事例研究・バリューアップ戦略

周辺環境の変化で競争力が弱まった。
起死回生の改修へ

西麻布の築50年ビルの再生術(前編)

2018/02/21
事例研究・バリューアップ戦略

アート展示で分かった最大の売りは、「屋上」だった。

中小規模の古いビルはスペックに大きな特徴を見出しにくく、新築など築年の浅いビルに勝る要素が少ないと思えることが多い。だが、立地や眺望その他を考えていけば、何かしらの特徴、独自性はあるはず。

このビルの屋上は、すぐ脇を走る首都高速と、遠くに見える六本木ヒルズなど開放的で都会的な眺望が楽しめるのである。実際、現在では屋上を撮影用などに貸したり、ヨガを行うなどして活用したりしているとか。

屋上からは六本木ヒルズ、首都高速が見晴らせ、夜景も素晴らしい
屋上からは六本木ヒルズ、首都高速が見晴らせ、夜景も素晴らしい

屋上からは六本木ヒルズ、首都高速が見晴らせ、夜景も素晴らしい

同ビルに限らず、大半のオフィスビルでは屋上が利用されないままになっているが、石田氏によると屋上はテナント募集の“売り”になるという。

「一般に屋上が利用できないオフィスビルが多いせいか、使えることがわかると、『じゃあ入居しようか』という例もあるほど。何をするというわけでもなく、ぼーっとしているだけでも楽しいのが屋上です。実は私の会社もこのビルに本社を移転しており、屋上でバーベキューパーティーを開催するなどして活用しています」

一方、アート展示を終えた後、早野ビルでは7階のリニューアルに着手する。その際、思い切った手を打つことにした。

(後編に続く)

ビルの"ウリ"を探すことがバリューアップ戦略の第一歩

早野ビルでは、リニューアルをきっかけとして、ビルが持っていた魅力を再発見することにつながった。その典型的な例が「屋上」だ。

眺望がいいという好条件があったものの、テナントが利用できるようにしたことで屋上はテナント誘致の立派な武器となった。

本文中にもあるが、中小規模ビルでも何かしらの特徴、独自性がある。例えば、ビルの上層階に住宅フロアがあるケース。「貸しにくく、テナントを見つけにくいフロアがある」と考えるのではなく、他のフロアや一般的なオフィスとは「まったく違った商品価値を持つフロアがある」と捉えるべきだ。早野ビルも同じように住宅部分を抱えていた。記事の後編では、この住宅部分のリニューアル内容を紹介するので、ぜひ参考にしてほしい。

オーナーやオーナーの企業が入居している賃貸ビルがある。こうした状態をセールスポイントにしているビルも見られる。管理会社にテナント対応を任せっきりにするのではなく、テナントの要望に柔軟に応えることで満足度を高めているという。自分の所有ビルであることから、テナント対応の判断スピードも速くなる。これは、大手不動産会社のビルに比べて、個人オーナービルの有利な点だと言えるだろう。

借り手が付きにくいフロアについて、あえて収益を求めるのではなく、テナントの共用フロアとして活用したビルもあるようだ。いずれ、このサイトで取材して記事として紹介したいと考えている。

これらのほか、周辺環境や立地など、いろいろな"ウリ"が考えられるはずだ。自社のビルの競争力が落ちていると感じていたら、まずは自らのビルの魅力を再発見するように努めてほしい。それを探すことこそ、バリューアップ戦略の第一歩となる。

働きたくなるオフィス大全編集部

文:中川寛子、写真提供:バリューレイズ