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BIM/CIMの活用で土木業界をけん引

総合建設コンサルタントのパシフィックコンサルタンツと、3次元CADの「V-nasClair(ヴィーナスクレア)」などが好調な川田テクノシステムの2社が新しい取り組みに挑んでいる。分野を超えた協働により、国が推進するBIM/CIMやi-Constructionの普及にもつながるような3次元活用の新領域を開拓する。

――最近、3次元CADが好調に実績を伸ばしていると聞きます。その背景と近況を教えてください。

山野当社では長い間、「用途をIT化」した製品を開発してきました。「橋梁設計用ソフト」や「道路設計用ソフト」といった、特定の用途に照準を合わせて製品をつくっていたのです。しかし、そうした事業のやり方は、公共投資の動向に大きく左右される難しさがありました。そこで12、13年前に「ITの用途化」への転換を図り、3次元CAD「V-nasClair」、モデリング専用ソフト「Kitシリーズ」、さらには、情報共有システム「basepage(ベースページ)」を開発しました。

 「V-nasClair」は3次元を超えた「n次元CAD」をコンセプトに掲げ、様々な属性情報を自動的に付与することでITの用途化を目指したものです。

 3次元道路設計システムをリリースした当初は、3次元地形上でダイレクトに設計を行う発想が受け入れられませんでしたが、国が推進するBIM/CIMやi-Constructionの流れに乗り、「分かりやすくて使いやすい、しかも早い」と好評を得て、最近は順調に実績を伸ばしています。

藤井「V-nasClair」が実績を伸ばしている背景には、確かにそうした動きがあると思います。現在、実際に発注される全ての業務で3次元CADの使用が義務付けられているわけではありませんが、ここ数年、各コンサルタントは、説明責任や、プレゼンテーションを含めたより分かりやすい説明方法を重視しています。そのなかで3次元CADを活用する意義が認識されてきたのだと思います。

――両社の取り組みの経緯をお聞かせください。

藤井当社には、本来あるべきBIM/CIMの姿を一緒につくっていくパートナーが必要でした。BIM/CIMというのは、単なる3次元CADの話ではなく、それをベースに、設計・施工・維持管理に至る一貫した仕組みをつくりたいと。その思いが川田テクノシステムさんの目指す方向と合致しており、声を掛けさせていただきました。

山野当社としても、パシフィックコンサルタンツさんが目指すような仕組みを単独でつくるのは不可能です。そこで、ぜひ、ご一緒したいと思いました。3次元CADは将来性が高く、設計業務を一変する可能性を秘めていますから、活用できる領域を広げていきたいですね。

抜群のモデリング機能による設計の自動化も

――今後、どのような成果を打ち出すことになりそうですか。

藤井例えば、私たちとしては、3次元CADを生かして計画・設計の自動化につなげたいと。大げさですが分かりやすいイメージとしては、橋梁予備設計において、ボタン1つで各種橋梁形式の工数や工事費などが出てくるといったものです。少なくとも概略検討段階では可能だろうと考えています。

山野それができるようになると、次は詳細設計にも持っていけます。道路の例で言えば、3次元で道路を設計して、自動的に擁壁なども配置する。地盤情報などの製品群とも連動させると、任意の断面でスパッと切るだけで、擁壁の安定計算が自動的にできてしまいます。

 「V-nasClair」をコアとして、各種モデリング機能を装備したKitシリーズは詳細設計システムにも拡張することができます。

藤井1つの結果として共同で製品を開発するかもしれませんが、それが主眼ではありません。欧米では「コンサルタント」を「The Engineer」と呼ぶそうですが、当社もそうありたいと思っています。今回の取り組みも、コンサルタントとしてBIM/CIMを建設業界全体に浸透させていくことが、私たちの1つの使命・役割だと考えています。

「ITの用途化」を広げて業界全体へのBIM/CIMの浸透を

――土木業界全体の発展を考えているのですね。

山野そのためにも、当社としては高度利用になくてはならない4つの要素、『3次元CAD』『実用性の高いモデリングシステム』『概略・詳細設計システム』、そして『情報共有・ビッグデータ流通システム』を踏まえて開発しています。加えて、3次元化の最大の長所である「分かりやすさ」を生かすためにMR(Mixed Reality)を適用した視認性を高めるシステムも開発中です。分かりやすいから安全性が高まり品質も良くなる。どうするかの意思決定も今より容易になると思います。

藤井その4つの要素を1社単独で手掛けているのが川田テクノシステムさんです。そこに大きな可能性を感じます。そして我々は、過去の実績との整合や工費算出などの単純作業を省力化し、本来コンサルタントが行うべき創造的な仕事に注力できると期待しています。

山野BIM/CIMの推進において4つの要素は関連し合うので、開発のステアリングが矛盾なくできますし、そのことでシステム利用者のハンドリングも良くなります。

点群データを仮想空間基盤に活用

――ブラウザーでの大容量点群の超高速表示には驚きました。

山野当社では点群データをBIM/CIMの仮想空間基盤地図データとして活用してはどうかと考えています。地形や家屋など周辺情報のモデリングの必要がありませんし、時間の経過に基づいた様々な属性情報の統合体としての活用が容易になります。そのために「basepage」というクラウドシステム上で、点群データの高速表示、高さや面積などの計測機能を実現しています。もちろん、大容量点群データの授受の高速化も図っています。パシフィックコンサルタンツさんとの取り組みの中で、こういった当社のIT資産が新たな用途としてどんどん広がっていく可能性を実感しています。最初の成果は、そう遠くないうちに出せるのではないかと考えていますのでご期待ください。

「V-nasClair(ヴィーナスクレア)」を核とした川田テクノシステムの製品ラインアップ
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