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工場全体を見える化して納期回答を迅速化

溶接用副資材メーカーのスノウチ(本社:千葉県浦安市)は、三菱電機の「e-F@ctory」で生産管理業務の効率化を実現した。現場のあらゆる機器をネットワークでつなぎ、生産を見える化することで短納期を求めるユーザーへの納期回答を迅速化したほか、レーザー変位センサエッジコンピューティングで高いレベルの品質管理を実現。業界の中で高まるトレーサビリティのニーズに、いち早く対応することができたという。

 スノウチは溶接用の裏当て材など溶接用副資材を製造・販売するメーカー。中でも建築物の柱として使われるコラム(角型の鋼管)用の裏当て材「カドピタ」は、建築業界で定評のある製品だ。コラムの内側のRに沿って裏当てする際、従来は裏当て材をあらかじめ工場でRに合わせて曲げ加工してから、現場に運び込む必要があったが、カドピタは手で容易に折り曲げることができるため、現場で調整しながら裏当てできる点が重宝されている。

スノウチの主力商品「カドピタ」は、現場で容易に折り曲げて裏当て材として使うことができるのが特徴
スノウチ代表取締役社長
渡部 康二 氏

 同社は2013年に販売管理システムを刷新した。拡大する需要に対応するのが目的だったが、一方で生産管理については手つかずだったという。「構想はあったのですが当時は販売管理が優先でした。生産現場もPLCやロボットの活用が定着し、自動化のベースが整ったので、生産管理システムの導入を目指すことにしました」(同社代表取締役社長の渡部康二氏)。

 生産管理システムの必要性を認識する背景にあったのが、極端な短納期が求められる同社製品の特性だ。「発注から希望納期まで1〜2週間もあるのはまれで、『今日欲しい』というお客様も珍しくありません」と同社営業グループ東日本営業チームの中條亜里沙氏は言う。生産管理システムがないため、営業担当者が注文を受けると、生産管理部門に納期を問い合わせ、生産管理担当者が工場内をまわって生産状況を把握し、対応可能な納期を営業担当者経由で顧客に回答していた。その方法でも1時間程度で納期回答は可能だが、即日納品を求められることもある同社にとって1時間のロスは大きく、機会損失になりかねない。

 生産状況をリアルタイムで見える化し、納期を即座に回答できるようにしたい。同社の生産管理システム導入プロジェクトはその目標のもとで始まった。

「全部つながないと意味がない」

スノウチ取締役
原 章 氏

 「いろんなベンダーさんに声を掛けました」と同社取締役でプロジェクトを率いた原章氏は振り返る。ベンダー選定にあたって同社が重視したのは、生産設備も含めて受注から出荷までを連携させる技術。さらに「当社のような規模の企業でも導入できる現実的な提案を期待しました」(原氏)。

 最終的に同社が選定したのは三菱電機だ。その理由を原氏は「現在動いている設備も含めて全部つなぎたいと考えたから」と説明する。同社の設備は既に半分がEthernetで接続可能で、集中制御は比較的容易と考えられたが、残りの半分はつながる手段がなく、作業者が現場で手動で操作するしかなかった。「せっかくシステムを導入するなら全部つなぎたい。そうでないと意味がないからです」(原氏)。工場全体をネットワークでつなぐ実績や制御を含む手段が豊富だったことが、三菱電機を選んだ理由だったという。

 ベンダーが決まってから稼働開始まで、与えられた期間はわずか1年。しかし「三菱電機と、三菱電機のパートナーSIerが、基本設計と並行して詳細設計も行うなど、工夫して間に合わせてくれました」(原氏)。


スノウチ営業グループ東日本営業チーム
中條 亜里沙 氏

 新しい生産管理システムでは、三菱電機のシーケンサMELSECシリーズを中核にロボット、ターミナルやGOT(表示器)、センサなどを一つのネットワークで接続。また、これまでデータを取る事ができなかった古い設備からも、AnyWireASLINKセンサを活用する事でデータが取れる様になったうえ、工場での生産状況がリアルタイムで見える化され、「納期の回答から生産、出荷まで、すべてシステム上で確認できるようになりました」(中條氏)。千葉県浦安市の本社工場だけでなく、広島県にある工場も含めて、会社全体の生産状況を統合的に把握可能になっているという。

工場の生産設備をつなぎ、生産状況をリアルタイムで見える化したことで納期を迅速に回答できるようになった

センサ活用で全数検査の自動化を実現

 新しい生産管理システムのもと、生産現場の高度化も進められた。素材の投入や搬送にはロボットを使用。パイプの切断機からプレス機への投入、プレス後の検査ステージへの投入、芯棒の組み合わせや箱詰めまでの一連の工程を、ロボットで無人で行えるようになった。ロボットは従来はスタンドアロンで活用していたが、工場全体をネットワーク化したことにより、MESから実行させることも可能になっている。

スノウチFAソリューショングループ
TRINH XUAN HIEP 氏

 同社は将来を見据えたチャレンジも始めている。その一つが検査工程の自動化だ。同社では従来、ゲージなどを使って製品の寸法などを検査していた。手作業のため抜き取り検査にならざるをえず、検査の回数も1日3回が限度という。

 新しいシステムでは三菱電機のレーザー変位センサMELSENSOR」を活用。例えばカドピタは角材にバンドソーで溝切りすることで、手でも折り曲げられるようになっているが、溝の深さが十分でなかったり、逆に深過ぎたりして不良品になることがある。そこで「溝の深さをセンサで測定して自動で全数検査できるようにし、検査業務の効率化をはかることができました」(同社FAソリューショングループのTRINH XUAN HIEP氏)。

溝切り後の溝の深さをレーザー変位センサで測り(左)、全数検査を可能にすると同時に、電流データをMELIPC(右)などで分析することで予知保全の実現も目指している

 さらにセンサで得られたデータを蓄積して分析することで、予知保全の実現にも取り組んでいる。溝切りの不良はバンドソーの連続使用による刃こぼれが原因のことが多いが、主軸インバータの電流の変化をリアルタイムで分析することで、刃こぼれを未然に検知し、不良品を作る前に刃を交換できる仕組みを目指しているのだ。分析には三菱電機の産業用PC「MELIPC」と、分析・診断ソフトウエア「リアルタイムデータアナライザ」を活用している。

トレーサビリティで安全責任の要求に応える

 工場の設備を全てつないだことで、製品一つひとつの製造履歴を細かく残すことができるようになり、トレーサビリティも実現に近づいている。鉄鋼業界では鉄鋼メーカーが鋼材を加工メーカーに卸す際に、鋼材の材質を証明するミルシートを同時に提出するのが一般的。素材不良時に備えたトレーサビリティを確保するためだ。

 同社が製品を販売する場合も、素材として使用した鋼材のミルシートのコピーを添付しているが、さらに同社内で蓄積できるようになった製造履歴を活用すれば、同社“独自のミルシート”を作ることも可能になる。「今の時点でそこまでの要求はありませんが、建築物の安全責任が求められる中で、いずれそういうニーズが出てくるでしょう」(渡部氏)。業界に先駆けて独自のトレーサビリティ体制を構築できるというわけだ。

 地域の鉄鋼業界の団体や組合の役員も務める渡部氏は、「当社の同規模の業界他社からも、当社が持っていたような悩みをよく聞く」という。「当社が今回のシステムで蓄積したノウハウをそういうところにも紹介することで、業界全体の底上げを図ることができるのではないかと思っています」(渡部氏)。同社導入したシステムの効果は、同社だけにとどまらず、業界全体に波及していくことになりそうだ。

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  • 三菱電機株式会社 FAシステム事業本部
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