中小ビルTOPICS

ドローンを使って外観撮影
中小ビルPRの新しい武器となるか

2018/05/23
中小ビルTOPICS

テナント募集の広告やウェブサイトにおいて、「ビルの外観写真」は重要だ。移転先ビルとして検討する候補になるかどうか、それを左右する要素にもなっている。オーナーも外観写真の出来栄えには力を入れたい。しかし、前面道路が狭かったり、ビルの正面に撮影ポイントがなかったりと、いい写真が撮れないビルも多い。東京・茅場町にある茅場町髙木ビルも、そんなビルの一つだった。そこで、トライしたのが小型の無人航空機・ドローンによる外観撮影だった。ドローンを使えば、これまでカメラを向けられなかったアングルから、質の高い写真を撮ることができる。撮影当日の様子と合わせて、ドローンの可能性を考えてみた。


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今回、ドローンによるビルの外観撮影に挑戦したのは東京都内で10棟のビルを持つ髙木ビル。「ビル入居時の敷金が相場の半額になる「次世代型出世ビル」、創業まもない企業をサポートするコワーキングスペース「BIRTH KANDA」など、新しい取り組みに積極的なビルオーナーだ。( 参考記事

そもそも、テナントが移転先ビルを決定する上で、立地やフロア面積、賃料などが重要なポイントになる。これらと同じくらい、ビルの外観も大切だ。テナントからしてみれば、「どんな場所で働くのか」、「どんな場所に店を開くのか」をイメージするうえで欠かせない材料だ。できるだけ高画質できれいな外観写真を用意しておけば、テナント募集にも効果を発揮するはずだ。

しかし、ビル撮影の難易度は意外と高い。ビルが面している道路の幅が狭かったり、線路や高速道路に邪魔されていたりして、ビル全体を写真に収められないことがしばしばある。中小ビルのなかには、写真が撮影できずに、仕方なく完成予想図(パース)を掲載しているケースすらある。

ヘリコプターを利用した空撮も一つの手段になるが、コスト負担が大きいのが実情だ。また、航空法によって市街地の低空飛行が禁止されているため、近距離での撮影が難しく、小規模なビルを撮影するのには向いていない。

今回、髙木ビルのCOO・髙木秀邦さんがドローン撮影するのは、茅場町髙木ビルだ。ビルの正面に流れる日本橋川の上を首都高速が走っているため、地上からでは正面写真を撮影できない。ビルの反対側も道路幅が狭く、ビルの全景を写真に収めるのは難しい。そこで、ビルの駐車場入り口からドローンを飛ばし、首都高速にかからない位置から写真と映像を撮影するプランを練った。

撮影を担当するのは、不動産金融の情報システムを手がけるJapanREIT。同社では、ドローン撮影チーム「空人(SORAJIN)」を結成し、髙木ビルの依頼で撮影を行ったのだ。ちなみに、ジャパンリートは虎の門髙木ビルに入居するテナント企業でもある。

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茅場町髙木ビルを撮影しようにも、どのアングルでも首都高速がかかってしまい、正面の外観写真は撮影できなかった。

万全の準備で挑んだドローン撮影

使用した機種はドローン製造最大手・DJIのPhantom4 pro。自動制御による飛行や安全装置などの機能を備えた最新型だ。このドローンは重量200gを超えるため、航空法の規制対象になる。東京・茅場町のような人口密集地域で飛ばすためには、国土交通省や警察などの許可や事前連絡が必要だ。その上、操縦者には10時間以上のドローン飛行経験や難しい条件下での飛行技術の有無などが問われる。今回の撮影ではSORAJINが技術的な面はもちろん、書類が必要な許可申請を全て請け負うことで、ビルオーナーの負担を最小限に抑えている。

無用なトラブルを避けるための事前準備にも抜かりがない。

過去にドローンの事故が報道されたこともあり、必要な許可を得ていても、ドローン撮影に不審を覚えた通行人が警察に通報する場合もあるという。そうした事態を避けるため、早朝に撮影を開始して、通行する人が少ない時間帯を狙った。撮影チームのユニフォームも工夫した。「許可を得ている」ことを示したTシャツを用意した(写真参照)。念のため、地元警察に撮影日時などの詳細を事前に伝えておき、もし通報があった場合でもスムーズに対応してもらえるようにした。

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3月24日土曜日の午前7時、撮影がスタートした。

機体がすっと宙に浮き、徐々に高度を上げていく。ブーンというプロペラの回転音がするものの、騒音として感じるレベルではなかった。操縦者は機体を目視で確認しながら、コントローラーに接続したスマートフォンでも現在位置を追う。ビルの反対側にもスタッフを配置して、機体が高速道路に近づきそうになると、すぐに無線で知らせるようにしてある。安全対策は万全だ。

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駐車場程度のスペースからでも、離陸可能

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ビルと首都高速の間に回り込んで撮影。地上からは絶対に撮影できなかったアングルだ

バッテリーの持ち時間は約25分。1回のフライトで満足できる写真が撮れるとは限らないので、複数のバッテリーと予備電源を用意してある。最初のフライトで限られた飛行区間でどんな写真が撮れるかを調べ、その次のフライトに活かす段取りとした。

飛行中に鳥が近づいてきてヒヤッとする場面はあったが、撮影自体は順調に進み、たった2回のフライトでおおよそ満足のいく写真を撮ることに成功。通行人がドローンに気付くシーンもあったが、Tシャツの効果もあったのか、トラブルには至らなかった。最後に、太陽がより良い角度にのぼるのを待って、3回目のフライトを決行。当日は準備から3時間弱で無事に撮影を終えた。写真だけでなく、動画も撮影している。

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コントローラーに接続したスマートフォンでは、ドローン目線の映像のほか、GPSで地図上の位置を追うこともできる

想像以上の出来栄え。手軽なだけでない優れたPR手段

髙木ビルの髙木秀邦さんは次のように話す。

「ドローンで撮影した写真は想像以上の出来でした。ビルオーナーの私ですら知らない姿を見ることができました。ビルの外観写真では、周辺の環境も写っていると、テナントさんには有益な情報になります。ドローンを使うと高い位置からビルと街全体を写したり、動画を撮影したりできるので、多くの情報を伝えることができます」

以下の写真は、ドローンで撮影したものだ。

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(写真提供:髙木ビル)

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(写真提供:髙木ビル)

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(写真提供:髙木ビル)

ドローンはPR用の写真撮影のほか、軽微な点検に活用するなどメンテナンスにも活用できる。ドローンが中小ビルに与える可能性は大きい。ただ、ビルオーナーが個人でドローン撮影を行うには、事前準備や許可申請などの高いハードルもある。実際には、SORAJINのようなドローン撮影の専門チームに依頼することが現実的だろう。

髙木ビルでは今後、第2弾として、東京の武蔵境駅前に所有するビルでもドローン撮影を検討している。

文と写真:木内渉太郎(特記なき写真)

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