケーションが効率化し
本質的な議論が深まる

現在はデザインツールとしてよりも、コミュニケーションツールとしてFigmaが重要な役割を担っていると語る佐竹氏。具体的にどのようなメリットを感じているのか。

「今までよりも、圧倒的に進行中のキャッチボールの回数が増えました。メールの往復だと数日かかっていたやりとりが短時間のミーティングで進んでいくため、デザイン制作のプロセスを合理化できたと感じています。限られた時間の中で本質的な議論を重ねられるようになり、プロダクト自体のクオリティを高めることにつながっています。また、メンバーとのコミュニケーションも密になりました。言葉でイメージを共有していても、ビジュアルに落とし込むとちょっとずつズレる部分が出てくるものです。一緒にデザインを見ながら議論し、修正できるのがとてもいいですね。『/』でコメントが打てる機能は、その場で会話している感じがするので、気に入って使っています」(佐竹氏)

「確かに、カジュアルにコメントできるのがいいですよね。『お疲れ様です』といった前段が必要ないので、チャットよりもスピーディに、フランクに会話できている気がします。タイマー機能で音楽が流れるのも好きです。リアルタイムで共同編集できたり、コミュニケーションがしやすかったり、簡単な操作で便利に使えるのが気持ちいいです」(永井氏)

「今Figmaを使っている中には、各サービスを担当している別の部署のメンバーもいるのですが、普段デザインツールに馴染みのない人でもわずかなサポートでオンボードできるツールだと感じています。もう1点、バージョン管理がしやすくなったことも大きなメリットです。Figmaはフレームを上下、左右に並べて別案を残しておけるので、変化の経緯を追うことができます。見当が長くなって堂々巡りになったとき、『何でこうなったんだっけ?』と遡って確認しやすいので、そのあたりの管理コストがぐっと下がったと感じています」(佐竹氏)

「確かに、アイデアを広げやすいFigmaならではのポイントですよね。一方で、無限に広げすぎると雑になってくる部分があるのも事実。必要に応じてワンスライドでどうメッセージを詰め込むかといった、集約と拡散、両方の視点を常に持つことが大切です」(永井氏)

Figmaを他部門にも展開し
デザインのすそ野を広げる

みずほ銀行にデザインという新たな文化を根付かせている両氏。これからの展望について聞いた。

「やはり、これからは行内のさまざまなプロジェクトで横断的にFigmaを展開したいですね。すでに新規事業やリニューアル関係でいくつかのプロジェクトにデザイナーがアサインされています。今後はデザイナーの数をもっと増やし、広がりをつくっていきたいです」(永井氏)

「Figmaはデザイナーでないと、そのよさはピンとこないかもしれません。しかし、使ってみると世界が変わります。導入にはハードルもありましたが、結果的にこれからの時代に必要不可欠なツールだったといえます。『みずほダイレクト』のリニューアル後、『使い勝手がとてもよくなった』という声が多く聞こえてきており、デザインの重要性はますます認知されてくるでしょう。今後は行内のプロダクトに広くデザインシステムを浸透させ、どの部門でもそれを活用する文化を醸成していければと思います」(佐竹氏)

お問い合わせ

Figma Japan

WEBサイトはこちら