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SEMICON JAPAN 2019 プレビュー

SEMICON Japanの顔であるSTSが刷新
半導体技術の未来に向けた筋道を照らす場に

2019年12月11日(水)〜13日(金)、東京ビッグサイトでSEMICON Japan 2019が開催される。そして、毎年、半導体産業に関わる第一線のエンジニアが集うSEMICON Japanの顔と言えるセミナー、「SEMIテクノロジーシンポジウム(STS)」が大きく変わる。38回目となる今回のSTSでは、技術と業界構造の両面で変曲点を迎える半導体業界の行方を探る場となるべく、広範な技術を横断的に把握しやすいセッション・ラインナップへと一新。時間も拡充して開催される。混沌の中にある、見えにくい未来への方向性を明確にするための絶好の機会となることだろう。今回のSTSの見どころについて、プログラム委員長を務める冨田 寛氏に聞いた。

STS2019 プログラム委員長
キオクシア株式会社
メモリ技術研究所
プロセス技術開発研究センター 主幹
冨田 寛 氏

 STSは、講演を企画するプログラム委員も、登壇する講師も、そして聴講者も、それぞれの専門分野の第一線で活躍する方々ばかり。さながら日本の半導体エンジニア総会と呼べる様相のセミナーである。ここで取り上げられる話題は、その時点でのホットな話題、課題、技術が大半を占める。STSに対する聴講者の評価は極めて高い。毎年のように参加する聴講者も多く、その年の最先端技術の動きや最新の業界動向を定点観測する場としても活用されている。

分野横断的に技術動向を俯瞰

 自動車業界では100年に一度の大変革が起きていると言われるが、半導体業界でもいわば50年に一度の大変革が起きようとしている。微細化を基軸とした半導体デバイスの進化の終焉は、近い将来に確実に訪れる。それ以降の行方を見定めることは、半導体業界のすべての企業にとって、技術戦略や事業戦略を策定するうえでの重大関心事である。材料・装置、デバイスの開発、応用技術など、半導体技術のあらゆる分野の体系が一変するからだ。

 ただし、2019年には技術面での大きな出来事があった。「EUV(Extreme Ultraviolet)露光やナノインプリント(NIL)など次世代リソグラフィーがいよいよ実用段階に入り、微細化がさらに続く見込みになりました。STSでは、今後の量産適用を見据えた材料・装置の課題と技術開発の方向性が示されます」と冨田氏はいう。微細化は延命した。EUVの実用化が、半導体業界の行方にいかなるインパクトを及ぼすことになるのか。STSでは、その答えが見つかるかもしれない。

 今回のSTSには、7つのセッションと1つの特別セッションが用意され、合計29件の講演が開かれる予定である。今回から、1テーマ1セッションの分かりやすい構成に再編して話題を厳選。その分、1講演当たりの時間を延長した。これによって、専門以外の技術の動きも、明確かつじっくりと理解できるようにした。半導体業界の広範な技術の動きを総覧し、意識合わせする場として、今回のSTSは有用な場となるだろう。以下、各セッションでの注目点を紹介する(表1)。

(表1)
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同時進行する技術革新を把握

 パワーデバイス セッションでは、SiCやGaN、Ga2O3など新材料デバイスの市場動向と最新技術動向を議論する。新材料デバイスは、特性がSiデバイスとは大きく異なるため、回路設計や放熱手法などに固有の技術が必要になる。三菱電機は、太陽光発電向けパワーコンディショナー(PCS)と鉄道車両用推進制御装置の実用化例を挙げて、SiCデバイスの活用技術を紹介する。パナソニックは、GaNデバイス固有の技術課題を解決するための技術コンセプトやデバイスの信頼性特性について語る。

 MEMS・SMARTセンシングデバイス セッションでは、本格的な普及段階に入りつつあるIoTや第5世代移動通信システム(5G)で活躍の場が広がるMEMSの先端技術を議論する。TDK-Invensenseは、MEMSに通信機能や機械学習を組み合わせた複合型センサーの応用とそのインパクトを解説する。

 テスト セッションでは、センシングやAI、コンピューティングなどを支える半導体のテスト技術の最新動向を議論する。2018年に発行された自動車向け機能安全規格、ISO 26262 2nd Editionの中には、半導体のガイドラインが追加された。SGSジャパンが、機能安全を考慮したハードウエア・テストのポイントと最適化を解説する。アドバンテストは、ケーススタディを通じて、AIを用いた量産テストの高効率化と歩留り向上の手法について語る。

 先端リソグラフィー セッションでは、量産工程に採用されつつあるEUV露光やNILを支える技術の最新動向を議論する。EUV露光を量産に適用する際の課題となる、確率的課題(Stochastic Issues)の対応策についての講演が2件ある。日本シノプシスはマスク・露光条件・レジスト材料の特性などが確率的課題に及ぼす影響のシミュレーションでの評価手法を、富士フイルムはレジスト材料の改善による対応の最新動向を報告する。

 先端材料・分析セッションでは、微細化と3次元化を駆使した最先端半導体デバイスの開発に欠かせない材料のナノサイズ欠陥や微量不純物管理、特にインラインでの管理手法を中心に議論する。産業技術総合研究所は、既存インライン計測法では不可能だった液中異物の粒子径の評価を可能にする独自技術、フローパーティクルトラッキング(FPT)法を紹介する。

 先端デバイス・プロセス セッションでは、モバイル・IoT機器、サーバーの高性能化に向けた、ロジック、メモリーなどの最新技術動向を議論する。韓国Samsung Electronicsは、最新のファウンドリー・プラットフォーム技術と今後の方向性について、マイクロンメモリ・ジャパンは最新DRAMプロセスの現状と課題、さらにはその解決策について語る。

 パッケージング セッションでは、5Gの実用化に欠かせない新たなパッケージング・実装技術と、産業構造の変化について議論する。セミコンサルトは、5Gで利用されるミリ波帯電波の送受信に向けて採用が進む、アンテナ・イン・パッケージ(AiP)や高周波FPCケーブルについて解説する。

 特別セッションとして、次世代デバイスをテーマに挙げ、AIや量子コンピューティングなど、新たな情報処理の活用を後押しする新たなデバイスの姿について議論する。日本アイ・ビー・エムは、ディープラーニングや機械学習の関連処理を効率化する、次世代メモリー技術や回路技術を応用した新デバイス研究の進捗を報告する。

 半導体業界では、デバイス製造だけでなく、材料・製造装置のビジネスもグローバル化していく兆しがある。この分野に強い日本もうかうかしていられない。「日本企業の勝ち残りを確かにするため、STSの場を徹底活用していただければと考えています」と冨田氏はいう。STSでは、受講者が講演者に直接質問できるオーサーズインタビューの時間が設けられている。また、一部セッション修了後には交流イベントも企画されている。STSに参加し、未来の半導体技術について、議論の輪に参加してはどうか。