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xTECH EXPO 2018レビュー

キーパーソンが語る、未来のデータセンター

日本データセンター協会(JDCC)
デジタル社会の進展が加速する中
データセンターに求められる新たな価値

国内外のデータセンタービジネス関係者の交流の場である「グローバルデータセンターサミット」が、今年も「xTECH EXPO 2018」の会期中の2018年10月18日に開催された。テーマは、「日本データセンター産業界の未来を考える!」。当日の模様をレポートする。

グローバルな動向を見据えて
データセンターの未来を考える

江﨑 浩 氏
JDCC運営委員長
理事
東京大学大学院
教授
江﨑 浩

 サミット冒頭では、日本データセンター協会(JDCC)理事・運営委員長の江﨑浩氏が挨拶。2018年5月にJDCCがCDCC(China Data Center Committee:中国数据中心工作組)との間で、今後、情報の相互共有など戦略的な協業を進めていく旨を報告し、その一環として今回の基調講演のスピーカーにCDCCの組長 鐘景華氏を迎えたことを紹介した。

 「世界の中でも、急速な進展を見せている中国のデータセンター。その現状に触れていただくことで、グローバルなデータセンターインフラの構築に向けた意識を皆様に共有していただければ」と江﨑氏は語った。

データセンター事業者に対して
中国国家が定める各種規制の状況

鐘 景華 氏
CDCC
組長
鐘 景華

 続く基調講演では、鐘氏が「中国データセンターの標準化と今後の方向性」と題するセッションを行った。

 「CDCCの設立は2009年。設立趣旨は、国が定めるデータセンターの設計・運営に関わる規格に沿った各種基準の策定や、具体的施策に関する白書を編さんすることです」と氏は紹介する。

 例えば、中国が2017年に新たに制定し、2018年1月1日に施行された、データセンターの設計に関わる規格には、次の11項目が盛り込まれている。データセンターの「レイティング」に始まり、「立地・設備レイアウト」「環境」「建物の構造」「空調」「電源システム」「電磁シールド」「ネットワークケーブルの配線」「インテリジェント(モニタリングシステム)」「給排水」「消防」などの要件である。

 「レイティングを例にするなら、中国では性能や可用性、障害時の社会的インパクトを基準として、データセンターについてA~Cの3クラスを設けています。Aクラスは金融やインターネットのインフラ関連など提供サービスにクリティカルな要求が課されるもので、電源およびシステムの二重化が必須条件です」と鐘氏は説明する。

 また、環境や空調に関する要件順守も中国の事業者にとって重要なテーマだ。メインのコンピュータルームの室内温度を18~27℃に維持すべきことが定められているほか、結露点や空気清浄度についてもきめ細かな取り決めがなされている。空調に関しては、立地地域の気候条件に応じて自然冷却でまかなえる時間を最大化するような指針が示されている。最近では、電気エネルギーの消費を最適化するため、コージェネレーション/熱電供給(CHP)システムの採用、あるいは天然ガスを積極活用するデータセンターも登場し始めている。

 現在、中国ではデータセンターの企画から設計、施工、運営、保守、解体といった全ライフサイクルを通じた規格策定に取り組んでいる。「CDCCはこれらの国家活動にも継続的に関与していく一方、JDCCとも協力しながら、データセンターの国際標準確立においても積極的貢献を果たしていきたい」と鐘氏は今後に向けた意気込みを語った。

2010~16年における中国のIDC市場規模
中国国内の急速なデジタル環境の浸透に伴い、データセンターの市場規模は年々拡大している
2010~16年における中国のIDC市場規模
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デジタル技術の急速な需要拡大で
データセンターの存在意義が変容

 この日のイベントを締めくくる最後のセッションでは、CDCC副組長の曲海鋒氏と、国内データセンターのキーパーソンたちをパネリストに招いて「日本のデータセンターの未来を考える」をテーマにパネルディスカッションが催された。モデレーターを務めるJDCC事務局長の増永直大氏が、国内のデータセンター事業をめぐる現状についての問いを発し、各パネリストがそこで浮上している課題や、解消に向けた提案を行う形式で議論が進められた。

 最初に指名された、MCデジタル・リアルティの伊藤洋平氏は、データのグローバルな流通に向けた要請が高まる一方で、世界的傾向として、EU一般データ保護規則に代表されるデータの国外持ち出しに関わる規制強化の状況を指摘。「日本でも、国が欧州にならった規制強化に乗り出すとの見方もあります。国内事業者にとってこうした動きは追い風になると思います」と分析した。

 続いてエクイニクス・ジャパンの古田敬氏(JDCC理事)は、従来のデータセンターから「デジタル・インフラストラクチャー」という概念へのパラダイムシフトが必要である点を強調。「時間や空間を超えた“形態共鳴的”変化がデジタル世界においてグローバル規模で進行する中、電力や環境、あるいは不動産・建築、ネットワーク/ITを融合した視点に立ち、日本の国情に合った形でインフラストラクチャーをリデザインしていく必要があります」と語った。

 また、曲氏は中国のデータセンター事業者による、日本市場への進出をめぐる課題に言及。曲氏によると、日本には非常に成熟したデータセンター市場が形成されており、中国企業による参入障壁は非常に高いという。その対応策として、「日本企業をパートナーに迎え、日本のデータセンターのサービスの在り方をしっかりと学び、中国のリソースや業務プロセスを結びつけながら新たなサービス構築を進めていくことが有効なアプローチとなるでしょう」と曲氏は力説した。

 さらに、さくらインターネットの田中邦裕氏(JDCC副理事長)は、エクスポネンシャル(指数関数的)にテクノロジーが進化し続けている点に触れ、「全ての人と物がインターネットによりエンドツーエンドでフラットにつながることが前提となった今の時代、データセンター自体も旧来の集中型ではなく、ゆるやかなつながりを持った分散型を目指すなど、方向性の再検討が求められています」と指摘した。

パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションの様子。左から、増永直大氏(JDCC事務局長)、伊藤洋平氏(MCデジタル・リアルティ COO)、古田敬氏(JDCC理事、エクイニクス・ジャパン代表取締役兼北アジア事業統括)、曲海鋒氏(CDCC副組長)、田中邦裕氏(JDCC副理事長、さくらインターネット代表取締役社長)

 あらゆる産業活動や人々の生活にデジタル技術が深く浸透する中、データやシステムの持つ意味も大きく変容している。それを踏まえ、今新たなデータセンター像の構築が求められている。

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  • 特定非営利活動法人日本データセンター協会(JDCC)

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