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わが社が誇る凄いワザ~精密小物プレス試作

試作はものづくり初期段階の重要な工程だが、メーカーは設計や評価により多くの時間をかけるために試作をできるだけ早く終わらせたいのが本音だ。こうしたニーズに応えて、精密小物プレス部品の試作を中心に「早くて品質の高い」コンビニのような試作サービスを提供しているのがクロダ精機だ。年間350日稼働によるスピード試作に加え、量産展開時を見据えた課題抽出も同時に行う点が高く評価され、顧客の信頼を獲得している。


 「できれば今日中に試作品を作ってくれないか」。クロダ精機には時にそういう注文が舞い込むこともあるという。試作は設計の妥当性確認と同時に、性能評価用のサンプルとなるため、試作とはいえ精度の妥協は許されない。正確な評価のために量産以上の高い精度が求められることもある。しかし往々にして設計作業は予定より長引き、その後の試作工程にしわ寄せが来てしまいがちだ。しかもメーカーは設計した製品の実物をいち早くテストやプレゼンに使いたいため、一刻も早い試作部品の納品を望んでいる。

佐々木俊一氏
クロダ精機 代表取締役社長

 そんな「超短納期」「精度の高い」試作品を望む顧客ニーズに、クロダ精機は応えている。もともと農業機械や電子機器部品の量産工場として精密プレス加工の事業を始めた同社だが、1980年代末から試作を開始、2000年代初めには完全に試作事業に特化した。現在は自動車・電子機器・医療機器など、さまざまな分野に向けた精密小物プレス部品の試作サービスを展開している。2013年には品質認証「JISQ 9100」を取得し、品質の一段の向上を図るとともに、航空宇宙関連部品の小ロット生産も行っている。

 「形状がそれほど難しくない場合には、午前中に図面を受け取り、当日中に試作品を出荷することも可能です」と佐々木俊一代表取締役社長は語る。精密小物プレス部品でこうした超短納期を実現できる最大の理由が、工場の年間350日稼働という「コンビニ」ライクな試作体制と、いつ注文を受けてもこなせる技術者の「層の厚さ」だ。

百戦錬磨の試作で培ったノウハウ

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クロダ精機による試作サンプル。精密小物プレス部品を中心に自動車や電子機器、医療機器の部品のほか、
航空宇宙分野を見据えた展開も始めている

 クロダ精機では、受注から加工まで1人の技術者が1つの案件に責任を持つ形で担当するので、途中で作業が滞ることなく、顧客が求める超短納期に応えられる。だが、そのためには加工だけでなく前後の工程にも精通した技術者を、年間350日配することができるほど数多く擁する必要がある。プレスやレーザー加工、ワイヤーカットなど複数の加工方法にも通じて使い分けられる技術者でなくては、注文内容に最適な加工を選ぶことができない。同社では公的な技能検定の取得を制度的に推奨するなど、積極的に技術者の多能工化を図っている。「現場で身につけた技能を検定取得のプロセスで習得した材料や加工方法などの知見と組み合わせることで、お客様の設計意図を素早くくみ取って加工に反映できるようになります」と、自身が社内の資格取得第1号でもある佐々木社長はその効果を語る。

 量産と違い、試作は毎回加工の内容が異なる。同社は30年以上にわたり多種多様な分野の精密プレス試作を経験しており、積み重ねたノウハウが豊富だ。材料もアルミ、ステンレスをはじめ、さまざまな金属を守備範囲にしており、パーマロイ、ニッケル、チタンなどの高機能難加工材のプレス加工経験も蓄積している。また、メッキの剥離の起きやすいメッキ付き材料のワイヤーカットなども独自の知見を持っているという。

 こうした高い加工技術とノウハウをもとに、精密プレス加工に必要な金型や治工具も自社で生産できるため、外注先のスケジュールに左右されることもない。加工に使用する素材も適切な在庫量を常時確保することで、注文にすぐ対応できるようにしているほか、見積もり依頼には4時間以内の回答を目標とした体制を取っている。それらも短納期化を実現できるゆえんだ。

年間350日稼働で短納期での試作が可能なクロダ精機の工場。工場板金技能士(1級9人)のほか、
放電加工技能士や金属プレス加工技能士など技能検定合格者の名前が柔道場の有段者の名札のように並ぶ

量産経験を生かした先手の提案

 クロダ精機では、精密プレス加工を中核に樹脂インサート成形によるユニット化試作やモーター積層コアといった機能部品の試作、協力ネットワークを生かした表面処理、熱処理など二次加工の一貫対応も行う。豊富なノウハウは試作メーカーの領域を超えたサービスも可能にしている。

 例えば、同社が受ける注文の中には、試作は可能なものの、量産に展開することは形状的に困難と思われる図面もまれに含まれる。また、公差が必要以上に厳し過ぎ、量産時にコスト増をもたらしかねない設計もあるという。その場合、テクニカルサポートと称して「設計図面について作り手の立場から検証して、お客様に最適化への提案などを行っています」(佐々木氏)。

 試作で検証を終えた後、量産に展開する時点で問題が発覚した場合には大きな手戻りとなってしまう。問題を試作段階で発見すると同時に改善策を見つけることに、量産工場時代の経験が大きく生きている。同社では、もらった図面からモノを試作して提供するだけでなく、モノが量産を経て市場に出るときまでを見据えた「ものづくりの提案」を行っているのだ。

 「開発のニーズを満足いただける試作部品として体現できるよう、現場の技能者も技術展示会に参加させるなど、日々お客様とのコミュニケーション力を磨いています。展示会で当社ブースを見かけたら、ぜひ気軽にお声がけください」(佐々木氏)

 同社がモデルとするコンビニは、「いつでも開いている」という営業時間だけでなく、さまざまな新たなサービスを取り込むことで進化を続けている。年間350日稼働で「いつでも頼める」だけでなく、ものづくりのワークフローの中で「チェックポイント」の役割を取り込んでいる同社は、その進化の形態も含めてコンビニのモデルをものづくりの世界で体現しているといえよう。

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