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導入500件超のオープンクリーンルーム

村川 勉
興研株式会社 代表取締役社長

従来のクリーンルームの常識を覆すオープンクリーンシステム「KOACH(コーチ)」。先端クリーンテクノロジーを研究する興研が開発した新技術です。すでに多様な業種に広がり、500件を超えるユーザーで採用され、コラボレーションによって新たな価値も生み出しています。クリーンデバイスの概念を変えるKOACHの革新性について、興研の村川勉社長が、大阪大学・神戸大学名誉教授で工学博士の岩田一明氏に伺いました。

大幅な伸び率の導入件数

岩田一明 大阪大学・神戸大学名誉教授
いわた・かずあき 専門は生産システム学・生産工学。米国ウィスコンシン州立大学リサーチ・アソシエイトなどを経て、1969年神戸大学教授に。その後、大阪大学に移り、通算33年間にわたる大学在職後、第6代国立高知工学高等専門学校長に就任。退官後は国際高等研究所でフェローやプロジェクト研究代表者などを歴任。

岩田 初めてオープンクリーンシステム「KOACH」について知ったとき、従来のクリーンルームの常識が覆されるかもしれないと直感しました。「オープンな空間に短時間でクリーンゾーンを作り出す」と聞いたからです。

 すぐに御社のスーパークリーンテクニカルセンター(埼玉県狭山市)に伺い、実際に稼働する装置を見て、村川社長や技術員の方々にたくさんの質問をしましたね。そのとき、御社の独自技術の融合で、常識を超えた新技術が生まれたと知りました。

村川 当社は防塵・防毒マスクが主力事業です。一方で、マスクを使わない環境をつくるための「プッシュプル型換気装置」についても30年以上、研究を続けています。この換気装置の気流技術を応用し、さらにマスクで培った高性能フィルターを搭載したのがKOACHです。

 ところがこの新技術は、すぐにはご理解いただけませんでした。広く認知される一つのきっかけとなったのが、政府が表彰する「第6回ものづくり日本大賞」(2015年)の製品・技術開発部門で、最高賞である内閣総理大臣賞を受賞したことでした。これによって販売の引き合いが増え、近年は毎年40〜50%の伸び率で導入件数が増えています(図)。我慢の時期を越え、伸びのカーブに入ってきました。

岩田 新しい技術が市場に受け入れられるまでには時間がかかります。その代わり、その技術がひとたび認知されれば、ほかに競合技術がないだけにブルーオーシャンが開けるのでしょう。

多分野で活用され高い評価

KOACH導入実績の推移
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岩田 これまでのクリーンルームは、まず密閉された強固な建屋を造り、その閉鎖された空間で24時間連続運用する必要がありました。

 それに比べてKOACHが優れている点は、作業に合わせて清浄化する範囲を自由に設定でき、さらに、装置がコンパクトで設置場所の自由度が高いため、製造現場に柔軟に対応できる点です。

 また、世界最高レベルの「ISOクラス1」のスーパークリーン環境をわずか数分で実現する能力に加え、24時間連続稼働させ続ける必要がないので経済面でも優位性があるのではないでしょうか。

村川 ご指摘のとおりで、島根富士通様(島根県出雲市)などの製造業の分野では、製品のモデルチェンジの頻度が高く、工場の生産工程のレイアウト変更も頻繁に必要となります。KOACHの拡張・縮小、レイアウト変更への対応力は高く評価されています。

製造インフラの大変革

岩田 世の中では固定電話から携帯電話やスマートフォンへ変わったように、小型化、高性能化が進んでいますが、まさにKOACHもその流れの中にあると思います。

 クリーンな空間をいつでも、どこでも、誰でもつくり出せる。これは製造インフラの大変革です。クリーンな空間をつくることが不可能だと思われていたところにも適用可能になったのです。

村川 これまではクリーンルームといえば半導体や精密機械業界のイメージがありました。

 しかし、KOACHという新たな可能性を提供できたことで、たとえば酒造メーカーや産婦人科など、我々が思いもしなかった業種にまで、企業の規模の大小を問わず、導入が広がっています。

 不妊治療に取り組む滋賀県の木下孝一医師のクリニックでは、KOACHを使った清浄度の高い空間で大切な卵子を管理することで、患者様に安心感を持っていただいていると伺っています。

岩田 今までにない技術で不可能が可能になることによって、新たな市場の新たなニーズに対応できるようになったのですね。

コラボで新たな価値を生む

岩田 新たな可能性は、多様な業種との協業でも生まれていると思います。いままで気づかなかった要望が顕在化し、新たな適用分野が広がっているのではないでしょうか。

村川 KOACHの機能に注目していただいたお客さまとの様々なコラボレーションの動きがあります。たとえば産業用ロボットメーカーのファナック様からは、「クリーンな環境で射出成形(プラスチックなどの加工法)をしたい」という要望がありました。

 また、化成品メーカーのオカモト様のゴム手袋の製造・梱包環境をKOACHでスーパークリーン化したことで、いままでにない超低発塵のクリーンルーム用手袋が誕生しました。

 産学協同の分野では、東北大学が研究を進める「ナノインプリント」という新しい半導体製造技術の装置にKOACHを組み込むための研究・開発に協力しています。これが実現すれば、クリーンルームなしで半導体の製造が可能になります。

 このように、一緒に問題解決していくことで、Win-Winの関係で新たなマーケットを作り出す動きが進んでいます。まだまだ新しい使われ方が生まれる可能性があり、将来が楽しみです。

「クリーン度」の新概念

岩田 新たな価値を考えるとき、御社が提唱する「アクチュアルクリーン」という概念は極めて重要だと思います。これは「清浄度を必要とする場所で作業中も清浄度を維持すること」という定義で、実際に作業している時のその場所のクリーン度を重視するアプローチですね。既存の規格では計測が困難であった新しい視点です。

村川 これまでは部屋全体がクリーンかどうかを評価してきました。しかし、実際の作業現場においては、作業中のクリーン度がいかに保たれているかが大事です。

 多くの人に「アクチュアルクリーン」というアプローチの正しさに気づいていただくことで、それがスタンダードになっていくと信じています。

不可能が可能に――― KOACHで夢をかなえる

生産工程のカイゼンに欠かせない存在
株式会社島根富士通
代表取締役社長
神門 明 様

 富士通グループのパソコン生産拠点として、主力の「出雲モデル」などを製造していますが、生産拠点を海外に移さず、日本で生産を続けているのは理由があります。

 もちろん、単純に製造コストを抑えて価格競争力を高めるには、労働力が安い海外で製造することが有効です。しかし、ただ安く作るだけでは競争力を維持することはできません。

 大量生産・大量消費の時代は終わり、多様な要望に合わせた製品が必要とされる現状では、日々の変化に対応できる「ものづくり体制」でなければ、競争に打ち勝つことはできません。そのため、常に生産工程のカイゼンに取り組むことで、製造機器の一台一台をカスタマイズさせながら、コストを抑えた生産方式を構築しているのです(マスカスタマイゼーション)。

 これは一朝一夕でできるものではなく、常に変化した結果です。カイゼンを積み重ねるために、最もふさわしいクリーンデバイスがKOACHでした。

 従来のクリーンデバイスでは、一度設置すると、移設や拡張・縮小に多大なコストと時間がかかるため、製造現場のカイゼンに合わせて変化させることは困難でした。KOACHはこれまでのデバイスと異なり、設置や移設が容易なため、製造現場の変化にすぐに対応させることができます。

 また、消費電力が少なく、非常に短時間で「クリーン状態」にすることが可能です。24時間稼働させなければならない従来のクリーンルームは、経営者にとってランニングコストが大きなリスクでしたが、KOACHは使いたい時だけ稼働させればよいので、こうした不安が解消されました。

 現在、様々なタイプのKOACHを使用していますが、時々刻々と変化する製造現場の状況に対応できています。

 生産効率を上げるためには設備投資が必要不可欠です。ですが、ものづくりの現場は取り巻く環境が日々変化しており、その変化に対応できる設備投資でなければ、すぐに風化してしまいます。様々な変化に対応できるKOACHは、私たちのものづくりに欠かせない存在になっています。

次世代の半導体製造技術にイノベーション
東北大学
多元物質科学研究所教授
中川 勝 様

 私は、ナノインプリント製造技術という次世代の半導体製造技術を始めとする、一桁ナノメートル(1ミリの百万分の一)サイズの製造を可能にする未来技術の研究を進めています。

 この製造技術は、これまで不可能だった原子レベルの正確さでナノレベルの成形が可能であり、しかも、まるで印刷するように鋳型を用いた繰返し成形を実現できる技術です。この新しい製造方法が確立されれば、将来のIoTやAI社会を支える、従来よりも高性能な半導体回路や記録メモリを、コスト高騰を抑えながら製造できるようになります。

 半導体製造では、最先端フォトリソグラフィで必要な縮小投影露光装置や巨大クリーンルームなどの設備投資が必要ですが、小スペース化により少額の投資でナノレベルの製造が実現できるようになるのです。

 夢のような技術ですが、課題がいくつかあります。その重大課題の一つが、製造時の異物混入(コンタミネーション)です。

 ナノインプリント製造技術は、ナノレベルの微細な成形パターンを作り出すので、異物の混入は厳禁です。微細な粒子が一つでも入ってしまえば、繰返し利用できる鋳型を破壊する原因になり、結果として製造コスト低減化のメリットを失ってしまいます。国際基準(ISO)でも100ナノメートル(1ミリの一万分の一)の粒子数でしか、製造環境のクリーン度を規定していないので、特別な対策が不可欠です。

 大学の研究室で困り果てているときに出合ったのがKOACHでした。卓上に置くだけで、世界最高レベルのISOクラス1の清浄度環境を簡単に作り出し、さらに一桁ナノレベルのコンタミネーションを抑制できると知った時の驚きは、今でも忘れません。

 現在は、ナノインプリント製造装置にKOACHを組み込むことで、クリーンルームの設備がなくても大学の実験室でナノサイズの成形加工ができる装置を研究・開発しています。半導体業界だけでなく、一般的なものづくり企業にも応用できる製造機器やそのプロセスの研究を進めており、KOACHは私の研究に欠かせない必須アイテムです。

最高レベルの清浄度で治療の不安解消
医師
木下 孝一 様

 私は産婦人科医として10年以上、不妊治療に取り組んできました。

 現在の日本では、ライフスタイルの多様化などにより、以前よりも高齢の出産を望む人が多くなっています。それに伴って、不妊に悩む人も増え、国内の不妊治療の実施件数は年々増加する傾向にあります。

 治療による妊娠率を高めるためには、よりよい環境で治療を行うことが重要です。しかし、不妊治療においては、こうした技術面や環境面だけでなく、患者様の不安を取り除くことが特に重要であると考えています。

 今まで数多くの患者様と接してきましたが、患者様は治療に取り組むことに対して、非常に大きな不安を感じています。特に、体内から卵子と精子を取り出し、顕微鏡などを使って受精させる「体外受精」は、高い妊娠率を実現する一方で、専門性が高い治療法のため、患者様にとってわからないことが多く、不安を抱える人が大勢いらっしゃいます。

 そのため、私は一人ひとりの患者様にこれからどのような治療を受けるのか、しっかり理解していただけるよう、丁寧に説明することを心がけています。

 例えば、自分の体内から取り出した卵子がどのような状態にあるか、実際の施術の状況や衛生管理など、患者様が見たいとおっしゃることは何でも見ていただくようにしています。

 その点で、クリニックの培養室に設置しているKOACHは、開放的で内部が見渡せるため、私が求めていたクリーンルームそのものです。  また、KOACHの清浄度はISO規格の最高レベルである「ISOクラス1」*。世界で最も高い清浄度で、患者様の大切な卵子をお預かりしていることを知っていただき、不安を少しでも取り除くことができればと思っています。

 医療の分野はどうしても専門性が高くなるため、患者様にすべてを理解していただくことは困難かもしれません。ですが、医療に携わる者として、常に患者様と向き合い、納得いくまで説明したうえで、考えられる最良の治療を提供したいと考えています。

*ISOクラス1=体積1立方メートルに含まれる0.1マイクロメートルの粒子数が10個以下
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