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先進企業を支える山口の異能企業

山口県は、輸送装置機械産業や素材産業などで、世界をリードする多くの企業が拠点を置く日本有数の工業集積地である。大企業のサプライチェーンを支える中小企業の裾野も広く、最先端のニーズに応える尖った技術を保有するところが多い。独自性の高い技術を強みに、世界を舞台に活躍する企業も少なくない。近年では、航空宇宙関連の産業を育成すべく、様々なバックアップを行っており、この分野での企業も育ってきた。山口県の企業が保有するキラリと光る技術を紹介する。

山口の異能企業 File.1 株式会社 ひびき精機
難加工材の薄肉精密切削加工技術
加工難度が高いほど違い際立つ切削加工技術の極み

最先端の科学技術分野には、頭抜けて高難易度の切削加工が求められる工業製品がたくさんある。半導体製造装置で用いる真空チャンバーはその代表例だ。チャンバー内を高い真空度に保つため、ミクロンレベルの平面度が求められる。また、ロケットや人工衛星などの部品では、特殊材料へのギリギリの薄肉精密加工が求められる。ロケットでの打ち上げコストは高額であり、一つひとつの部品を、要求仕様を満たしながら最大限まで軽量化し、コストダウンを図る必要があるからだ。

 こうした技術的な要求が高い顧客に応えられる加工企業は少ない。複合精密切削加工の専業企業であるひびき精機は、最先端の旋盤とマシニングによる薄肉精密切削加工の精度ではどこにも負けない自信を持つ企業である。同社は、半導体製造装置メーカーや国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)など、高水準の加工要求を持つ顧客を全国から集めている。また、複合旋盤加工機、5軸マシニングセンタ、立体形状曲面計測が可能な3次元測定機など最新鋭の機械設備を備えている。そして、これらの設備を手足のように駆使して難加工をこなす人材を数多く育成している。

 2013年には航空宇宙分野向け品質マネジメント国際規格JISQ9100の認証を取得し、航空宇宙、発電エネルギー、医療などへと加工領域を拡大。航空宇宙分野では、アルミへの0.1mm薄肉ハニカム加工のような薄肉精密切削加工のほか、インコネル718のブレードカットなど耐熱合金の加工実績を豊富に蓄積している。

http://www.hibikiseiki.com/

山口の異能企業 File.2 株式会社 松田鉄工所
密閉性の高い容器を作る精密溶接技術
人手ではできない精密溶接を独自の自動溶接システムで実現

化学、医療、薬品などの分野の生産プラントでは、水分を嫌う(禁水性)液体を扱う場合がある。2次電池の電解液などがその代表例だ。そうした扱いにくい液体を保管、出荷する際には、それを入れる容器の内面環境にまで細心の注意を払う必要がある。液体を運ぶ金属容器は、溶接で作られることが多い。しかし、一般的な人手による溶接で容器を作ると、溶接の裏波が均一にならない。これは、素材の内部まで完全に接合できていないことを示しており、接合が不十分な場所で、液が溜まったり、腐食が発生したりする可能性がある。

 松田鉄工所は、自動溶接システムを独自開発し、均一な溶接品質が得られる精密溶接技術を確立した。同社の精密溶接技術を使って、大手化学メーカーと共同開発した特殊容器では、禁水性、耐食性、気密性の向上が実現したほか、洗浄・乾燥効率も高めることもできた。開発した自動溶接システムは、同社の機械加工のノウハウを生かした全く独自のもの。一般の自動溶接機では対応できない口径や接続箇所の溶接ができる点が特長である。溶接時の電流や速度など、人手による溶接向けの加工条件を一から見直し、自動溶接システム向けの加工条件を見つけ出して精密溶接を可能にしている。

 同社は、この技術を用いた精密溶接サービスを提供している。様々な径の配管や継ぎ手、さらには条件の最適化が難しい球体の溶接も可能である。人手による溶接に比べて、加工品質は高レベルで安定する。

http://www.matsudatekko.co.jp/

山口の異能企業 File.3 株式会社 YOODS
3次元計測カメラ「YCAM3D」
ロボットハンドの眼となり、人手頼りだった作業を自動化

工場の中には、人手に頼っている作業がたくさん残されている。複雑で高度な作業ならば、人手で行うのも納得できる。しかし、単純な作業でありながら、機械化が困難な作業もある。自動車や電子機器、家電製品の組み立てラインで、必要な部品をあらかじめまとめておくキッティングもそうした作業の1つである。YOODSは、工場の生産ライン中で、ワークの3次元形状を認識する3次元計測カメラ「YCAM3D」を開発し、製品化した。単純だが機械化が困難だった作業を自動化する、ロボットの眼となるシステムである。

 YCAM3Dは、立体視が可能なステレオカメラとプロジェクタを一体化させたものだ。ワークに認識時の目印になるパターンを投影し、それをカメラで読み取り、ワークの位置や3次元形状を特定する。ロボットでピックアップする部品の3D CADデータと取得したデータを比較することで、雑多に置かれた多数の部品の中から所定のワークを見つけ出すことが可能だ。

 YCAM3Dの最大の特長は、112mm(W)×65mm(H)×104mm(D)、830gと小型・軽量、ロボットアーム搭載用のため耐振動・耐衝撃性に優れ、しかも低価格であること。これらの特長から、ロボットハンド上に搭載し、対象物に近づいて少ない情報量で高精度にワークの位置を知ることができる。計測精度は0.1mm(□400mmの視野)と高く、認識時間は1秒程度(ワークや計測条件による)と速い。今後人手に頼る作業の自動化に向けて、広く活用できることだろう。

http://www.yoods.co.jp/

山口の異能企業 File.4 株式会社 伸和精工
FRP部品の3Dプリント受託サービス
3Dプリント+精密切削でFRP素材の複雑形状部品を実現

強さと軽さを兼ね備えた素材として、航空宇宙分野での利用が広がっている繊維強化プラスチック(FRP)。強化樹脂に炭素繊維やグラスファイバーを添加したこの素材は、使う時には比類ない有用な特性を示すものの、加工難易度の高さもピカいちである。切断や切削加工が困難なため、一般的にはワークの型を作り、そこに材料を流し込んで成形している。ただし、この方法では複雑な形状の部品を成形することが困難である。

 伸和精工は、3Dプリント技術と精密切削加工技術を組み合わせた、FRPによる複雑形状の部品加工サービスを提供している。3Dプリントで0.1mmオーダーの精度で造形した複合材を、半導体・医療分野で実績がある金属切削技術によって0.01mmオーダーの精度で追加工して仕上げる。同社は、航空宇宙分野の品質規格であるAS9100を取得しており、極めて高品質な加工が可能だ。素材としてFRPを活用することで、金属材料では実現不可能だった極めて軽量の部品を実現できる。

 複雑な形状を一体成型できるため、機械構造の単純化が可能であり、新たな発想からの構造を生み出すことも可能になる。また、一般的な樹脂による3Dプリント部品では困難だった150℃までの耐熱性とアルミと同等の耐摩耗性も実現する。最大、250mm×330mm×200mmまでの部品を加工可能である。1個から受注し、部品のCADデータから迅速に部品造形できるため、短期での納品が可能だ。

https://shinwa-seikou.jp/

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    やまぐち産業振興財団は、山口県内の産業振興を目指して、産業技術の高度化、中小企業などの育成、さらには日本全国、世界の企業間をつなぐ役割を担っています。豊富な技術的知見を持つ職員が、開発や設計で抱える課題を解決できるものづくり企業を探し出し、紹介いたします。また、新事業創出を目的としたプロジェクト単位での開発支援も実施しております。